SONICWIRE

ボカロP“はるまきごはん”さんに聞く!ニューアルバム収録曲のボーカルトラックに使ったプラグイン・エフェクトと、その設定をご紹介。

2020年10月8日 16:00 by rym

音楽制作の中で、ボーカルやコーラスといった”声”に挿すエフェクトというのは非常に重要です。エフェクト1つで音量や音像、距離感などの聴こえ方が大きく変わってくるため、楽曲の世界を形作るのに欠かせない大きな構成要素となります。

SONICWIREでは、クリエイターの皆さんがボーカルエフェクトに対してどのようなアプローチを取っているかお話を伺い、まとめていく企画をスタートいたしました!この企画では、「実際に楽曲に使われているボーカルトラックに挿しているプラグイン・エフェクト」をご紹介。
実際に楽曲を聴きながら、どのような変化をしているかをご確認いただけます。また各エフェクトのパラメータが公開されることも。具体例を確認しながらボーカルエフェクトについて学ぶことで、クリエイターのノウハウやテクニックを日々の制作にご活用いただけます。
 
さらにこの企画では、次のクリエイターさんをご紹介で繋いでいくバトン方式を採用。記事中で次に紹介いただくクリエイターさんを発表いたしますので、そちらにもご期待ください!

 


■ クリエイター紹介「はるまきごはん」さん
第2弾は、『メルティランドナイトメア』『アスター』、また2020年2月に開催された「SNOW MIKU 2020」のテーマソング『ぽかぽかの星』を手掛けた、ボカロP“はるまきごはん”さんです。

 
今回はるまきごはんさんには、2020年8月26日にリリースされたニューアルバム『ふたりの』に収録されている楽曲で使用しているプラグイン・エフェクトを教えていただきました。

 

繊細なサウンドを用いた、優しい曲調と世界観に引き込まれるような楽曲を多数収録しているこちらのアルバムの詳細は、下記リンクよりご確認いただけます。
さらに同梱されているアートブックには、これから紹介するプラグイン以外にも、使用機材などの詳細を解説した「はるまきごはんミュージックメイキング」を収録しています。
 
作品だけでなく、同氏の世界観を形作るのに欠かせない“制作環境”にもフォーカスできるアルバムとなっておりますので、是非一度ご覧ください!

「ふたりの / はるまきごはん New Album」(外部サイト) »
 

はるまきごはんさん:
2020.08.26にリリースされたはるまきごはんNEWアルバム「ふたりの」収録曲でよく使用したボーカルのエフェクトを紹介します。
「ふたりの」では「再会」「約束」「秘密」のボーカルとアコギはスタジオレコーディングでしたが、それ以外の楽曲は大体自宅でREC・MIXしてます。

 

― ミックス・マスタリングの際に心がけていることはありますか?

はるまきごはんさん:
前作よりも好きだと思えるMIXにすることを目標に、毎回違うことを試してみること、新しいプラグインを買い続けること、好きなMIXを聴いて考えること

 

今回ご紹介したアルバムもそうですが、はるまきごはんさんはVOCALOIDだけではなく、ご自身で歌唱された楽曲の制作も行っています。
今回は「人間のボーカルトラック」「VOCALOIDのボーカルトラック」、それぞれに挿すエフェクトについて別々に教えていただきました!

■ 必ず挿すプラグイン・エフェクト

Celemony『Melodyne 5』

はるまきごはんさん:
歌は必ずMelodyneで整えます。ボカロも調声でカバーできないピッチのヨレがあるので使います。

iZotope『Neutron』

はるまきごはんさん:
下地を作る感覚で使ってます。
この後にも処理を加えるので、あまりきつく変化しすぎないくらいに整えるイメージです。
録った音にTrack Assistantを使います。EQを整えて、コンプのかかり具合を薄くしたり、エキサイターをその後の段に使う場合はエキサイターをバイパスしたりして使ってます。

Waves『CLA-76』

はるまきごはんさん:
CLA Classic Compressors バンドルに入っているUrei 1176をモデリングしたプラグイン。味付けしつつ更に整えるイメージです。少し歪んで、かっこいい音になります。この枠は、Waves『CLA-2A』や、Softube『Tube-Tech CL 1B』あたりを使うこともあります。アルバム「ふたりの」ではCLA-76のみに絞りました。

Waves『CLA-76』製品ページ »

Waves『DeEsser』

はるまきごはんさん:
Wavesの定番ディエッサーです。同じWavesの『Sibilance』なども試しましたが、この「DeEsser」が一番自然に歯擦音を抑えられて好きです。シンプルなのも好き。

Waves『DeEsser』製品ページ »

fabfilter『Pro-Q3』

はるまきごはんさん:
僕のまわりの人もよく使っている人気なEQです。今まで使ったどのEQよりも使いやすい&見やすいインターフェースで、自分の欲しい機能は全部揃ってます。最後の方に挿して音を調整する役割で使っています。

FABFILTER『PRO-Q 3』製品ページ »

Cubase付属『DualFilter』

はるまきごはんさん:
これである必要はないですが、ロングトーンで幻想的に消えていくようなボーカルを作る際に手軽にハイパスorローパスのオートメーションを書けるシンプルなフィルターが役立つので使ってます。

Valhalla DSP『Valhalla Delay』

はるまきごはんさん:
ディレイです。テープからハイファイなものまで一通りやれます。

Waves『H-Delay Hybrid Delay』

はるまきごはんさん:
定番ディレイです。気分でValhalla Delayと使い分けてます。

Waves『H-Delay Hybrid Delay』製品ページ »

Waves『TrueVerb』

はるまきごはんさん:
リバーブです。教会系のプリセットを昔からずっと使ってます。テールが長くぼやけた残響のものを浅めにかけるのが好きです。

Waves『TrueVerb』製品ページ »

Waves『Renaissance Reverb』

はるまきごはんさん:
リバーブです。こっちはプレートリバーブとして使ってます。ドライ目な楽曲のボーカルにはTrueVerbを使わずこれだけ使います。

Waves『Renaissance Reverb』製品ページ »

■ 楽曲によって使い分けるプラグイン・エフェクト

Waves『Aphex Vintage Aural Exciter』

はるまきごはんさん:
エキサイターです。かなり個性的な歪み方で明らかに音が変わるのがわかるので使える楽曲は選ぶイメージです。ボーカルだけでなく色々な楽器に使えるし、音もすごくかっこいいのでエキサイターを探してる人にはおすすめです。

Waves『Aphex Vintage Aural Exciter』製品ページ »

Nomad Factory『COSMOS』

はるまきごはんさん:
エキサイターとして使います。ボーカルだけでなくピアノ等にも使えます。しっかりと張り付いてくれる音になるイメージです。

Nomad Factory『Blue Tubes Valve Driver ADR2S』

はるまきごはんさん:
ボーカルの歪みにはよくこれを使っていました。最近はボーカルを深く歪ませる機会が少ないですが、数年前はよくやってました。
■ エフェクトチェイン例: はるまきごはんさん Vocal Ver.
はるまきごはんさん:
Neutronのエキサイターはバイパスします。

インサート

センド

■ エフェクトチェイン例: VOCALOID Ver.
はるまきごはんさん:
ボカロは昔からRCompを使い続けてきたのでRCompを使うこともあります。
Neutronのエキサイターをバイパスせず使うことが多いです。

インサート

センド

■ 使用シンセ紹介: Xfer Records『Serum』
はるまきごはんさん:
「ふたりの」収録曲Tr07「再会」のシンセは大体これです。

Xfer Records『Serum』製品ページ »

はるまきごはんさん、ありがとうございました!
次回の第3弾は、はるまきごはんさんのご紹介により、『ロンリーユニバース』『アイボリー』などの楽曲を制作したaqu3raさんのエフェクトチェインをご紹介いたします。お楽しみに!

 

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harumaki gohan

はるまきごはん
Musician / Illustration / Animation
 

札幌に生まれる
スープカレーが好き

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