「完全メタル特化(AREA33)」「古きを知り新しきを知る(HITMAKER)」 / TOONTRACK SDX 製品レビュー by 黒沢ダイスケ氏
コンポーザー・ギタリストとして活躍される黒沢ダイスケ氏より、TOONTRACK 社のドラム音源『SUPERIOR DRUMMER 3』専用拡張ライブラリ『SDX – AREA33』『SDX – HITMAKER』の製品レビューをいただきました!それぞれのレビュー動画も公開いただいております、併せてご覧ください!
黒沢ダイスケ氏:
遡ること約20年、Toontrackの第一弾リリースとなったドラム音源「Drumkit From Hell」の制作メンバーが再集結して収録した、いわば原点回帰というべき拡張パックの登場です。
いまやロックドラム音源といえばToontrackという程になりましたが、当時は新進気鋭のメーカーがメタルに完全特化したサンプリング音源を出してきたと話題になり、自分の初めて購入したサンプリング音源にもなりました。
キックはメタル特有のペタペタ or カチカチ系にするためかのような音で収録されており、使用されたマイクもいわゆる定番系マイクではないので、間違っても汎用性などを期待してはいけません。完全メタル特化、メタルの中でもさらにジャンルが絞られそうな印象すらあります。
特筆すべきは約186GBの収録データ。タム系は最大5タム3フロアで、20インチという巨大フロアタムも収録されています。オンマイクの音は意外とローが控えめなので、音数やアレンジに合わせてブーストすると迫力が出るでしょう。シンバル系はGUIでご覧いただける通り、ものすごい種類を収録しています。マイクトラックも他に類を見ないほど多く、特にアンビエント系マイクが11種類(モノラル4、ステレオ7)もあるので、これも曲によって使い分ける、組み合わせる、といった楽しみがあります。
「Drumkit From Hell」と大きく異なる点としては、収録に参加したドラマーはMeshuggahのTomas HaakeではなくPain of Salvation等で活動するLeo Margaritです。個人的にはTomasの代名詞でもある重ねシンバル等を期待したところもありますが、単なる当時の焼き直しではなく、現代の解釈で収録された新しい音源ということでもあります。
- メーカー:TOONTRACK
- カテゴリ:ソフト音源
黒沢ダイスケ氏:
80〜90年代の数々のヒット曲を彩ったドラムサウンドをテーマとした、Superior Drummer 3専用の拡張パックです。大きく分けて、通常のアコースティックなドラムと、電子ドラムが収録されています。
アコースティックドラムはいわゆるレトロ系と思いきや、エフェクトを外したデフォルト状態ですと、上品な音で収録された普通のドラムサウンドですので、現代的な楽曲にも問題なくマッチしてくれそうです。一般的なドラムキット以外にも、細長い筒状の形状をしたオクタバンや、バスドラムのヘッドを張る巨大タムのようなゴングドラムも収録されているので、実験的なフレーズにも対応可能です。もちろんプリセットには当時を象徴するゲートリバーブ系のものもいくつかあり、レトロサウンドを瞬時に呼び出すことも出来ます。
電子ドラムセクションは、808やSIMMONS SDSといった往年のドラムマシンを中心に、400種類以上も収録されており、アコースティックドラムと組み合わせることが可能です。
近年は80’sカルチャーが再ブームとなり、音楽もシティポップなどが再注目されているので、古きを知り新しきを知るといったドラム音源になるのではないでしょうか。
- メーカー:TOONTRACK
- カテゴリ:ソフト音源
1983/02/23 生まれ
2003年、Dream Theater Official Songwriting Contestで2位受賞。
2006-2017年、96(クロ)名義にてゲームミュージック作曲家として11年間KONAMIに所属。
2013年、96名義での1stソロアルバム『BLACK ALBUM』をリリース。
2022年、4thソロアルバム『BLACK ALBUM 4』をリリース。
主な提供楽曲
- BEMANIシリーズ/KONAMI:作編曲
- 夕星の芒野と消ゆ/EARTHSHAKER:作曲
- はなまるぴっぴはよいこだけ/TVアニメ「おそ松さん」OP曲:作編曲
- デンシンダマシイ/TVアニメ「BORUTO-ボルト-」ED曲:編曲
- 心誰にも/TVアニメ「シャドウバース」ED曲:編曲
- 零の位相/kradness:作編曲
- Dash & Strike/影山ヒロノブ:作編曲
シンコー・ミュージック・ムック「モダン・ギタリスト 特集: ジョン・ペトルーシ」奏法解説等執筆。
folder TOONTRACK, インタビュー/レビュー, ソフト音源
label SDX, SUPERIOR DRUMMER, TOONTRACK, レビュー, 黒沢ダイスケ