SONICWIRE

ボカロP“BIGHEAD”さんに聞く!新曲のボーカルトラックに使ったプラグイン・エフェクトと、その設定をご紹介。

2020年9月8日 16:00 by rym

音楽制作の中で、ボーカルやコーラスといった”声”に挿すエフェクトというのは非常に重要です。エフェクト1つで音量や音像、距離感などの聴こえ方が大きく変わってくるため、楽曲の世界を形作るのに欠かせない大きな構成要素となります。

SONICWIREでは、クリエイターの皆さんがボーカルエフェクトに対してどのようなアプローチを取っているかお話を伺い、まとめていく企画をスタートいたしました!この企画では、「実際に楽曲に使われているボーカルトラックに挿しているプラグイン・エフェクト」をご紹介。
実際に楽曲を聴きながら、どのような変化をしているかをご確認いただけます。また各エフェクトのパラメータが公開されることも。具体例を確認しながらボーカルエフェクトについて学ぶことで、クリエイターのノウハウやテクニックを日々の制作にご活用いただけます。
 
さらにこの企画では、次のクリエイターさんをご紹介で繋いでいくバトン方式を採用。記事中で次に紹介いただくクリエイターさんを発表いたしますので、そちらにもご期待ください!

記念すべき企画第1弾は、HATSUNE MIKU EXPO 2014 in LA&NYのテーマ曲『Sharing The World』『Story Rider』といった数々の有名楽曲を生み出してきた ボカロP“BIGHEAD”さんです。
― ミックス・マスタリングの際に心がけていることはありますか?
 
BIGHEADさん:
自分の頭の中にある音に縛られないで新鮮なサウンドを作るために、他人が作ったpresetから音を探していきます。
iZotopeのNectar3ではEDM ENHANCEMENT/Heavily distorted space/ducked delayなどを基に微調整していくことが多いです。
 
自分は初音ミクの調整をほぼしないので、人間の声の様な複雑性やTravis Scottみたいな歪みを付加するために
Abbey Road Saturator/AVALON VT-737sp/THERMALなど色々な倍音を付加していきます。
OUTPUT社のTHERMALは入力音に対して動的な歪みやXYコントロールでランダムな歪みを作れるので初音ミクの声に合うと感じています。
 
思い切ったボーカルの音像を作ってみたので、ぜひ聴いてみてください!

 
今回プラグイン・エフェクトのチェーンを教えてくれた曲は、2020年8月にリリースされた『ANXIETY FEAT.HATSUNE MIKU』。ミステリアスな雰囲気とノリの良いビート、さらに初音ミク Englishによるクールで魅力的な歌唱が特徴の楽曲です。

 
今回の楽曲のボーカルに挿されているプラグイン・エフェクトは下記の10種類。実際にご使用いただいているプラグインを、インサートしている順番どおりに教えていただきました。
また今回は実際に設定されているパラメータを参照できるよう、操作画面のスクリーンショットもご提供いただきました!是非画像をクリックして、それぞれのプラグインに設定されているパラメータも参考にしてみてください。

1. Auto-Tune『Auto-Tune EFX+』

ANTARES『AUTO-TUNE EFX+』製品ページ »

2. Waves『MaxxVolume』

『MaxxVolume』製品ページ »

3. iZotope『Nectar 3』

『Nectar 3』製品ページ »

4. Softube『Tube-Tech』

5. iZotope『Nectar 3』

『Nectar 3』製品ページ »

6. Waves『Abbey Road Saturator』

『Abbey Road Saturator』製品ページ »

7. Output『THERMAL』

『THERMAL』製品ページ »

8. Ableton Live内蔵プラグイン『Ahee’s Singer Vocalizer』

9. iZotope『Nectar 3』

『Nectar 3』製品ページ »

10. Leapwing Audio『DynOne』

『DynOne』製品ページ »


ここまでがボーカルトラックのエフェクトチェーンです。その他のトラックについても教えていただきました。
ハモり(コーラス)パートには、電子的な質感やロボットボイスなど、ボーカルトラックに対して厚みを与えることのできるiZotope『Vocal Synth 2』などVocoder(ボコーダー)をよく使っている模様。
『Vocal Synth 2』製品ページ »

この楽曲の特徴でもある”重みのあるキック”の秘密は、Accusonusのビート・スカルプティングエフェクトである『Beatformer』でした。
 
「SUB LOWで“キー”を選択できるので悩まずにグッと上げられました」とのことで、昨今のトレンドであるピッチの調整を行いながらビートサウンドの構築ができる点を重宝いただいています。
『Beatformer』製品ページ »

またマスタートラックにも、帯域毎にダイナミクスを調整することでサウンドに「厚み」を加える、Leapwing Audio『DynOne』を挿しているそうです。
 
これによって全体のサウンドに統率感が生み出され、聴いていて非常に楽しい楽曲に仕上げられていますね。
『DynOne』製品ページ »

BIGHEADさん、ありがとうございました!
第2弾は、BIGHEADさんからのご紹介により、SNOW MIKU 2020のテーマソング『ぽかぽかの星』『メルティランドナイトメア』でも有名なはるまきごはんさんのエフェクトチェーンをご紹介いたします。お楽しみに!

harumaki gohan

BIGHEAD (旧名義: エレキP)
Musician
 
10代の頃より音楽活動を始め、ギター、ベース、ドラム、ミックス機材などを習得。音楽制作会社勤務を経てフリーコンポーザーに転身。CM音楽の製作、編曲、レコーディングなどを手がける。2012年より「初音ミク」を使用したボーカロイド楽曲の制作をはじめる。
2014年『Story Rider』(エレキP名義)がLADY GAGAのコンサート「LADY GAGA’s artRAVE: the ARTPOP ball」(北米16ヶ所公演)の初音ミクによるオープニングアクトで演奏された。
同年、名義をBIGHEADに改め、初音ミクの世界ツアー「HATSUNE MIKU EXPO 2014 in LA&NY」のテーマ曲『Sharing The World』を作曲。開催地ロサンゼルスのアフターパーティーにてDJプレイを披露。同楽曲は全米放送の人気番組CBS「Late Show With David Letterman」で放送されたほか、「将棋 電王戦 FINAL」のPV動画や「初音ミク -Project Diva- X」など世界中で楽曲使用されている。
その他、GOODSMILE RACINGのチームテーマソング、雪ミクスノースポーツラインの公式テーマ曲、CMソングを手掛けるなど多岐にわたる活動を行っている。
 
北海道札幌市在住

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