SONICWIRE

「AIって実際どうなの?」音楽クリエイターと考えるAI活用の現在地 ──【GΞN526 氏】

2026年7月21日 17:00 by knt

最近、音楽制作の現場でも急速に注目を集めている「AI」技術。

ニュースやSNSで見かける機会は増えたものの、「AIとはなるべく距離を置きたい」という感情から、「実際のところ、自分の曲作りにどう活かせるの?」と疑問や興味を抱いている方も多いのではないでしょうか。

そんな中、クリエイターとAIとの関係性を見つめなおす実践的な場として、EnterTech University一般社団法人 日本シンセサイザープロフェッショナルアーツ(JSPA)共催による「AI作曲プラクティス講座」の第一弾が、2025年4月から約4カ月間にわたり開催されました。

本記事では、同講座の最終発表会にて見事「LAB賞」を受賞されたコンポーザー/プロデューサーのGΞN526氏にインタビューを実施!「AIクリエイター」ではなく、日頃ご自身の手で音楽を生み出している方が、同講座を通じて「AI」とどう向き合い、どのような印象を抱いたのか。受賞曲となった『NEON STATIC』の制作裏話も交えながら、実際の制作現場でのリアルな「AI」活用法や、講座を通じて得た実践的なノウハウについてたっぷりと語っていただきました。

Q1. AIを使ってみた率直な感想

SONICWIRE: 『NEON STATIC』を拝聴し、様々なジャンルがクロスオーバーした世界観に圧倒されました。早速ですが、今回の制作でAIを使ってみた率直なご感想を教えていただけますか?

GΞN526: そういう印象の楽曲が作りたかったので、そう言っていただけてとても嬉しいです。

作曲面で主に使用したのは「Suno」なのですが、制作当時ちょうどアップデートがあり、生成される曲のクオリティが飛躍的に高まりました。その時、商業的な制作をしている作曲家のほとんどが不要になる未来がすぐそこまで来ていると強く感じたのを覚えています。

ただ、どれだけプロンプトにこだわって生成したとしても、出来上がった曲をそのまま自分の作品として発表するにはまだ何かが足りないですし、細かなこだわりを修正しきれないというもどかしさも感じていました。そのため、いかにAIを活用しつつ、足りない部分を補い、自身のオリジナリティをどう入れ込むか、という点を深く考えていました。

Q2. 普段の制作ジャンルとワークフロー

SONICWIRE: GΞN526さんは普段どのようなジャンルをメインに制作されているのでしょうか?いつもの制作フローや、使用されているDAW・ソフト音源、音作りにおけるこだわりなどもあわせてお伺いできますか?

GΞN526: ジャンルに関してはこれといった固定の方向性はなく、基本的にはJ-POPと言われるような楽曲が主だと思っています。

DAWは『Logic Pro』『Ableton Live』を使い分けており、個人の楽曲制作では『Ableton Live』を使用することが多いです。

制作のきっかけは、ふと鼻歌が浮かんだ時や、良いループに出会った時など様々ですが、基本的にはまずトラックをある程度作り込んでからメロディをのせていくフローをとっています。

核となるリフやコードを考えた後、「Splice」などから持ってきたサンプルをDAW搭載のサンプラーに入れて配置していきます。生ドラムが必要な場合は『Superior Drummer 3』を使用します。シンセ音源には『Serum』を、ギターには『AmpliTube 5』を使用し、音作りにおいても「Splice」でプリセットを厳選しています。

マスタートラックに『SPL IRON』というプラグイン・エフェクトを挿すのが長年の定番になっていますが、現在はこれに代わる新しい選択肢を探しているところです。

Q3. 楽曲制作におけるAI活用の具体例と気づき

SONICWIRE: 今作では、多様なサウンドをHyperpopとして見事に昇華されている印象を受けました。今回の制作では、具体的にどの作業工程でAIを活用されましたか?印象に残っている部分なども合わせてお聞かせください。

GΞN526: まずイントロ部分で、イメージに合うものができるまで「Suno」で繰り返し生成を行いました。

そこから広げていく形でインストゥルメンタルの1コーラスを作成し、そのデータを再度「Suno」にアップロードしてメロディを生成してもらいました。何パターンか生成された中から、良いと思ったテイクを繋ぎ合わせ、そこから自分自身で細かく調整を加えていきました。

複数のテイクを編集中のDAW画面

出来上がったメロディに歌詞をつける際は「ChatGPT」でいくつか案を出してもらったのですが、提示したメロディの音数に対して、歌詞の符割りが合わないことが多く、その調整には非常に苦労した記憶があります。

今回は、最終的に仕上がった歌詞を『初音ミク NT』にも歌ってもらいました。

※今回は特別に、受賞楽曲の『初音ミク NT』歌唱バージョンもご制作いただきました!

歌詞の符割り作業中のDAW画面

Q4. クリエイター視点で感じる「AI活用の課題」

SONICWIRE: 実際にAIを使ってみて感じる、「AI活用の課題」について率直に教えてください。「ここが改善されれば」と感じる部分や、未来への期待感なども含めてお伺いしたいです。

GΞN526: 制作当時の感想になりますが、最大の課題は「微調整の難しさ」と「AIっぽさの払拭」です。

自分の作品として発表するためには、生成されたそのままの状態ではどうしても思い通りにならず、あくまでアイデアとしてAIを活用し、仕上げは自身で作り込むというプロセスになりました。

もしここがプロンプトなどで細部まで完全に制御できるようになれば、音楽制作の知識がある人も無い人も、より自由に自身の楽曲を発表できる未来が来るような気がします。

個人的には、メロディを入力すると歌詞を自動生成してくれるプラグインやサービスがあれば、非常に素晴らしいと感じています。

Q5. 制作を経て実感した「AI活用のメリット」と展望

SONICWIRE: ジャンルの垣根を越えたアプローチを行うGΞN526さんにとって、今回の制作を経て感じた「AI活用のメリット」をお聞かせください。これまでの悩みやご自身の活動に対して、どんな良い効果があったのか、具体例を交えて教えていただけますか?

GΞN526: やはりメロディ、アレンジ、歌詞に対して、短時間で多くのアイデア出しができるメリットは非常に大きいです。

自分一人で制作していた時は、どの工程においても「これで本当に良いのか」とひたすら悩み、完成までに途方もない時間をかけていました(もちろん、その苦労を乗り越えたからこそ楽曲に愛着がわく、という側面もあるのですが、、)。

AIにいくつか叩き台を出してもらい、こちらで選択・ブラッシュアップしていく方法を取り入れたことで、楽曲のクオリティと制作スピードの両方が向上しました。

楽曲制作以外でも、MVやジャケット作成などプロデュース的な面でも大きく役立っており、数年前は一人では絶対に不可能だったことが低コストで実現できるようになりました。AIという強力なパートナーを得たことで、今後はより音楽的な個性の追求や、音楽以外のクリエイティブとの融合にも力を入れていきたいと考えています。

GΞN526
Music Composer / Producer

神奈川県出身。
ポップパンクなどから影響を受け、ポップでキャッチーなHyperpopを作る。

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