「ついに役者がそろったという印象です。」/『Tokyo Scoring Solo Strings』 Review – スクウェア・エニックス 祖堅正慶氏・石川大樹氏・今村貴文氏
Impact Soundworks待望の新作ソロ・ストリングス音源『Tokyo Scoring Solo Strings』が登場しました。
“室屋光一郎ストリングス”のソロ演奏をキャプチャーした本作のリリースにあたり、前作『Tokyo Scoring Strings 2.0』(以下、『TSS 2.0』)に続き、『ファイナルファンタジーXIV』をはじめとする数々の名作サウンドを生み出しているスクウェア・エニックス所属のコンポーザー“祖堅正慶”氏、“石川大樹”氏、“今村貴文”氏の3名に、合同でレビューをいただきました。
■ サウンドの印象 – 祖堅正慶氏
高弦楽器はオケ中、特に『TSS 2.0』との親和性を考えられた音源となっています。つまり『TSS 2.0』との馴染みが非常によい音源という印象。逆に低弦楽器はよりソロ映えする音源といった印象です。
制作現場において、低弦側のニュアンス強めな表現を制作しようとすると音源的な制約で割とやれる事が限られており、いつも決まった表現ばかりになってしまう傾向が少なからずあったと思いますが、制作現場的には「ついに役者がそろった」という印象です。
■ 『TSS 2.0』との親和性 – 石川大樹氏
基本的なUIや操作性が『TSS 2.0』と同一のため、『TSS 2.0』を使用している方にとってはすぐに馴染む音源になります。どちらもレコーディングスタジオ「Sound City」で収録されているものなので、親和性は高いです。弦楽器セクションのトップノートにソロ音源を混ぜてより生演奏の質感にするテクニックはご存じの方も多いと思いますが、まさに『TSS 2.0』と『TSSS』を組み合わせて使うことで手軽にその質感を手に入れることができます。
■ 親しみやすいGUI – 今村貴文氏
前作の『TSS 2.0』に引き続きGUIのわかりやすさが今作も引き継がれていて直感的に制作を進められます。MIDIのベロシティによる奏法の切り替わり、ヴィヴラートの設定、使用中の再生エンジンなどが一目で把握できるというのは効率的に制作を進めるにあたって大きいメリットがあります。
■ 表現力について – 祖堅正慶氏
レガートの打ち込み方は非常にシンプルで、単純にノートを重ねるだけとなっており、割り込む側のベロシティによってレガート、ポルタメント、スラー等が自動的に選択されるシステムとなっていて非常に手軽です。もちろんキースイッチで「Rebow」や「Marcato Legato」を指定選択する事も可能です。レガート奏法については特に低弦側の収録されている音源の表現力が大変美しく、素晴らしい。
■ 豊富なショート系パッチ – 石川大樹氏
「Sforzando Long」「Sforzando Short」「Decrescendo Long」「Decrescendo Short」「Staccato」「Staccatissimo」「Spiccato」「Pizzicato」が収録されています。ソロ音源の場合、細かなニュアンスの変化を加えていくことが生演奏らしさにつながるため、これらを駆使して打ち込みを行っていくことでより表現力の高いトラックを制作することができます。またエンベロープも編集可能です。特に「Release」はショート系パッチのノリに大きく影響する部分で、これを編集することで楽曲のテンポに合わせてショート系パッチを活用することができます。
■ [ LONGS ]パッチの余韻設定部分 – 石川大樹氏
[ LONGS ]パッチに「Release」サンプルが4種(「Natural」、「Excited」、「Staccato」、「Decrescendo」)付属しているため、曲の雰囲気に合わせてカスタマイズすることができます。よりドライな音で他音源とのミックスを調整していきたい場合は「Release(Staccato)」を選択することで、余韻をかなり短くすることができるためこの音源の収録環境の影響を減らして使用することができます。逆に音源の質感を活用したい場合は「Release(Decrescendo)」にすると良さそうです。
■ 1度の打ち込みで多数の表現 – 今村貴文氏
[ Main ]ページの[ Advanced ]タブを開くと「アフタータッチ」のオプションが選択できるようになっているところも作業の効率化につながるポイントだと感じます。
たとえばワンフレーズの中で長く伸ばす音符があった際に、通常ではヴィヴラートやダイナミクスは打ち込んだ後にCCで書き込むか、打ち込みながらフェーダー操作などをして設定していきますが、「アフタータッチ」のオプションを入れることで、鍵盤を押した後の押し込みの強さによって、ダイナミクスとヴィヴラートの情報を作成することができるため、慣れは必要ですが一度の演奏で表情豊かな打ち込みを行うことができるようになると思います。
■ [ DYNAMICS ]レンジについて – 今村貴文氏
[ Main ]ページで[ DYNAMICS ]レンジの設定を0%~200%に設定できるところがこの音源の特徴的な部分だと感じます。歌もののポップスなどに対して、ストリングスのラインをなるべく聞こえやすいようにレンジを低めに設定したり、繊細なダイナミクスを聞かせたいオーケストラ楽曲へは高めに設定したりすることが気軽にできる、というところが面白いポイントです。
■ 「ゼロレイテンシー機能」 – 祖堅正慶氏
『TSS』シリーズではおなじみの「ゼロレイテンシー機能」は『TSSS』にも実装されており、制作時間の短縮につながるこの機能が正しく継承されている点も嬉しいポイントです。
『TSS 2.0』で確立された使いやすさをそのままに、ソロ・ストリングス音源ならではの繊細さと力強さを兼ね備えた本製品。アンサンブル音源とのレイヤーから、ソロが際立つ情緒的なパッセージまで、あらゆるシーンで活躍するでしょう。詳しくは製品詳細ページをご覧ください!
クロスグレード版
SONICWIREにて『Tokyo Scoring Strings 2.0』もしくは、『Tokyo Scoring Strings Essentials』をご購入いただいたお客様は、クロスグレード版をお求めいただけます。
価格などの詳細は、『Tokyo Scoring Solo Strings』製品ページをご覧ください。

スクウェア・エニックスのサウンドディレクター/サウンドデザイナー。楽曲や効果音の制作からダイアログ、サウンド仕様設計まで手広くこなすマルチクリエイター。ゲームの中で聴こえてくるあらゆる音に関する側面を支えている。
代表作は『ファイナルファンタジーXVI』『ファイナルファンタジーXIV』『LORD of VERMILION』シリーズ、『ナナシ ノ ゲエム』シリーズ、『聖剣伝説4』『MARIO SPORTS MIX』『マリオバスケ3on3』『ドラッグ オン ドラグーン2』『ドラッグ オン ドラグーン3』など。

スクウェア・エニックス所属のコンポーザー。法学部を卒業後、電機メーカーの人事総務部を経て、2019年に株式会社スクウェア・エニックス、サウンドディビジョンに入社。その異端な経歴と多角的な視点が、型にとらわれない独自の音楽的アプローチを生み出している。
『ファイナルファンタジーXIV』の最新拡張パッケージ『黄金のレガシー』、『ファイナルファンタジーXVI』、『ファイナルファンタジーVII リメイク』のBGM制作やサウンド実装を担当している。『ファイナルファンタジーXIV』では祖堅正慶を中心としたサウンドチームの一員として、ゲーム体験にマッチした様々な音楽を日々制作。オーケストラでの演奏、指揮経験を活かした、奥行きのあるオーケストラサウンドを得意としている。人生で初めてプレイしたRPGはスーパーファミコン版の『クロノ・トリガー』。

スクウェア・エニックス所属のコンポーザー。音楽作家事務所にて作編曲の活動を経て、2019年に株式会社スクウェア・エニックス、サウンドディビジョンに入社。『ファイナルファンタジーXIV』の最新拡張パッケージ『黄金のレガシー』、『ファイナルファンタジーXVI』、『ファイナルファンタジーVII リメイク』のBGM制作やサウンド実装を担当。作家事務所での経験を生かし様々なジャンルのBGM制作を得意としている。
自身が携わった曲が収録されている『ENDWALKER: FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack』は日本、アメリカ、イギリスなど世界各国のiTunesアルバムチャートで1位を獲得。毎日FPSゲームをやり込むほどゲーム愛が強く、日々ゲームスキルの向上に勤しんでいる。
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