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【プロの秘技】世界的バンド「BLOOD STAIN CHILD」RYU氏のメタル制作講座【音作り編】

2024年6月7日 15:19 by hik

どうも、BLOOD STAIN CHILDのRYUです。

5/8(水)にBLOOD STAIN CHILDのニューアルバム2作、「METALIA」「CYBERIA」がリリースされました。 サウンド的に違いを持たせた2つのアルバムで、それぞれ「METALIA」のほうはMETALサウンドを主軸として、EPIC系音源やシネマティックオーケストラ音源を多用し、まさにEPICで壮大な楽曲中心の内容、一方「CYBERIA」のほうは全く新しい方向性で、METAL&サイバー&ダンス&Hip Hop・・・もはやジャンル不明のUpliftingなサウンドになっています!

この2つのアルバム「METALIA」と「CYBERIA」を元にレコーディング&ミックスそしてアレンジ&使用音源に至るまでのサウンドメイク術を全3回にわたって徹底解説させていただきます。

もう包み隠さずボリュームMAXでお届けいたします(笑) 是非アルバムのほうも聴いていただけたら幸いです。以前も何度か記事を書かせていただいていますが、やっときたかという内容で私自身もわくわくしています。SONICWIREさんに感謝!

ドラムのレコーディング/音作り

まずはエンジニアリング編としてレコーディングやミックスについて解説していきましょう。

セオリー通りの、サウンドの土台となるドラムのサウンドメイクからいきましょう。”メタル”では特に注目される部分だと思います。

「METALIA」のドラムパートは生ドラムをレコーディングし、その生ドラムにサンプルを重ねて音作りをしています。

メタルやラウドなロックではツーバスやテクニカルなプレイが主体となるため、キックやスネアの音量のばらつきを一定に聴こえるようにある程度揃える必要があります。音色的にもアタック感のある独特の音色にすることによって、速いフレーズでもはっきりと聴かせることができ、通常では生ドラムのダイナミクスにプラスして、サンプルを載せてミックスしています。 そうすることによって音量的にまとまった、 速くテクニカルなプレイでも1音1音はっきり聴こえるサウンドに仕上がります。 メタリカ初期のミックスではキックにカメラのシャッターの音をサンプルしてミックスしたと聞いたことがあります。

レコーディングは私が機材やシステム面のコーディネートを担当したレコーディングスタジオ”Noo York Studio”でレコーディングを行いました。もちろん私がエンジニアを務めました。

昨今ドラム音源もリアルなものが多く、打ち込みでもいいのでは?という風潮もありますが、やはり生の空気感や特に空気”圧”は音源のみでは再現できない部分でもあります。

この辺りは実際ドラムをスタジオでレコーディングしていて、モニタースピーカーから出てくる音を聴いている方なら理解できると思います。

バジェットがあり、ここぞという作品の時には必ず生ドラムのレコーディングをしています。

そしてここが重要なポイントかもしれません。生ドラムのレコーディングには後でサンプルを重ねるために必ずキック、スネア、タムにトリガーピックアップを装着して、その信号も合わせてレコーディングします。

使用しているトリガーピックアップはDDRUMです。これはピエゾピックアップのような仕組みで、振動を拾いそれを音声として出力するもので遅れが全くありません。

そして超正確に1打1打出力してくれます。”抜け”や”2度鳴り”することもありません。そして一番いいところは波形がものすごくくっきりしていて、後にサンプルを重ねる際に正確にヒットポイント検出をしやすく、位相のずれの心配も少ないです。

この手法は今まで仕事を共にしてきた海外のエンジニア達に教わった部分でもあります。トリガーを使わずともDAW上で生ドラムのヒットポイント検出は可能ですが、アタックの部分の検出の正確さは比になりません。

このトリガーのオーディオデータをCUBASE上でMIDIデータに変換します。私の場合はこの部分だけCUBASEを使っています。

生ドラムのレコーディングを終えると、次のBassやGuitarパートのレコーディングのためにドラムパートを編集し、まとめます。

そのトラックを聴きながらBassやGuitarをレコーディングするので、タイミング修正などはここで完璧に行っておきます。

サンプルを重ねる作業もこのタイミングで行います。サンプルに使用する音源は『SUPERIOR DRUMMER 3』です。トリガーピックアップの信号から変換したキック、スネア、タムのMIDIデータを『SUPERIOR DRUMMER 3』で鳴らし、オーディオに書き出して生ドラムのトラックと調整しながら音作りしていきます。

“メタル”と言葉で聞くと”もの凄く重そう”、”低音凄そう”というようなイメージがあるかもですが、全てのパートにいえることで不要な低音はバッサリとカットします。

キックに関してのポイントはワンバスのパートとツーバスのパートを分けて別々で処理します。

ツーバスのパートは低音が強くなってしまうので、ワンバス時と同じぐらいのサウンドにするためです。

スネアの音作りに関しては音がカンカンとかタンタンとか軽く高くならないように注意することが必要です。ダン!というような低めで太さのある音作りをします。

音源のピッチを下げたり、EQで調整をします。また全体のパートが入ってくる直前にスネア1発が入るパートでは、そこだけスネアを別トラックにしてコンプ強め、リバーブ強めにし音作りします。トップやアンビエント音は生ドラムのデータのみを使用します。中低音~低音あたりがごちゃごちゃしてくるので、バッサリとカットします。

そして音作りを進めていくと微妙にズレている箇所がより浮き彫りになってくるので、最終的に一打一打チェックし編集していきます。

そして全てのドラムパートを1つにまとめてコンプやサチュレーションで処理し一体感を出します。

ベースのレコーディング/音作り

次にベースなのですが、このベースの音作りがMETALやラウドロックで最もサウンドの印象を決定づけるものだと思います。

ベースの音作りが一番わかりにくく難しいところだったりするのですが、ここをコントロールすることができれば最高に心地良いロー&ワイドなサウンドが生まれます。

「METALIA」と「CYBERIA」では明確にベースサウンドも分けています。通常ベースのサウンドメイクではキックより上にもっていくのか、キックより下で鳴らすのかこの2つをイメージして作っていきます。メタルやラウドロックではキックより下、ポップスやロックではキックより上といった具合に。

実際はどの楽器も広い帯域で鳴っているので、100%分けることはできないですが割合的にみてそうなるように調整します。

メタルサウンドの「METALIA」ではキックより下、ダンス系の「CYBERIA」ではキックより上のサウンドを意識しています。

キックのサウンドもベースとの兼ね合いで「METALIA」では「CYBERIA」より低音が少なめ、「CYBERIA」ではより低音を効かせたダンス系キットのキックサウンドにしています。

まずアンプサウンドとD.Iの2つのトラックをレコーディングします。

「METALIA」では海外的な手法で、まずベースアンプサウンドをキックの上に乗っている感じで仕上げます。

そして、D.Iから録音したトラックを元にEQやWAVESのRENAISSANCE BASSを使用し、超低音のサブベーストラックを作ります。

このトラックがキックの下にきます。ここも棲み分けが必要で、アンプのトラックとサブベーストラックがぶつからないように棲み分けしましょう。 ちょうどキックをアンプとサブベースのトラックでサンドイッチするイメージです。

最後に一体感を出すためにベーストラックを1つにまとめます。最終的に再度RENAISSANCE BASSで整えます。

BASS Ampサウンドサンプル

BASS D.Iサウンドサンプル

BASS mixサウンドサンプル

ドラム&ベースサウンドサンプル

ギターのレコーディング/音作り

ギターに関してはドラムやベースに比べると音作りはそう難しくありません。「METALIA」、「CYBERIA」両方、そしてメタル、ロック全般にいえる共通した処理の仕方になります。

特に気を付けるのはキックやベースとの棲み分けのための低音の処理と2.5kHz~2.7kHzあたりの倍音のコントロールです。

今は質の高いシミュレーターやプラグインもたくさん出ていて、元音には困らない世の中になっています。今回のギタートラックは以前ここで記事を書かせていただいたTue MadsenのKEMPERリグ『TUE MADSEN SIGNATURE KEMPER PACK』を使用しました。

ディストーションギターの音作りで特に気を付けていることは、2.2kHz~2.7kHzあたりの倍音の処理です。

ここがそのままだと特に歌とぶつかったり、シンセや上物とぶつかったりしてごちゃごちゃになります。ですので2.2kHzをQ幅最小にしてカットしていき、次に2.5kHzを同じくQ幅最小にしてカットしていきます。

ギターの音が若干おとなしくなったように聞こえますが、他との棲み分けは断然良くなり、結果最終的に綺麗に聞こえ音圧を上げられます。これは絶対やった方がいいです。

あとは低域のカットになります。元の音にもよりますが、耳とスペアナを使い100Hz以下が下がっていれば問題ないかと思います。

ここまででドラム、ベース、ギターとしっかり棲み分けできたトラックが完成します。

ピースサウンドサンプル

まとめ

まずはバンドサウンドの要であるこの3つのパートをしっかり作りこむことが重要です。各帯域しっかり棲み分けすることにより、音のマスキングが抑えられ一か所に音が集中することを避けられるので、最終的に音圧を上げ、綺麗に聴かせることができるのです。

ボーカルのレコーディングやミックスに関してはまた機会があったらお話したいと思っていますが、バンド、ボーカル、オケ、シンセなど全てのトラックを調整し終えたら最終的にアウトボードSolid State Logic「FUSION」と「THE BUS+」に通し2mixを仕上げます。これらのアウトボードを通すとまるで魔法をかけたようなあの(笑)サウンドに大変身します。

とにかく音作りというのはレコーディングからすでに始まっています。自分が思い描くミックス像をイメージしてレコーディングに取り掛かります。そして妥協することなくどんな細かい作業でも行うことによって理想とするサウンドに近づけることができるのだと思います。


少し余談にはありますが、今回私自身映像制作もスタートさせ、4作のMusic Videoも制作しました。撮影、VFX、編集、監督と全ての映像制作を一人で行いました。(生成AIは使っていません笑)

私はずっと音楽と映像は密接な関係であり、合わせて一つのアートにしたいと考えていました。アルバム2枚分の楽曲制作と合わせて途方もない制作時間でしたが、私自身で両方作ることによって、私が思い描く音楽と映像がより強く一つになったと思います。

是非見ていただきたいです。ありがとうございました!

RYU

作詞家/作曲家/編曲家/ギタリスト

メタル×EDMのパイオニアとして世界中に知られているバンドBLOOD STAIN CHILDのコンポーザー、ギタリスト。声優小岩井ことりとのユニットDUAL ALTER WORLDでも活動。

VFX映像制作もスタートさせ、音楽×映像のトータルクリエイターとしての活動をスタート。

その他、アニメ関連,ゲーム音楽の制作や専門学校講師(サウンドクリエーターコース)、レコーディング&ミキシングエンジニアと多岐にわたり活動している。

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ツアー情報

BLOOD STAIN CHILD Release Tour 2024 “W”

【METALIA phase】

  • 6/8(SAT) 大阪心斎橋soma
  • 6/16(SUN) 東京吉祥寺ROCK JOINT GB

【CYBERIA phase】

  • 7/6(SAT) 大阪心斎橋soma
  • /27(SAT) 東京新宿Wildside Tokyo

チケット発売中!

詳細は特設サイトで

http://www.bloodstainchild.com/wrelease