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【あの弦楽器】異世界ファンタジー作品の劇伴でよく聴く「ハンマーダルシマー」を集中解説!

2024年9月27日 19:25 by knd

『メアリと魔女の花』『葬送のフリーレン』『ダンジョン飯』などのファンタジーアニメ作品の劇伴で用いられ、近年注目度が上昇している楽器「ハンマーダルシマー」

※ハンマーダルシマーの演奏風景

この楽器は、両手の指で1本ずつ持ったハンマー(バチ)で共鳴箱に張られた沢山の弦を叩いて演奏する「打弦楽器」です。

ハンマーダルシマーなどの打弦楽器は、中世ペルシャで演奏されていた楽器が発祥で、イランで今も演奏されている民族楽器「サントゥール(Santour)」が最も原型に近い楽器と言われています。

そしてハンガリーの「ツィンバロム(Cimbalom)」、ドイツの「ハックブレット(Hackbrett)」、中国の「揚琴(Yangqin)」、そして今回取り上げる北米の「ハンマーダルシマー(Hammered Dulcimer)」など様々に発展し、幅広いかたちで演奏されています。

日本では、ファンタジーアニメ作品の劇伴のほか、古くは映画『犬神家の一族』の主題歌「愛のバラード」の主旋律や、久保田早紀「異邦人」のイントロで用いられ、また近年ではSEKAI NO OWARI「RAIN」の随所に登場するなど、繊細な異国情緒を感じさせるサウンドで聴く人を魅了してきました。

この記事では、ハンマーダルシマーのサウンドを使ってみたい!と思った方のために、楽器の特徴や打ち込みに応用できる奏法を、実際にハンマーダルシマーを演奏している「奏者側」の視点も含めて解説します。

ガイドラインのひとつとして、ぜひ参考にしていただけますと幸いです。

※「ハンマーダルシマー」は打弦楽器全般を表す言葉としても用いられますが、以降「ハンマーダルシマー」については、特別な断りが無い限り、比較的日本で入手しやすい「北米のハンマーダルシマー」を前提とさせていただきます。


ハンマーダルシマーの音域

ハンマーダルシマーには楽器としての決まった規格が無く、楽器のサイズに応じて音域も様々です。

楽曲の1パートとして打ち込むだけならあまり気にする必要はありませんが、生演奏のデモとしてソフト音源を用いる場合など、楽曲の生演奏を含んだ展開を視野に入れている場合は、いざという時に演奏が不可能になる事態をあらかじめ避けておく必要があります。

この章では、生演奏を前提とした作曲のガイドとして、ハンマーダルシマーの音域の目安を紹介します。

ハンマーダルシマーの音域の目安

※ハンマーダルシマーの音域。おおむね中~高音域をカバーします

ハンマーダルシマーのクロマチック音域(半音がすべて揃っている音域)は、画像の緑色の部分、E3~E6の3オクターブが一般的です。アンサンブルでは、この音程があればメロディ楽器としての役割を十分に果たしてくれます。ただ、エントリーモデルや少し古いものでは、最大音域がE3~E6を満たしていても、最低音付近や最高音付近の音が揃っていないケースがあるので、その点は注意する必要があります。

また、楽器によっては黄色のD2~D#3の低音域まで音が出るものもあります。これらの音程はトレブリーな高音とは少し異なり、中低音にウッディな深みと金属的な倍音を持つ特徴的なサウンドです。ただ、生楽器の個体によっては、D2、G2以外の音が一部抜けていることが多い音域でもあるため、生演奏を含むプロジェクトで取り入れる際には注意が必要です。

加えて、オレンジ色のG1~C#2の超低音F6~A6の超高音の音が出せる楽器もあります。ただ、バンドやアンサンブルでは使いどころが限られるためか、日本ではこの音程を出せる楽器はあまり普及していません。

よって、確実に生楽器で再現できる作曲やアレンジを目指す際は、E3~E6の3オクターブが一つの指標となるといえます。もちろん、D2~D#3G1~C#2F6~A6を生演奏で再現できるならば、それはそれで儲けものです。生演奏用を含むプロジェクトを手掛ける場合は、ぜひ奏者の方と音域について相談しながら進めてみてください!

ハンマーダルシマーの構造

得意なスケール、苦手なスケール

ハンマーダルシマーは、楽器の構造上、得意なスケールと苦手なスケールがあります。

※ハンマーダルシマーの配列。右ブリッジで低音、左ブリッジで高音を演奏できます

基本的にブリッジ(駒)の左右の弦を叩いて音を出すのですが、音程は写真のような配列になっており、白いプラスチックが挟まっているブリッジをルート音とする、D、G、C、F、A(楽器によってはEやB♭もある)のメジャースケールが基本となっています。

そのため、かなりおおざっぱな分類をすると、得意なスケールはD、G、C、F、Aのメジャースケールやミクソリディアンスケール、およびE、A、D、Gのドリアンスケールで、そこから♯や♭が増えていくたびに苦手になっていく、という傾向があります。

生演奏の場合、♯や♭が多いスケールの演奏や、ハンマーダルシマーが得意な音階からの移調が必要な場合には、可能な限りレコーディングの前に共有しておくのが望ましいと思われます。ただ、これらのスケールについても速弾きではない限り十分に演奏できるため、どうか自由な発想で異世界感あふれる楽曲を作ってみてください!

和音について

ハンマーダルシマーは基本的に両手に1本ずつハンマーを持って演奏する楽器のため、3音以上の和音に対応することはどうしても難しくなってきます。ハンマーは指だけで持ち、手のひらでホールドしないため、マリンバのような複数本奏法も行いづらいです。

また、お琴やカンテレのように爪弾くことで3音以上を演奏することはできますが、ハンマーダルシマー特有のトレブリーさは多少薄れてしまい、思ったような音にならない可能性が高いです。

そのため、アレンジで3音以上の和音が出てきた場合は、アルペジオにするか思い切って構成音を削るかすると、奏者としては安心して演奏できるでしょう。

ハンマーダルシマーの奏法

ハンマーダルシマーは歴史が新しく、ハンマーで弦を一音ずつ叩く以外に、奏者によって様々な奏法が開拓されてきています。本項では、その中から一般的な奏法をいくつか紹介します。

木材面/フェルト面

これは奏法のほかに構造面にもかかわるトピックですが、ハンマーの打面(弦に触れる面)の素材を選ぶことで、音質をコントロールすることができます。

打面は主に「木材」か「フェルト貼り」の2種類があります。木製の面で弦を叩いた場合は硬質でトレブリーなサウンドになり、フェルトの面はピアノのようなウォームなサウンドになります。また、打面の表裏で両方の素材に対応しているハンマーもあります。

ただ、これらは必ずしも双方を活用する必要はなく、劇伴でよく聴くようなキラキラしたサウンドを求めるのであれば、全編「木材面」を前提として作譜しても全く問題ありません。また、面の表裏で両方対応しているハンマーを使っている奏者の中には、演奏中に木材とフェルト両方のサウンドを使い分ける方もいます。そのため、指でハンマーをひっくり返す時間を計算しつつ、木材やフェルト貼りを織り交ぜた作曲をしても面白いかもしれません。

ロール

ハンマーを弦の上で高速で弾ませて、連続して音を出す演奏法です。日本では「ロール」以外にも「トリル」や「トレモロ」など、色々な呼び方がされています。

生演奏では、前打音として短く使われたり、「伸ばす音」の代わりとして長く使われたりと様々なケースがあります。また、普通にハンマーで弦を叩いて演奏する時にも、自然なバウンドでロールが入る場合もあり、意図せずに出た美しい音という意味で、ギターのフレットノイズのような趣があります。

ただ、伸ばす音の代わりとしてロールを多用したい場合は、それに適したアーティキュレーションやサンプルを備えたソフト音源を選ぶ必要があります。

残響が長いダルシマーは必然的にサンプル一音一音の尺も長くなりがちなため、同音の連打で再現しようとすると、発音しているサンプルが重なって濁ったようなサウンドになるリスクがあるためです。

ミュート

他の弦楽器と同様、鳴っている弦を指で押さえることで音をストップさせることができます。楽曲の終わりでよく使われる奏法です。

また、弦を指で押さえることに関連して、お琴の「後押し」のように指で弦のテンションを操作して音程に揺らぎを持たせるベンド奏法を行う奏者もいますが、ハンマーダルシマーはベンドすると音が極端に減衰してしまうことからか、生演奏でも打ち込みでもあまり一般的ではありません。

ソフト音源の紹介

ダルシマー、ツィター、ウケリンなどの希少な楽器を収録するKONTAKTライブラリ!
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  • カテゴリ:ソフト音源

北米のハンマーダルシマーを収録した音源です。

木材面/フェルト面両方に対応し、モジュレーションホイールでロール奏法も再現可能。ハンマーダルシマーの打ち込みで求められることがだいたい可能な音源です。

更なる充実を遂げた民族音楽総合ソフトウェア音源
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  • カテゴリ:ソフト音源
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  • カテゴリ:ソフト音源

上記の2製品は、「ハックブレット」と呼ばれるドイツの打弦楽器を収録した音源です。

ハックブレットは北米のものとは配列が異なり、音質も微妙な差がありますが、こちらでもハンマーダルシマーらしいサウンドは十分に再現できます。ただし、ハンマーダルシマー固有の特殊な奏法には対応していない可能性がありますのでご注意ください。

まとめ

ここまでハンマーダルシマーについて集中的に解説してきましたが、いかがでしたでしょうか?

サウンドは知っているけど、作曲に使うとっかかりが掴めない!という方のガイドラインの一つになれたなら幸いです!

今回の解説をまとめると、次のようになります。

「ハンマーダルシマー」集中解説

  • ハンマーダルシマーとは:2本のハンマー(バチ)で弦を叩いて演奏する「打弦楽器」です
  • 生演奏を見越した音域の目安:全ての半音に対応させるならE3~E6!それ以外の音域は、演奏に使用する個体と要相談です
  • 生楽器で演奏できる楽譜:音域内であり、2本のハンマーで対応できるならだいたい演奏可能!ただし速弾きは得意なスケールと苦手なスケールがあります
  • ハンマーダルシマー固有の奏法:木材とフェルトの打面で音質をコントロール!ハンマーを弦の上で弾ませるロール奏法は使いどころがたくさん!

SONICWIREでは、ハンマーダルシマー以外にも様々なエスニック系ソフト音源をラインナップしています。

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