Dios/シグナルP氏による、VSL社オーケストラ製品レビュー!
定番オーケストラ音源で知られるVIENNA SYMPHONIC LIBRARY社。オーケストラのリアルなサウンドを非常に高いクオリティで詰め込んだ同社製品は、オーケストレーションを行うプロフェッショナルに根強い支持を受けているといっても過言ではないでしょう。
前回のOEKSOUND社製品に引き続き、作編曲家・作詞家・エンジニアとして広く活動し、「初音ミクシンフォニー2021」のテーマ曲『怪人』を書き下ろしていただいたDios/シグナルP氏にVSL社製品を解説いただきました。
先日発売の『SYNCHRON ELITE STRINGS』を含めた製品の特徴やTipsはもちろん、これからバーチャル・オーケストレーションを行う方に向けたアドバイスもいただいております。オーケストラ音源に興味のある方は是非最後までご覧ください!
4歳からエレクトーンを10年くらい習っていました。練習はあまり真面目にはしていなかったのですが、コード進行やアレンジの基礎を学べましたし、音色の作り方やエフェクトの種類やMIDIの仕組みなどDTMの基礎も学べました。
Windows95のPCを買ってもらったら打ち込みできるソフトが入っていたので、MIDI音源を繋いで曲作りにチャレンジしたのですが、スペックが足りなさすぎて思うように進められず。その後はオールインワンタイプのシンセサイザーを購入して、内蔵のシーケンサーを使って曲を作り、MTRで歌などを録音して曲を仕上げるようになりました。完全にPCのみで制作するようになったのは2002年くらいからですね。
音楽の専門学校在学中にガンダムSEEDのOPテーマ『Realize』で編曲家としてデビューした後は、メジャーのお仕事をやりながら、2007年12月にボカロPとしてデビューしました。
マクロスFをみていたときに、歌物でシンセサイザーとリアルなオーケストラが絶妙に融合した菅野よう子さんの楽曲を聴いて影響を受け、DTMで同じようなサウンドになんとかできないかと考え、いろんなオーケストラ音源のデモを試聴した結果、VSLの音源が自分の理想に一番近い事ができそうだなと思い導入しました。
特に『CHAMBER STRINGS』が歌物で使うときに必要なレスポンスの良さがありつつドライな音も出せるので重宝しますし、アレンジやミックスの仕方によっては壮大な感じにもできて、オールマイティーに使えるので気に入っています。
- メーカー:VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
- カテゴリ:ソフト音源
- メーカー:VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
- カテゴリ:ソフト音源
幼稚園の演奏会でバッハの曲をやったり、小学生の時はRPGなどのゲーム音楽に影響を受けたり、中学生の部活ではオーケストラをやっていたりなど、ずっとオーケストラは身近に存在していました。DTMでは打ち込みが主体となるので、以前はオーケストラのリアルな質感を出すのが難しく、下手に入れてしまうとチープになってしまうので、ストリングスくらいしか入れる勇気がなかなか出ませんでしたが、VSLを導入した事によって積極的に取り入れるようになりました。
『サンドリヨン 10th Anniversary』はソロバイオリン以外のオーケストラパートは全てVSL社製品を使っています。原曲のサンドリヨンはシンセサウンドをメインにアレンジされていますが、10th Anniversaryバージョンはオーケストラの比率が高めのアレンジとなっています。
まずSYNCHRON PLAYERを初めてちゃんと使ってみたのですが、VIENNA INSTRUMENTSよりも圧倒的に使いやすくなっていました。特にミキサーでの各マイクのバランスや、定位、リバーブなどの調整がわかりやすく、サイズ感や響きを楽曲に合わせやすくなりました。
『SYNCHRON ELITE STRINGS』は『CHAMBER STRINGS』のサイズ感をやや大きくした感じで、SYNCHRON PLAYERのミキサーの調整次第で『CHAMBER STRINGS』の代わりのような使い方もできますし、大きなコンサートホールで演奏している壮大さも出すことができます。
- メーカー:VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
- カテゴリ:ソフト音源
先日『CHAMBER STRINGS』を使って曲を作っている途中に『SYNCHRON ELITE STRINGS』を導入したので差し替えてみたのですが、軽く調整しただけで違和感なくより良い感じになったので『SYNCHRON ELITE STRINGS』を採用しました。
質感がやや異なり、曲によってどっちがより合うとかはあると思うので、VIENNA INSTRUMENTS版の『CHAMBER STRINGS』も『SYNCHRON-IZED CHAMBER STRINGS』にアップグレードしたいと思います。
- メーカー:VIENNA SYMPHONIC LIBRARY
- カテゴリ:ソフト音源
シンセサイザー主体で作ると平面的になりやすく、それはそれで良さがあるのですが、そこに生演奏のギターが入ると空気感が加わるのと同じように、オーケストラを加えるとさらに空間を広げる事ができますし、パートの増減やボイシングの重ね方で空間の大きさをコントロールしやすいですね。
所有しているハードシンセサイザーは割と満遍なく使いますが、特に使用頻度が高いのは新しめのKORG KRONOS2やYAMAHA MODXで、アナログポリフォニックシンセサイザーのARTURIA POLYBRUTEもすごく相性がいいなと感じていて。オーケストラ音源だけでは歌物の楽曲としてはちょっと不足していると感じる超低域や超高域を補うような音色を合わせたりします。
ソフト音源ではSPECTRASONICS社の『OMNISPHERE』やXFER RECORDS社の『SERUM』などがオーケストラ音源の空気感とマッチさせやすく使うことが多いです。
ドラム音源はソフトではTOONTRACK社の『SUPERIOR DRUMMER 3』やFXPANSION『BFD3』との組み合わせが好きなのですが、最近はハードのROLAND FANTOM Gに載せられる拡張ボードARX-01の音が特にお気に入りです。
リアルさを求めないのであれば総合音源に入っているような音色を使えばいいのですが、せっかくリアルなオーケストラ音源を使用するのであれば、とことんリアルさを追求していきたいですね。
鳴りがリアルな音源でも、曲で表現したい感情を、エクスプレッションや奏法の切り替えなどで作り込んでいくことで、さらに表情豊かにしてあげられます。ピアノやシンセの打ち込みに比べると手間も時間もかなりかかってしまいますが、手を加えた分だけ理想に近づけられるポテンシャルを持っている音源なので、ここは妥協せずしっかりとやっていきたいです。
まずはオーケストラについて理解を深めることが大事です。それぞれの楽器が得意な音域や、音の重ね方は特に重要な要素です。実際にコンサートを聴きに行くのもいいですし、最近だと音楽のサブスクサービスで聴くこともできるので耳コピしてみたり、スコアを買って打ち込んでみたりすると理解が深まりやすいと思います。
例えばCコードを鳴らすときにピアノだと「CEG」で和音を鳴らす事は普通ですが、ストリングスセクションだと「CGE」のようなオープンボイシングで重ねたほうが綺麗な響きになります。このようにオーケストラ特有の知識を付けていく事で、打ち込んだときの感動はさらに大きくなっていくのと同時に、どんどん楽しくなっていきます。楽しくなっちゃえば後はやればやるだけ自然と上達していくでしょう。
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