【SONICWIRE 15周年】SONICWIRE誕生のキッカケを当社代表に訊く。
本日、2022年11月29日でSONICWIREは15周年を迎えました。先月からこれを記念した「クリエイティブ増強計画」を開催しているのですが、本記事ではそのしめくくりとして、SONICWIREが生まれたキッカケなどについて社内でインタビューし、まとめてみました!
お話を聞いたのは、当社代表の伊藤、運営チームのマネージャー小泉、開発メンバーの山田です。インタビュワーは、『SONICWIRE』の運営を行うSONICWIREチームに今年入社した高橋(以降「SW高橋」)が務めます。
これまで『SONICWIRE』について振り返る機会はあまりありませんでしたので、ほかでは聞けない情報もございます。どうぞ最後までお付き合いください!
SW高橋
それでは早速ですが、伊藤社長、『SONICWIRE』はどのようなきっかけで生まれたのでしょうか?
伊藤
SW高橋
そんなに昔からサウンド素材のダウンロード販売を考えていらっしゃったのですね・・・!
伊藤
ケータイ向けの着メロ、着音専門のサイトを自社で構築し、社内に大規模な配信サーバーも設置してました。月間数百万ダウンロードを処理する配信サーバーです。
そのうち着メロビジネスがうまく行って、CSPはMC(Mobile Contents)にチーム名を変更してモバイルに特化させていきました。
代わりにサンプリングCDや効果音ライブラリーを扱っていた部署でダウンロード販売サイトを開発することにしました。それが『SONICWIRE』ですね。
先の配信に関するノウハウを、サンプリングCD・効果音ライブラリー販売事業に応用した形です。
SW高橋
『SONICWIRE』の名前の由来は何ですか?
伊藤
単なる語感ですね。運営を担当する部署の名前は当初は「メディアファージ事業部」と言って、サンプリングCDからご利用いただいている方には、そちらの方が馴染み深い名前かもしれませんね。2014年に「メディアファージ事業部」→「SONICWIREチーム」へと変更し、同部署では『SONICWIRE』を主な事業として取り組んでもらうことにしました。
小泉
『SONICWIRE』は、サウンドやコンテンツが素早く効率的に繋がって広がっていく感触があり、サービス運営上はかなりそのイメージに助けられていますね。
SW高橋
SWと略せたり、語感がいいので覚えてもらいやすいネーミングですよね。『SONICWIRE』のシステム設計や開発はいつ頃から、どのようにして着手していたのでしょうか。
伊藤
『SONICWIRE』の設計は、結構早いですよ。たぶん2002年の着メロサイトのすぐあとくらいから設計していたはずです。
山田
開発担当としては、サウンドのダウンロード販売をシステム化するにあたって、当時は他に参考になるようなサイト等もなかったので、伊藤社長が考えた仕様を基に、手探りで開発していく感じでした。
SW高橋
全世界に先駆けて着手していたのですね。手探りでのシステム開発、想像が付きません・・・・・!
山田さんはSONICWIREの開発が始まる15年よりもっと前から携わられてきたと思いますが、色々な機能を開発する中で苦労したところはありますか?特に実装で大変だった機能があれば教えてください!
山田
少し広いお話になりますが、SWで取り扱う製品が日を追うごとに増えているのですが、それに伴いサイトのシステムの方もより複雑になってきています。
特に、ユーザーさんが製品を購入したあとに『SONICWIRE』から送っているシリアルナンバーは、製品によって提供方法が異なっています。
デベロッパーから提供されているAPIを使用して発行する場合もありますので、そういった新規デベロッパーが追加されるごとにそれに合わせて実装していくというようなことが発生します。毎回海外のデベロッパーとやり取りをしながら試行錯誤で開発してきましたね。
SW高橋
システム開発力は『SONICWIRE』の強みのひとつですね!
山田
SWサイトを利用されるユーザーさんも年々増えてきていてありがたい限りです。より満足して利用していただけるようにサイトの方も日々進化していければと考えております。
SW高橋
『SONICWIRE』では、膨大な量のサウンドファイルを効率的に管理するツールまで無料で公開されていますよね!?この構想もかなり早かったのでしょうか?
小泉
「MUTANT」ですね。
伊藤
「MUTANT」のことも構想は創業する前の1990年頃から頭にありました。このソフトウェアは音楽や音ネタの管理なども可能なのですが、我々が設計している間にAppleがiTunesを始めてしまったので、「先を越されてしまった」と思いました。
SW高橋
『SONICWIRE』が始まったのは2007年ですが、当時クリプトンの従業員数は20-30人くらいだったと聞いています。そのうち『SONICWIRE』にはだいたい何人くらいが携わっていたのでしょうか?
伊藤
2007年当時はまだ「メディアファージ事業部」で、人数は製品担当(リリースやサポートを行う担当者)が数名いて、そのほかにも事務や海外担当、システム担当を入れて6~7人という感じでしたね。
SW高橋
伊藤社長の構想から、たったの数名でこんなに大きなストアを作り、運営を開始されたのですね。関与されたメンバーが想像よりも全然少なくて驚きました・・・!
『SONICWIRE』のサービススタートまでに苦労されたことはありますか?
伊藤
最初はサンプリングCDのメーカーにダウンロード販売の許可を得るところからスタートしました。まだ誰もダウンロード販売をやっていなかったので、CDからサウンドファイルを抽出するリッピングツールを自前で開発するところからのスタートでしたね。
ラインナップは、創業当初から付き合いのあったZero-G、Best Service、Big Fish AudioなどのサンプリングCDだったり、それに加えてHollywood EdgeとSound Ideasの効果音のシングル販売も行いましたね。
小泉
当時のサンプリングCDは最新のサンプルパックと違って、個々にループ処理されたWAVファイルが入っているわけではなく、オーディオCDといって普通の音楽CDのようになっていたんです。例えばCDの「トラック1」に「DnBのドラムループ4小節が10個入っている」といった具合です。各ループの間には無音区間があるだけで当然ループ処理もないただの音声データですから、クリエイターさんはまさに“サンプリング”して音をDAWに流し込んでいた形です。
ダウンロード販売を始めるにあたっては、そういったオーディオCDから実際のダウンロードデータ(配信データ)を作っていました。無音を自動検知して区切るツールを含めて、本当に色々な社内ツールが開発されていて、実はその一部は今でもアップデートを続けながら現役で活躍していたりもします。
クリプトンの倉庫にあるサンプリングCD
SW高橋
サービス開始当初はどのような反響があったのでしょうか。例えば、当時のユーザーの声で印象に残っているものなどがあれば教えてください。
伊藤
社内の評判が良かったですね。
当時サンプリングCDなどフィジカル製品は1000タイトル以上もありましたから、各製品を小ロットでも在庫しておかねばならなかった。欠品すると海外から在庫を取り寄せねばならずコストがかかるし、お客さんを1ケ月以上待たせることになるので。これがダウンロード販売にシフトすることで在庫切れがなくなり、お客さんを待たせることもなくなり、社内の在庫管理コストも減りました。
小泉
個々の製品を小分けにして販売できるので、より安価に必要な音だけを導入できるようになった点はクリエイターの皆様にも喜んでいただけたと思います。
SW高橋
今でこそ当たり前のダウンロード販売ですが、当時としてはとても画期的なことだったのですね。ダウンロード販売を始めたことに対して、サンプリングCDを作っているデベロッパーから何か反応はあったのでしょうか?
伊藤
業界の中でも先駆けてダウンロード販売にシフトしたので、デベロッパーからは注目はされました。また各デベロッパーはダウンロード販売には興味はあるが、フィジカル市場を失うリスクも知っていたので、未来のために『SONICWIRE』で何が起こるかを知るために協力的でしたね。
小泉
反応という意味では、海外デベロッパーの代表やオーナーが意見を求めてきたり、伊藤社長が提案したアイディアをもとに製品開発を行うシーンを何度も見かけてきました。
こういったマインドは今も受け継がせていただいていて、最近ではSONICWIREはDTM関連製品を販売するだけでなく、海外でリリースされるソフトウエア音源(直近では米国IMPACT SOUNDWORKSの『TOKYO SCORING STRINGS』)の開発に携わるようなこともしております。
SW高橋
『SONICWIRE』が拡大していった裏側には、その当時の時代的な背景も影響しているのでしょうか?
伊藤
『SONICWIRE』が始まる3か月前の2007年8月には、当社で「Vocaloid2 初音ミク」を開発してリリースしました。初音ミクをはじめとしたボカロ作品がニコニコ動画やYouTubeを中心に続々と発表されてゆきましたので、これによりコンピュータで音楽を創るDTMユーザーがとても増えました。
SONICWIREはちょうどその頃にサービスを開始しています。タイミングも良かったですね。いまでは、SONICWIREでも初音ミクはじめ多くのVOCALOID製品をダウンロード配信しています。ボカロ以外の音声合成ソフトも増えていますね。
SW高橋
ソフトウエア音源の歴史についてもお聞きしたいです。各年代ごとに何か変化はありましたか?
小泉
そうですね、『SONICWIRE』としては先ほど伊藤社長からもあったように初めのころはサンプルパックをどんどん増やしていました。あとは、パッケージ版も含めた話になりますが2008年とか2009年くらいから「シネマティック系」といって映像で映える音を収録したソフトウエア音源の波がだんだんやってきましたね。HEAVYOCITYの『EVOLVE』なんかはそのころの製品ですね。
2009年には『SYMPHOBIA』の初期バージョンも登場しました。それまでオーケストラ音源と言えばVIENNA SYMPHONIC LIBRARYという時代に、「アンサンブル音源」という新しいカテゴリが登場したのは新鮮でした。他には、未だに人気のギター音源『ELECTRI6ITY』もこの年の発売でしたね。
少し飛びますが、2013年以降になるとSPITFIRE AUDIOが登場するなど次々に高品質でハイセンスなオーケストラ音源が、2014年ころにはリバース音源『REV』で鮮烈な登場を飾ったOUTPUTが登場しました。
先ほど、『メディアファージ事業部』が『SONICWIREチーム』になったのは2014年とお話しましたが、ダウンロード販売とパッケージ販売のシェアが逆転したのもちょうどその年でしたね。
2015年には2MIXからボーカルを抜き出す音声分離のツールなんかも流行りました。2016年には未だに高い人気を誇るシンセ音源の『SERUM』も登場しています。
ここ数年についてはまだキャプチャーするには難しい部分がありますが、ライブラリの大容量化が進んだり、機械学習を取り入れたプラグインや、制作効率を重視したソフトウエア音源、各社独自のプロダクトマネージャー(ダウンローダのようなもの)などが増えたというのも印象的です。
SW高橋
技術の進歩や流行を受けながら、数多くの画期的な製品が毎年リリースされているのですね。そのような中で、『SONICWIRE』の取扱い製品もとうとう2万製品を超えました!
伊藤
そうですね。取扱いブランドは200以上、製品数は22,000製品を超えました。担当メンバーも2倍以上になりましたね。
SW高橋
『SONICWIRE』の15年を振り返ってみて、特に印象に残っていることを教えていただけますか?
伊藤
『SONICWIRE』は、もともとサンプリングCDの販売事業として運営をしていましたが、どんどんと成長を遂げ、今ではDTMソフトウエアの総合的配信プラットフォームへと進化したことですね。
SW高橋
『SONICWIRE』に今後期待することを教えてください!
伊藤
『SONICWIRE』を運営しているSONICWIREチームは、音楽クリエイターのための製品・サービスを提供するチームです。DTMソフトウエアの配信だけでなく、ROUTER.FMやSONOCA、SLSなど音楽クリエイター向けのサービスを横展開しています。
今後も音楽クリエイターに無くてはならないサービスを開発してゆきたいですね。
SW高橋
ありがとうございました!
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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