最高級サウンド×最先端テクノロジーのハイブリッド!VIENNA SYMPHONIC LIBRARYを徹底解説!
細やかなサンプリングによる大容量オーケストラ・ライブラリの先駆けとなって以来、リアリティあるサウンドを追求し続けて存在感を示す老舗ソフトウェア・ブランド、VIENNA SYMPHONIC LIBRARY。
ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団に所属していた経歴を持つチェロ奏者のHerb Tucmandlにより2000年10月に設立。「夢から現実へ」をモットーとし、オーケストラ楽器の多彩なアーティキュレーションを駆使する「Vienna Instruments エンジン」と、表現の自由度を損なう事なくシンプルな操作性を実現した「Synchron Player エンジン」の2種類の独自エンジンにて、交響楽や室内楽、合唱団などのオーケストラ音源を中心に300以上の製品をラインナップしています。
ステージ演奏の「シートポジション」による音像の違いを再現するなど、オーケストラを知るプロが設立したメーカーならではの細やかな設計思想が反映された製品が揃い、プロ・アマ問わず長年信頼を得てきた業界を代表するブランドです。
当記事では、メーカーの名前はよく見るけれど実際にどんな商品があるのかわからない、商品数が多くてどれを買えば良いか迷っている方向けに、主なラインナップをご紹介します。これまでにいただいたアーティスト/作曲家の皆さんよる使用例やレビューも併せてご案内します。
2024年9月現在、VIENNA SYMPHONIC LIBRARYは『SYNCHRONシリーズ』『VIシリーズ』『SYNCHRON-izedシリーズ』のシリーズを中心に製品展開しています。
まずは、各シリーズの違いを簡単に紹介します!
SYNCHRONシリーズ
『SYNCHRONシリーズ』は、シンプルな操作性とまとまりのあるサウンドが特徴的な「Synchron Player エンジン」(又は派生エンジン)を採用した製品シリーズです。
本シリーズのインターフェースは、多機能へのアクセス性を重視して設計されたVienna Instruments エンジンとは異なり、操作性のシンプルさに比重を置いた設計がなされています。そのため、フェーダーとMIDIキーボードを使ったリアルタイム入力もより行いやすくなるなど、様々な制作スタイルに対応しやすくなっています。
また、ホールさながらの広さを持つスコアリングステージ「Synchron Stage Vienna」を舞台に、各楽器の「シートポジション」で録音されたサウンドは、「本物のホールコンサート」の音像が再現されたナチュラルな仕上がり。手軽に本格的なオーケストラサウンドを再現したい人や、作曲作業に集中したい方に最適なシリーズです。
VIシリーズ
『VIシリーズ』は、多機能で柔軟な演奏が可能な「Vienna Instruments エンジン」を採用した製品シリーズです。
各製品のサウンドは、無響室に近いスタジオ「Silent Stage」で録音。センター定位のデッドなステレオサウンドが収録されているため、好みの音像を自在に設定できます。
2005年からおよそ19年間にわたり数々のオーケストラ音源をクリエイターたちに届けてきた、VIENNA SYMPHONIC LIBRARYのブランドを確立したシリーズです。
※ VIシリーズは販売終了予定です。VIシリーズの製品をお持ちの方は、同名の『SYNCHRON-izedシリーズ』製品をお得なクロスグレード価格で入手可能です。詳しくはこちらの記事、また本記事の『SYNCHRON-izedシリーズ』の項をご確認ください。
SYNCHRON-izedシリーズ
『SYNCHRON-izedシリーズ』は、VIシリーズ各製品のライブラリをアップデートし「Synchron Player エンジン」に移植した製品です。
VIシリーズのデッドなサウンドはそのままに、Synchron Player エンジンでの軽快な操作性を享受でき、SYNCHRONシリーズの録音で使われた「Synchron Stage Vienna」のIRリバーブが適用可能。リバーブ・エフェクトを無効にすれば、VIシリーズと同様のデッドな音色で扱えます。
SYNCHRONシリーズではリリースされていない楽器が必要だったり、VIシリーズのサウンドとSYNCHRONシリーズの手軽さを両立させたい方向けです。
SYNCHRONシリーズ/SYNCHRON-izedシリーズ 製品一覧ページ ≫
以上、VIENNA INSTRUMENTSがリリースする3つのシリーズを紹介してきました。
各シリーズについてより詳しく知りたい方は、こちらのブログ記事をご参考ください。
代表的な製品
SYNCHRON-IZED SPECIAL EDITION VOL. 1
- メーカー:VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
- カテゴリ:ソフト音源
ソロ音源、アンサンブル音源、各種パーカッション音源など30以上の一般的なフルオーケストラ楽器とその基本的な奏法が収録された、「使いやすさ」を最大限に高めたスタンダードなフルオーケストラ音源です。
手動でアーティキュレーションを切り替える必要性が最小限に抑えられており、1つまたは2つのコントローラを動かすだけで、ショート・ノートやロング・ノートの出だしの強さ、レガート、ヴィブラートを自在にコントロールすることが可能です。
ソロとオーケストラ編成が収録された本製品以外にも、スペシャル・エディションシリーズには様々なバリエーションがあり、本格オーケストラアレンジからポップスやロックへの応用まで対応する、シンフォニックサウンド制作の導入にぴったりな製品です。
SYNCHRON-IZED SOLO STRINGS
- メーカー:VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
- カテゴリ:ソフト音源
VIシリーズの人気製品『VIENNA SOLO STRINGS I / FULL』『VIENNA SOLO VIOLIN 2』『VIENNA SOLO CELLO 2』をベースに、サンプルの最適化やSynchron Playerへの対応が施された、ヴァイオリン2台、ヴィオラ1台、チェロ2台、コントラバス1台で構成されるソロ楽器コレクション。
長年の国際的なコンサートワークで培われた貴重な経験をもつ4名のソリスト、 Christian Eisenberger(ヴァイオリン)、Katharina Traunfellner(ヴィオラ)、Ruben Dubrovski(チェロ)、Martin Deuring (コントラバス)のサイレントステージでのパフォーマンスを収録。
通常の奏法に加えて、「Zigane(ジプシー風)」「Harsh(荒々しい)」など、様々な音楽性に対応するアーティキュレーションを搭載。さらにSynchron Player版では、リアルタイム作曲に対応するように明確に階層分けがなされています。
加えて、様々なアーティキュレーションに対応する、リリースサウンドや「つなぎ」のサウンドを自動でアサインする機能も搭載。楽器特性や音量、パッセージの早さなどに応じた、美しく自然なサウンドを手軽に再現可能です。
SYNCHRON-IZED CHAMBER STRINGS
- メーカー:VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
- カテゴリ:ソフト音源
発売以来、好評を博していた『VIENNA CHAMBER STRINGS I / FULL』のSyncron Player版にあたる、各楽器の特性を生かした表現豊かな室内楽ストリングス音源です。
1stヴァイオリン(6人編成)、2ndヴァイオリン(6人編成)、ヴィオラ(4人編成)、チェロ(3人編成)、コントラバス(2人編成)が収録されており、少人数編成のオーケストレーションはもちろん、大編成アンサンブルに微妙なニュアンスや重厚さを加えたい際にも役立ちます。
『SYNCHRON-IZED CHAMBER STRINGS』のサウンドは『VIENNA CHAMBER STRINGS I』と比べて、コントロールチェンジに呼応してより滑らかに変化するようになっています。以前公開したこちらの記事にもありますように、『VIENNA CHAMBER STRINGS I』の「段階的に変化している感」が『SYNCHRON-IZED CHAMBER STRINGS』では低減されています。
また、エンジンの変化に伴い、収録されているアーティキュレーションも最適化されています。Vienna Instrumentsエンジンは、ベタ打ちのシーケンスをベースにパッチを切り替えていく制作フローが得意なエンジンです。そのため、バリエーションに富んだアーティキュレーションが一覧できる設計になっています。それに対し、Synchron Playerエンジンは、ある程度リアルタイムにパラメータを入力していくことが得意なエンジンです。よって、最適なパッチを選ぶ手間を削減するべく、アーティキュレーションもVIシリーズの網羅的なアーティキュレーションから再編成され、表現できる内容はそのままにより洗練された項目数となっています。詳しくはこちらの記事をご参照ください。
より現代的なリアルタイム性の高い制作フローに合わせて徹底的な最適化が施された、VIシリーズをお持ちの方にこそ導入していただきたい正統続編です。
SYNCHRON ELITE STRINGS
- メーカー:VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
- カテゴリ:ソフト音源
前項で紹介した『SYNCHRON-IZED CHAMBER STRINGS』と同じくSynchron Playerに対応する室内楽ストリングス音源です。
1stヴァイオリン(6人編成)、2ndヴァイオリン(5人編成)、ヴィオラ(4人編成)、チェロ(4人編成)、コントラバス(3人編成)という、『SYNCHRON-IZED CHAMBER STRINGS』と比べて2ndヴァイオリンが1人減り、チェロとコントラバスが1人ずつ増えた低音重視の編成で、より現代的でアグレッシブなアプローチも可能になった本製品は、シンフォニックな劇伴からバンドサウンドまで、幅広いジャンルで弦パートが持つ魅力を最大限発揮させることに成功しています。
他にも、弓のストロークに応じて音階を切り替えることで、一音一音の区切りをより自然にする「Performance Detache」パッチを収録していることや、5.1サラウンドやDolby Atmos用のマイクチャンネルに対応するための拡張ライブラリなど、『SYNCHRON-IZED CHAMBER STRINGS』とは多くの異なる点を持つ、まさに「少数精鋭」の製品といえるでしょう。
SYNCHRON-IZED SAXOPHONES
- メーカー:VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
- カテゴリ:ソフト音源
ソプラノ / アルト / テナー / バリトン / バスサクソフォンの各ソロサウンドが収録されている、オーケストラからジャズまで幅広くフィットするサクソフォン音源です。
オーケストラにおけるサクソフォンの奏法はもとより、ジャズ / ビッグバンドに必要なグリッサンド、トリル、フラッター / スラップタンギング、ベンド等の奏法からキーノイズに至るまで、あらゆるサウンドを網羅しています。
荒々しい躍動的なサウンドからムーディでソフトなサウンドまで、リアルなサックスの音色が再現されている本製品は、基となったVIシリーズ版の『VIENNA SAXOPHONES / FULL』がもつ様々なジャンルへの対応力をそのままに、よりスムーズなワークフローが実現されています。
SYNCHRON FAZIOLI F212
- メーカー:VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
- カテゴリ:ソフト音源
迫力のある低音から、温かみのある中音、透明感溢れる高音まで、豊かな響きの細部まで心地よく響く仕上がりを持つ、Fazioli社のグランドピアノ「F212」を収録した本格派ピアノ音源です。
室内反響が少ないコンパクトなアンビエンスのStage Bで録音されたサウンドのため、F212本来の音色のニュアンスが引き立った仕上がりです。
よりリアルな生ピアノの音をお探しの方やエフェクトの設定にこだわりたいに方におすすめのSynchron Pianos対応製品です。
SYNCHRON WORLD PERCUSSION
- メーカー:VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
- カテゴリ:ソフト音源
パンデイロ、タンボリン、シェイカー、アゴゴ、ジャンベ、トーキングドラム、カシシ、レク、ダラブッカ、トンバクなど、世界中の実に様々なワールドパーカッション(伝統打楽器)が収録された、Synchron Player対応ライブラリです。
セネガル出身のIbou Ba、イランのクルディスタン地域出身のHamidreza Ojaghi、ブラジル出身のLuis Ribeiroなど、プロの演奏家による西アフリカ、中東、ブラジルの打楽器の生き生きとした音色に加え、各地域の伝統的なリズムを収録した500以上のMIDIループを同梱。
オーケストラ以外にも、ブラスバンドやニューエイジ、映画劇伴などのワールドミュージック的なエッセンスが必要なジャンルにおいて、様々なリズムのインスピレーションを得たい際にも役立ちます。
BIG BANG ORCHESTRA シリーズ
「BIG BANG ORCHESTRA」シリーズは、ワンキーで大迫力の「Tutti(タイミングを合わせた合奏)」が再現できるSyncron Player対応の製品シリーズです。
中でも、無料音源の『BIG BANG ORCHESTRA: FREE BASICS』は、ポップスやEDM、劇伴などにモダンでファットなオーケストラサウンドを手軽にプラスできる、本シリーズのイントロ的立ち位置にして白眉ともいえる製品です。
- メーカー:VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
- カテゴリ:ソフト音源
本製品の特徴は、何より無料であること!VIENNA SYMPHONIC LIBRARY初の無料製品である本製品は、同社製品ユーザーへの「感謝の意味を込めて」、新しいユーザーへの「歓迎の意味を込めて」制作されています。
また、今まで紹介してきた有料製品にも使われている「Synchron Player」を使用できる点も特徴の一つ。単にオーケストラサウンドを再現するだけではなく、スタッカートやサスティン、マルカートなどのアーティキュレーションの呼び出しや、付属ミキサーによるサウンドの質感の調整なども自由自在です。
また、画像のように複数のマイクセットアップも収録しており、とても無料とは思えないクオリティのオーケストラサウンドを手軽に制作できます。
また、『BIG BANG ORCHESTRA: FREE BASICS』の他にも、多数の有料ライブラリがあります。
たとえば、フリー版の7倍のサンプルを収録し、ロングノートやアーティキュレーション、マイクポジション等がグレードアップした拡張版『BIG BANG ORCHESTRA: ANDROMEDA』、4本のバストロンボーンに加えてバスチューバとコントラバスチューバを1本ずつという低音に特化したブラスセクションのTuttiを収録した『BIG BANG ORCHESTRA: HERCULES』、伝統ある児童合唱団の24名によるピュアで厚みのあるコーラスを収録した『BIG BANG ORCHESTRA: YMIR』など、個性的な製品が揃っています。
- メーカー:VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
- カテゴリ:ソフト音源
- メーカー:VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
- カテゴリ:ソフト音源
- メーカー:VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
- カテゴリ:ソフト音源
オーケストラの仕組みや編成に明るくない方や生楽器や歌唱の大編成を安心して取り入れたい方はもちろん、楽器単体のオーケストラ音源をお持ちの方も、ぜひ本シリーズをお手に取ってみてください!
アーティスト / 作曲家の方々によるレビュー記事
最後に、第一線で活躍するアーティスト / 作曲家の方々による、VIENNA SYMPHONIC LIBRARY製品についてのレビューをご紹介します。
製品の魅力が様々な角度から語られているので、ぜひご参考ください。
山岸竜之介 氏(作曲家 / ギタリスト)『SYNCHRON FAZIOLI F212』
ソフト内蔵音源との音質比較、音のリアルさについて実践フレーズを元に動画レビュー
宇都圭輝 氏(作編曲家 / キーボーディスト)『Synchron Pianos』シリーズ8製品
ピアノ音源8製品を動画で弾き比べ、各音源の特徴やどのジャンルに適しているかなどレビュー
高尾奏之介 氏(作編曲家 / ピアニスト)『SYNCHRON FAZIOLI F308』
「製作」と「演奏」という観点から、音色の印象やオススメの使い方を紹介
Dios / シグナルP 氏(作編曲家 / 作詞家 / サウンドエンジニア)『VIENNA CHAMBER STRINGS 1』など
製品を使用した楽曲の紹介&バーチャル・オーケストレーションのコツを伝授