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【スルーされがち】DTM製品を使うルール「EULA」について知ろう!

2026年2月6日 18:00 by num

私たちSONICWIREのテクニカルサポートには、日々たくさんのお問い合わせをいただきます。

製品が導入できないといった技術的なトラブルに関するお問い合わせが多いですが、中には

「この音源を商用作品に使ってもいいですか?」 「YouTubeの動画配信で流しても大丈夫?」

といったお問い合わせも多くあります。

実はこれらの答えは、SONICWIREの製品ページの……

「使用許諾契約書」ボタンの先に記載されていることが多いんです!

皆さんは、この「使用許諾契約書」を読んだことはありますか?

「難しそうなのでスルーしている」「文字が多くて何が何だか分からない」という方がほとんどではないでしょうか。

お気持ちはよく分かります。難解な文章が書かれていて、意味を捉えづらいですよね。「使用許諾契約書」という字面を見るだけで息苦しさを覚えてしまうほどです。

しかし、実はこの「使用許諾契約書」には、製品を使うための大事なルールが書かれています。

もしもお客様がやりたいと思っていること・やったことがルールで禁止されていたら……

「せっかく購入したのに、目的の用途に使えなかった!」「知らずに禁止事項を行ってしまってトラブルになった……」

となってしまう可能性もあります。

そんな悲しい事故を防ぐために、SONICWIREでは購入前に「使用許諾契約書」を確認できるようにしています。

でも、法律の文章は読むのが難しい。

筆者も同感です。ですが、ポイントを押さえれば法律の文章はぐっと読みやすくなります。

そこで本日は、法律に詳しいスタッフが「使用許諾契約書」を読み解く方法をお伝えします!

※この記事は法律に詳しいスタッフが専門書等に基づいて執筆していますが「分かりやすさ」に重点を置いた内容を目指しているため、法律的な正確性は担保していません。あくまでも読み物としてご覧いただき、個別の専門的な事柄については弁護士などにお問い合わせください。

そもそも「使用許諾契約書」って何?

↑実際のEULAの1ページ目

※クリックで拡大します

「使用許諾契約書」とは、先ほども書いた通り、簡単に言えばその製品を使うための「ルールブック」です。

英語では「End-User License Agreement」と言い、その頭文字を取って「EULA(ユーラ)」と呼んだりします。

少し親しみやすくなりましたね。本記事でも、ここからは「EULA」と表記します。

では、実際にEULAはどんなものか、確認してみましょう。今回は『初音ミク NT』EULAを例にしてみます。

大量の文章が出てきて「ウッ」となってしまうかもしれませんが、怖がる必要はありません。

法律の文章は長くて堅苦しい書き方をしているように見えますが、実は構造はとてもシンプルなんです。

基本的には

「○○は、○○をしなければならない/してはならない/することができる」

という構造です。

ルールを定めるものなのですから、それ以外のことはあまり書きようがないんです。

ただ、なるべく意味がブレないように書き方がある程度決まっていたり、そのルールが適用される条件が細かく書かれているので、複雑に見えてしまうんですね。

条文を読んでみよう

では、例として実際の条文を読み解いていきましょう。

EULAの最初の方には、「これは何についての取り決めなのか(目的)」が書かれています。

一番最初の文を見てみると、

このエンドユーザー使用許諾契約書(以下「本契約」といいます)は、本製品(第1条第2号に定義します)に関してエンドユーザー(以下「ユーザー」といいます)とクリプトン‧フューチャー‧メディア株式会社(以下「当社」といいます)との間で締結される契約内容を定めるものです。

と書かれています。長い文ですが、ゆっくり読んでいきましょう。

最初に着目するべきなのは、文の「述語」です。「○○をする・しない」「○○をしなさい・してはいけない」という部分ですね。

この文では「契約内容を定める」がこれにあたります。

そして次に着目するのは「主語」、「○○は」の部分です。

この文では「このエンドユーザー使用許諾契約書は」ですね。

ここを見るだけでも「この契約書は(何らかの)契約内容を定める」ということがわかります。

では、具体的にどのような内容を定めるのか、その内容は残りの部分に記載されています。

「本製品に関してエンドユーザーとクリプトン・フューチャー・メディア株式会社との間で締結される」

つまり、一番最初の文章分かりやすくすると、

「皆さんが『初音ミク NT』を使うときに、ユーザーの皆さんと当社の間ではこういうルールを決めているよ」

という意味なんです。

こうして見ると、難解な文章に見えても、書かれてある内容は至極当たり前のことのように思えませんか?

このように、法律の文は述語を見つけることが読解の鍵になります。


続けて見ていきましょう。第1条には「定義」が書かれています。

言葉の意味をしっかりと定めておかないと、「当社と皆さんの間で認識が食い違っている!」という現象が起こる可能性があります。これを防ぐために、本題に入る前に言葉の定義を決めておくのです。

EULAを読んでいて分からない単語があったら、ここを読み返してみましょう。


次に、第2条に登場するのが最も重要な「使用許諾」です。

こちらも実際に条文を見てみましょう。

1. 当社は、ユーザーに対し、本契約および「キャラクター利用のガイドライン」ならびにその他の法令を遵守することを条件として、バーチャル‧シンガーの非商用目的での使用を非独占的に許諾します。

2. ユーザーは、本製品を一台のコンピューターに限り、使用することができます。

2つ目の方は分かりやすいですね。皆さんは『初音ミク NT』を1台のコンピューターにインストールして使うことができます。

問題は1つ目。長く書かれていてすぐに頭に入ってきませんが、ここも「述語」→「主語」の順で探していきましょう。

まず、述語は「許諾する」で、主語は「当社は」となります。つまり、当社が何らかの権利を付与しているわけです。

そう考えると、この契約書で当社から皆様に与える権利と言えば一つしかありません。

「バーチャルシンガーを使用する」権利ですよね。

ただ、ここに色々な条件が付されているので、ややこしくなっています。

残りを見てみると、

「本契約および「キャラクター利用のガイドライン」ならびにその他の法令を遵守することを条件として」

「非商用目的での使用を非独占的に」

と書かれています。

これはつまり、「この契約やキャラクター利用のガイドラインを守って」「お金を稼がないのであれば(非商用目的)」『初音ミク NT』を使用しても良いですよと言っているのです。

それに加えて「ただし、自分以外の人も『初音ミク NT』を使用できますよ(非独占的)」とも書かれています。

どうでしょうか? 文を分けて、先に主語と述語を抜き出して考えてみると、そんなに難しい話はしていないですよね。


少し話はそれますが、ここで「権利を付与する? 私たちは製品を買ったんじゃないの?」と思った方もいらっしゃるのではないでしょうか。

実は、皆さんが何気なくSONICWIREで「製品を購入」している行為は、厳密に言うと、製品のデータそのものを所有物として購入しているわけではありません。

データは形が無いものですので、「所有」つまり「持つ」ことはできません。そのため、製品の開発元は正しくお金を支払った皆さんに「使用許可」を出す、というイメージです。

製品を購入したときの「シリアルコード」「ライセンスコード」は、いわばその製品を使うための「免許証」のようなものとイメージしていただくと、分かりやすいかもしれません。

そして、その免許証を持っている人が守るべきルールが「EULA」というわけです。

その他の条項

さて、第2条で無事に「製品を使う権利」をゲットできると分かったら、どんどん細かいルールの話が展開されていきます。

よくある条項を例として挙げるので、先ほどの『初音ミク NT』のEULAのどこに書かれているか考えてみてください!

難しいかもしれませんが、結局は「○○は、○○をしなければならない/してはならない/することができる」という構造になっているので、その構造を意識して読んでみましょう。


禁止事項:

「公序良俗に反する歌詞を歌わせちゃダメ」「リバースエンジニアリング(分解・解析)しちゃダメ」などの行ってはいけない行為を記載します。

SONICWIREのサポートにいただく「商用利用して良いの?」といったお問い合わせの答えは、先ほどの「使用許諾」の条項の続きや、この「禁止事項」のあたりに書かれていることが多いです。

例えば『初音ミク NT』の場合、第2条の後半に「営利目的で公表する場合は、事前に問い合わせてね」といったルールが書かれています。

権利の帰属・譲渡禁止:

「買った人が正しく製品を使ってね」「勝手に友達に売ったりあげたりしないでね」というルールが書かれています。第2条の「使用許諾」で与えられた権利はあなただけのものですよ、ということですね。

限定保証・責任の制限:

「もしソフトウェアに不具合があっても、当社が保証するのはここまでですよ」という範囲を示しています。

契約終了:

ルール違反をした時や、お客様が製品の使用をやめるときに、このEULAの契約は無くなるという決まりが書かれています。製品を使っていないのにずっと契約が残っているというのもおかしな話ですよね。

準拠法と裁判管轄:

もしもこのルールについて、何か不服があった時に、どこの国の法律を基準にするか、またどの裁判所に頼むかを決める約束が書かれています。

(ちなみに「法律違反」や「契約違反」があったらすぐに裁判、というイメージを持っている方も多いと思いますが、裁判になるということは滅多にありません。裁判をする前には、お互いに協議・交渉をして、お互いが納得できる点を探すところからはじめます。)

おわりに:EULAを怖がらずに読んでみよう

いかがでしたか?

文章ばっかりで少し疲れたかもしれませんが、前よりもEULAの内容について、理解が深まったのではないでしょうか。

もちろん、EULAの内容を暗記する必要はありません。ですが、「この使い方、大丈夫かな?」と不安になったとき、「使用許諾契約書」ボタンを押せば答えが書いてあるかもしれない、と知っているだけで安心感は段違いです。

「商用利用はできるのか?」「YouTubeで使っていいのか?」こういった疑問が浮かんだら、ぜひ製品ページの下にある「使用許諾契約書」ボタンを押してみてください。

書かれている文言は難解ですが、慣れてくるとパズル感覚で読めますよ。

それに、それぞれのデベロッパーやサービスによって、決められているルールに違いがあるので、「どうして違うんだろう?」と考えながら読むのも、また面白いんですよね!(さすがに法律オタクすぎるでしょうか……)

この記事で、皆さんがより安心してDTMライフを送れるようになることを願っています!