大人気アニメの音楽を手掛けるR・O・N氏に聞く、プロで活躍する「条件」とは?
『転生したらスライムだった件』や『憂国のモリアーティ』などの音楽を手掛けるクリエイター、R・O・N氏。
ピアノ、ギター、ベースといった楽器演奏から高度なオーケストラアレンジまでを一人で完結させる圧倒的なスキルで、多くのアーティストから厚い信頼を寄せられています。
プロの音楽家として長く活躍するためには何が必要なのか?今回はR・O・N氏に、制作に必要不可欠な機材や作曲家とアーティストの視点の違い、クリエイターとしてキャリアを築くための考え方をお伺いしました。
Q1. 自己紹介
自己紹介をお願いいたします。
R・O・Nと申します。作詞、作編曲家として活動しているほか、STEREO DIVE FOUNDATIONとしてアニメ主題歌を歌っています。
幼少期から作曲家になるまでを振り返りつつ、ご自身の音楽的なバックグラウンドについてお聞かせください。
音楽の原体験としてはリチャード・クレイダーマンです。4歳の頃、夕食時によく親が流していたことでピアノに興味を持ち、レッスンに行きたいとねだっていたようです。その後ゲーム音楽に興味を持ち、中学校でバンドや打ち込み音楽を邦洋問わず聴くようになり、高校生で本格的に作曲を始めました。大学生の頃自身で歌うようになりオーディションに参加し、在学中に楽曲提供の仕事を始めました。
Q2. 制作環境
普段使用しているDAW、ヘッドフォン/スピーカー、オーディオインターフェイスを教えてください。
- DAW:Steinberg Cubase15
- ヘッドホン:beyerdynamic DT1770PRO
- スピーカー:FOCAL Solo6 Be Red
- オーディオインターフェイス:Prism Sound Titan

複数の楽器を演奏されると伺いましたが、普段演奏する楽器を教えていただけますか?
ギター、ベース、鍵盤を演奏します。写真のギターは、仕事を本格的に始め、ライブ出演も決まったことで奮発して買ったヒストリックです。以来20年以上、メインギターとして使用しています。Bigsby(ビグズビー:ギターのブリッジ)でP90(ギターのピックアップ)のイケてる見た目は勿論、クリーンから歪みまでオールラウンドに使えるサウンドで非常に気に入っています。

ソフト音源・プラグインで「これがないと仕事にならない」というものを教えてください。
「Serum」「Superior Drummer」「Kontakt」やSpectrasonics社製品全般、Fabfilter社製品全般。これだけあれば歌ものから劇伴まで様々なジャンルのオーダーに対応できるかと思います。
Q3. 音楽活動について
作曲家としての音楽活動と、アーティストとしての音楽活動でそれぞれ大切にしていることを教えてください。
- 作曲家として
- クライアントのオーダーにしっかり沿いつつ、自分特有のエッセンスを足すようにしています。いい楽曲を作ることは大前提として、制作進行中やリリース後も満足度の高い制作を目指したいと考えています。
- 多岐にわたるジャンルの曲を制作しますが、どのような作品においても、聴く人にどこか「R・O・Nぽいな」というポイントを入れ込めると良いと思います。
- アーティストとして
- 上記に加え、曲に対する責任感をより強く持つようにしています。またスタッフ間での信頼感も大切にしています。
- 大きなプロジェクトにおいては様々な分野でそれぞれの担当がプロフェッショナルな仕事をしていると思います。全ての関係者がひとつの目標に向かっており、作家・アーティストもその一端として全体での成功を考えることが大切です。
いい曲を作るために実践していることや、意識していることを教えていただけますか?
- 作編曲
- 作曲においては、多くの場合耳に残りやすいメロディーを心掛けるようにしています。またプロジェクトの目的をしっかり見定めるために、依頼文や会話から意図や想いを読み解く力は大切だと思います。
- 編曲を同時に引き受けることがほとんどなので、メロディーを生かす音を構築するために、引き出しを常に沢山用意するようにしています。そのためには、様々なジャンルの楽曲を聴いて、音色含め再構築できるようインプットし、勉強を継続的にすることが大切です。
- 作詞
- 分かりやすいワードの組み合わせで意外な結果になる歌詞は常に探しています。
- また、歌ったときに気持ち良い音や譜割は重要だと思うので、歌いながら書くことは大切だと思います。高音ロングトーン等、シンガーの得意な母音をヒアリングして言葉を決めることもあります。
作曲家としてのキャリアを築く起点となった出来事について教えていただけますか?
初めての仕事はランティス(バンダイナムコミュージックライブ)さんで、声優の方への楽曲提供でした。この楽曲がきっかけで多くのアニメソングに携わらせていただくことになったと思います。
今まで制作した楽曲の中で、一番印象に残っている楽曲について教えてください。
2001年の「Sony Music Audition」で3次審査まで行った曲です。それをきっかけに音楽キャリアに広がりを得たと思います。いつかリメイクして発表したいのですが、なかなか機会がなくしまい込んでいます。
音楽人生で一番強く印象に残っていることは何ですか?
新しい経験や初めての挑戦は記憶に強く残っています。オーディション通過、楽曲提供、ソロデビュー、バンドデビュー、オリコン1位、コンペ通過、ライブ活動、海外公演。それぞれの節目で思い出があります。
Q4. 展望
プロの作曲家として活躍するためには、どのようなスキルや努力が必要ですか?
スキルとしては最低限の音に対するセンスがあれば大丈夫だと思います。理論を知らずともディスコード(不協和音)を直感的に気持ち悪いと思う音感や、既存曲の耳コピを無理なく行える技術があればできると思います。また人の気持ちを理解しようと努めたり、想像できる力や会話力があったりすると、色々なシチュエーションで役に立つでしょう。
とりわけ一番大事なことは音楽をずっと一番好きでいることです。ジャンルレスに全ての音楽を愛して吸収していくことは、重要なことだと実感しています。
生成AIや制作ツールの進化が進む中、これからの作曲家・アーティストに求められる力は何だと思いますか?
ビジネス的な観点でいくとブランド力の比重が高まっていくことになるのかもしれません。
とはいえ、ツールの進化というものはこれまで幾度も起こってきたイベントであり、どの時代においても乗りこなすことは必要不可欠でした。新しい創作の方法論を生み出すアーティストが出てくることと思います。
それと同時に「本物の演奏」の需要も増していくでしょう。ライブ演奏や生楽器収録など、今以上に必要とされるのではないでしょうか。実際に楽器が演奏でき、様々な楽器の譜面が書ける音楽家はより求められていくのかもしれません。
今後、作曲家・アーティストとして挑戦してみたいことや目標を教えてください。
自分が本当に作りたい曲を探すこと。それが目標であり挑戦なのではないかと考えています。
日々仕事に追われ「自分らしさ」を見失ってしまうのは、現代人あるあるだと思います。そんな中、自分と向き合う時間や仕事以外の時間を作って楽しむための音楽を作ってみるというのは素敵なことなのではないかと思っています。
あとは、新しい楽器の練習なんかもしてみたいですね。最近新しくブズーキ(ギリシャやアイルランドの音楽で使われる長い首と丸い胴体を持つ弦楽器)を買ったのですが、民族楽器収集沼のほとりが見えたようでした。(実はトランペット、サックス、アコーディオン、篠笛、ティンホイッスル、バンジョー、その他沢山の楽器が自宅にあったりするのです。)
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