

【使用作品例あり】オーケストラ音源『Spitfire Symphony Orchestra』をプロが愛用する理由とは?【青木征洋 氏】
「マーベル・ライバルズ」「ストリートファイターV」「ベヨネッタ3」など、数々の作品の音楽を手掛ける作編曲家・ギタリストの青木征洋 氏に、Spitfire Audioを代表するオーケストラ音源『Spitfire Symphony Orchestra』の魅力を解説いただきました。
Spitfire Audio『Spitfire Symphony Orchestra』
『Spitfire Symphony Orchestra(以下SSO)』はオーケストラ編曲に必要なもの一式が全て揃った、いわゆる「オーケストラ全部入り」のライブラリです。弦は弦で、管は管で、打楽器は打楽器で別々に買い揃える必要はありません。
とはいえマーケットには数多のオーケストラ・サンプルライブラリが存在していますし、それぞれが異なる特徴、強みを持っているため、自分が作りたい音楽に適したものを選ぶことが非常に重要です。
SSOには
- 弦楽器
- 金管楽器
- 木管楽器
- 打楽器
に加えて
- ピアノ、ハープ
- ソロストリングス
が幅広く収録されています。
つまり、これを買うだけで「あ!あの楽器が入ってない…」という問題に直面するリスクが大幅に下がります。これらはモジュラーライブラリ、すなわち楽器ごとに個別に収録されています。「Strings」や「Brass」といった形でまとめられているわけではないため、より細かいアレンジメントを自由に行うことができます。
マニアックな奏法まで網羅した圧巻のボリューム
これだけ色々入っているとそれぞれのライブラリの規模感というか容量が気になるかと思われるのですが、その点は全く心配いりません。SSOは簡易的な音源の詰め合わせではなく、Strings、Brass、Woodwinds、PercussionのいずれもがSpitfire Audioの既存のフラッグシップ・ライブラリを更に磨き上げたものなのです。収録されているシグナルパスは必要十分な種類がありますし、奏法のバリエーションは「それ、使うことあるか…?」と疑問に思ってしまうくらい細かいものまで網羅されています。
世界トップクラスの奏者/エンジニア/スタジオによる、最高の音質
次にSSOの強みについてですが、過去のSpitfire Symphony Orchestra Professionalのレビューでも書かせていただいた通り、サンプリングのロケーションとミュージシャン、エンジニアがトップクラスであることがSSOの最大の強みです。つまり良い音だということです。
もしすでに『Spitfire Chamber Strings』をお持ちであれば、あの音像、クオリティで全ての楽器が収録されていると思ってください。ただ一音鳴らしただけの音の説得力がとてつもないです。
もちろんオーケストラと言っても人数やロケーションによって大きく音は変わりますので、SSOのように大編成(弦だけで60人)で非常に美しく響く壮大なサウンドが全てのシチュエーションで”ハマる”わけではないことにご注意ください。よりタイトでポップなオーケストラのサウンドが欲しい場合は「Spitfire Studio」シリーズの方が個人的にはおすすめです。
注目ポイント
ここからは現行のSSOで刷新されているポイントについてご紹介していきましょう。まずわかりやすく変わっているのがGUIのサイズです。旧SSOではGUIの画像サイズが小さく、4Kや5Kのディスプレイ環境では各コントロールの視認性に難がありましたが現SSOではGUIのサイズが大きくなって非常に見やすくなっています。
もちろん、画面が大きくなっただけではありません。スクリプトやパッチの構成が見直され、より打ち込みやすくなっています。
使い勝手が顕著に向上しているのがPerformanceパッチです。これはキーボードで入力、演奏することが想定されているパッチですが、Short、Long、Legatoの奏法が入力の内容に応じて自動的に切り替わるようになっているため、キースイッチ情報を細かく入力しなくてもストレス無く打ち込みを進めることができます。レガートのスピードも、演奏内容に応じて自動的に切り替わります。(任意のレガートをユーザーが指定することも可能です)
さらに一部のソロ楽器にはTotal Performanceパッチが追加されており、このパッチでは通常のPerformance Patchでコントロールできるパラメータに加えてフラッタータンギングやミュートまでを1つのパッチ内で制御することができます。
2025年7月現在ではTrumpet、Trombone、Flute、Oboeに対してTotal Performanceパッチが用意されています。
マイクミックスを作りながらCC1とCC11、CC2(ビブラートコントロール)を組み合わせて演奏表現、音響表現を作り込んでいくことは旧SSOと変わりませんが、テンプレートを作ったり実際に打ち込む際のストレスは軽減されています
新SSOの嬉しいところは打楽器やハープ、ピアノ、ソロストリングスが含まれているところです。ストリングスの音源は何かと気になりがちですし、ついつい買い足してしまう方も多いのではないかと思いますが、オーケストラの打楽器やハープは「そういえば気にしてなかったな…」という方も多いのではないでしょうか。
SSOにはSpitfire Percussion(※現在廃盤)が丸々入っているので、オーケストラ打楽器の編曲で困ることはありません。ハープも地味に困ることが多かったので、なんともお得感があります。
ピアノについてはそれ単体でピアノソロ曲を成立させられるほどではありませんが、オーケストラの中に混ぜる程度であれば十分の表現力を持っています。
まとめ
まだオーケストラの音源を持っていない方、より壮大でスケール感の大きいオーケストラ音源をお探しの方、音響表現にこだわってオーケストレーションしたい方は是非Spitfire Symphony Orchestraをチェックしてみてください。
『Spitfire Symphony Orchestra』使用作品
Nornis – salvia
赤い翼 FFRK Ver. arrange from FFIV
作編曲家/ギタリスト/エンジニア

2008年に株式会社カプコンに入社し、「戦国BASARA」シリーズや「ロックマンXover」の音楽制作を担当。
2014年に同社を退社した後は「ストリートファイターV」の作曲を担当する等ゲームコンポーザーとしてグローバルに存在をアピール。
2015年アーケード音楽ゲーム「CHUNITHM」への楽曲での参加を皮切りに「GITADORA」「太鼓の達人」等にも楽曲を提供し、音楽ゲームの世界においてもテクニカルギタリストとしての立ち位置を確立する。
また、TVアニメ「メイドインアビス」のOP主題歌の作曲を一部担当する等ゲーム以外のフィールドでの活動も広がりをみせる。
プロデューサーとして2005年にギターインストの流布を目的とした「G5 Project」を開始。4thアルバム「G5 2013」ではオリコンCDアルバムデイリーチャート8位にランクイン。世界中の若手ギターヒーローを集結させたプロジェクト「G.O.D.」のプロデューサーも務める。
代表作
- 「Marvel Rivals」
- 「Street Fighter V」
- 「Bayonetta 3」
- 「ASTRAL CHAIN」
- 「戦国BASARA 3」
- 「No Straight Roads」
- 各種音楽ゲームに楽曲提供
など多数
folder NEWS, SONICWIREニュース, SPITFIRE AUDIO, インタビュー/レビュー, オーケストラ音源, ストリングス音源, ソフト音源
label SPITFIRE AUDIO, オーケストラ, ソフト音源