SONICWIRE

【サンプルパック活用術】マイナスP氏(ワンダフル☆オポチュニティ!)による楽曲制作テクニック

2022年11月14日 17:00 by toy

SONICWIREでは、サービス開始15周年を記念した特別企画として、多種多様なジャンルのループやワンショット、MIDI等の素材が収録された無償サンプルパック『SONICWIRE 15th Anniversary Pack』を公開しています。

『SONICWIRE 15th Anniversary Pack』

無償サンプルパックを使いこなすテクニックについて、ボカロPとして活躍する”マイナスP”氏(ワンダフル☆オポチュニティ!)にお伺いしました!

初めに

サンプルパックを使った制作の最大の魅力は、自分の引き出しの外からアイデアを持ってこれることだと思います。そのジャンルに精通する匠によって制作/構築されたフレーズの数々はどれも素晴らしく、イメージを掻き立ててくれるので、僕は普段の制作からよく取り入れています。

「このBメロ、なんか新鮮味がほしいなぁ」とか「ここのブリッジにかっこいいフィルをいれたいなぁ」と思った時とかに使いますね。アートでいうところの「コラージュ」とかが近いかんじかな。美味しいところを切って貼ってどや!?みたいな。

特に、効果音やリズム楽器のような無音階のサンプルに関しては、初心者の方はどんどん取り入れていったほうが楽曲のクオリティが格段に上がるのでオススメ。

「人の作った音だからイヤ?」だと!?使えるものは使った方がええよぅ!あの有名プロデューサーもきっと使ってるぞ!(多分)

「音のセンスを磨きたい」とか、「このジャンルをもっと知りたい」というニーズにもサンプルパックがうってつけで、ある種のお手本=教則のように機能してくれます。これから音楽やる人には「教則本買うよりサンプルパック買え!」と声を大にして言いたいです。だって、そのまま使うこともできるし、真似て自分でイチから作ることもできるし、よくないですか?You、かっこいいリズムにしちゃいなよ!…DAWの進化により、ピッチやスピードの編集もしやすくなってる昨今、取り入れない手はない!(多分)


今回公開された無償サンプルパックの音を使って自分の曲「DOPE」(「ワン☆オポ!VOL.11」収録/2016年)をリミックスしてみました。簡単な解説をしていきます。

※以下に登場するサンプルは、全て『SONICWIRE 15th Anniversary Pack』に収録されています。

▲楽曲完成時のトラック全体像

イントロ~Aメロ

イントロからAは、PRODUCER LOOPS『ARCADE POP』のピアノコードフレーズを主軸にして、オブリのメロなどは別のパックの好みのフレーズの部分だけを切り出し、Logicの機能「Live loops」内ピッチトランスポーズでスケールを合わせて散りばめています。

Live loopsではテンポを半分にしたり、倍にしたりも簡単にすぐできる。サンプルパックを自分の曲に導入する際のコツは、とにかくトライ&エラーでかっこいいと思うまで、多くのサンプルを自分の曲にあてはめまくること。バチっとはまるフレーズがいずれ見つかります。

このサンプルパックを使った手法だと、音作りに時間をかけなくてもいいので、マッチングすれば完成までは早いです。

Bメロ

Bメロは、ZERO-G『NU DISCO』のエレピのサンプルがピンときたので、自分の曲のキーに合わせて構築しました。他にもリバーブ感のある素材は、響きの質感をHP/LPフィルターで整えて追加しました。ちょっと音があたってる(不協和音になってる)ところがありますが、細かいことは気にしません。かっこよかったらOK!音楽は頭でやってんじゃない!センスだ!…

後半から出てくるライザー系のFX(しゅううぅぅぅうぅ〜って盛り上がるやつ)は、自分でつくるとなると時間がかかるので、サンプルを導入して時間節約しちゃいましょう。短い盛り上げから長い盛り上げまで色々入ってます。こういうのはつい沢山使いたくなるけど、ここぞ!というときに使ったほうがインパクトありますよね。

サビ

サビは、PRODUCE LOOPSのEDM系のベースのフレーズを使って構築しました。サイドチェインダッキングされたサンプルだったので、4つ打ちのキックを合わせるだけでもうかっこいい。たまらんです、この3連のシンセベース。

途中、左chから入ってくるギターもサンプルで、『BIG FISH AUDIO / THE ROCK COLLECTIVE – 15th Edition』から。この素材は、ピッチを一部変更したくらいでフレーズの並びなどは加工していません。こういうギターのカッティグの素材ってある程度コード外れててもかっこよくなること多いです。LOWを削ってコード感減らせば、リズム楽器とメロ楽器の中間くらいの素材になって、楽曲の厚みを増強したいときに使えますね。リバーブ感(響き)も生楽器特有のもので、隠し味としてうってつけのサンプル素材です。

補足

サンプルパックの音色加工は、ほとんどしていなくて、やったのは音量/音圧の調整、フィルター/EQで質感を整える程度。サンプル以外の音も、歌(ミク&DIVA)以外だと、Aパート後半のLchの小さく鳴ってる16分Pluckと、Bパートの途中から出てくるベースの二つだけで、あとは全部サンプル。

今回は「A→B→サビ」でイメージがガラッと変わるアレンジにしたので、パートごとにトラックをグループ化して音色管理、MIXをしました。普段はあまりやりませんが、こうすることでファイル管理やMIXもやりやすかったです。ぜひ参考にしてみてください!

まとめ

このように、サンプルパックでコラージュしてリミックスすると、自分の引き出し以上のアレンジが誕生して楽曲の別の表情が見えて楽しいですね。サンプルを試聴しまくって、自分の曲にマッチしそうなサンプルパックを探して作曲してみたり、リミックスを楽しんでみてはいかがでしょう!?

マイナスP(ワンダフル☆オポチュニティ!)

2009年からじーざす、マイナスの二人でサークル活動開始。

じーざすの持ち味である8bitサウンド+αにコミカルな歌詞を合わせた楽曲で、国内外から支持を集める。ゲームや様々なアーティストに楽曲を提供。ミックス、マスタリングはマイナスが担当。

代表曲:「リモコン」「しんでしまうとはなさけない!」「ぼうけんのしょがきえました!」「にっこり^^調査隊のテーマ」等