SONICWIRE

ボカロP“一二三”さんに聞く!人気楽曲「萌す心を」のボーカルトラックに使ったプラグイン・エフェクトと、ソフトウェア音源、その設定をご紹介。

2021年4月6日 16:00 by toy

音楽制作の中で、ボーカルやコーラスといった”声”に挿すエフェクトというのは非常に重要です。エフェクト1つで音量や音像、距離感などの聴こえ方が大きく変わってくるため、楽曲の世界を形作るのに欠かせない大きな構成要素となります。

SONICWIREでは、クリエイターの皆さんがボーカルエフェクトに対してどのようなアプローチを取っているかお話を伺い、まとめていく企画を実施中です!この企画では、「実際に楽曲に使われているボーカルトラックに挿しているプラグイン・エフェクト」をご紹介。
実際に楽曲を聴きながら、どのような変化をしているかをご確認いただけます。また各エフェクトのパラメータが公開されることも。具体例を確認しながらボーカルエフェクトについて学ぶことで、クリエイターのノウハウやテクニックを日々の制作にご活用いただけます。
 
さらにこの企画では、次のクリエイターさんをご紹介で繋いでいくバトン方式を採用。記事中で次に紹介いただくクリエイターさんを発表いたしますので、そちらにもご期待ください!

 


■ クリエイター紹介「一二三」さん
第6弾は、『猛独が襲う』『花が落ちたので、』『美しく、闇』などの楽曲を手掛ける一二三さんです。

 

 

今回 一二三さんには、「萌す心を(きざすこころを)」で使用しているプラグイン・エフェクトを教えていただきました。
スマホゲーム「#コンパス​ 戦闘摂理解析システム」へ書き下ろした、初音ミクのキュートで力強い歌声と一二三さんならではの「和ロック」が織り交ざった「萌す心を」。まずは一度お聴きください。

 

■ ボカロの“調声”について

『VOCALOID4 Editor for Cubase』にて調声作業

一二三さん:
ボーカルトラックの処理で一番時間をかけている部分です。
いわゆるボカロの“調声”です。
初音ミクと音街ウナでやることは若干変わりますが、手順はざっくりと以下の通り。
 

  • まずはクリアネス、ブレシネスで声質を作ります
    (たまにジェンダーファクターの数値を触ることもあります)
  • ピッチベンドセンシティビティの数値を3で固定します
  • ピッチベンドでビブラートを描く
  • ダイナミクスで音量差を整える
  • ボーカルトラックをバウンスする

Piapro Studio、初音ミクNT

一二三さん:
今回はクリプトンさんでの企画というのもあって、Piapro Studioと初音ミクNTを今回のタイミングで導入しました。折角なので、初めて触ってみた感想を以下に記述します。
 

スクロールやズームの操作設定をCubaseに準拠したものへ変更できる

  • 慣れた操作感で作業できるので便利

 

常に波形が表示されている点

  • ダイナミクスの数値やノートの長さ、NoteGainを調整する際にとても助かります

 

調声でよく使用するピッチの編集も、tabキーですぐ切り替えられる

  • 頻繁に使用するパラメータにすぐアクセスできるので便利
プラグインとして扱えるので便利で、Cubase内のインストゥルメントトラックとして起動することが多くなっていきそうです。
今後の楽曲制作でガンガン使っていこうと思います。皆さんお楽しみに。
■ ボーカル使用プラグイン

Waves『C1 Compressor』

一二三さん:
音量差やピークを抑える目的で使用。
前述の調声作業でダイナミクスを抑えるようにしているので、やや薄めにかけます。

Waves『C1 COMPRESSOR』製品ページ »

iZotope『Nectar 3』

一二三さん:
作業時間短縮の要です。AIがEQやコンプ、ディエッサーの処理を行ってくれます。
リバーブはセンドリターンでかけるため、Nectar付属のリバーブはバイパスしておきます。

iZotope『NECTAR 3 PLUS』製品ページ »

Waves『L3 UltraMaximizer』

一二三さん:
オケと混ぜても存在感が出るように軽ーくかけています。

Waves『L3 MULTIMAXIMIZER』製品ページ »

FabFilter『Pro-Q3』

一二三さん:
スネアやギターなどの楽器とぶつかっている音域を減退させるために使用しています。
このEQを挿しているトラック同士であれば、リアルタイムにマスキングを確認できるので非常に便利です。

FABFILTER『PRO-Q 3』製品ページ »

■ センド・エフェクト

Cubase付属プラグイン『REVerence』

一二三さん:
プレートリバーブとして、主にボーカルやギターに使用しています。
プリセットの「Plate At 2sec」から数値を微調整しながら使用しています。

Cubase付属プラグイン『REVelation』

一二三さん:
ルームリバーブ、ホールリバーブとして使用しています。
和楽器の笙、篠笛などを中心に使用しています。

Waves『H-Delay』

一二三さん:
ボーカル、ギターの音像に厚みを持たせるために使用。
ややドライめにかけることが多いです。

Waves『H-DELAY HYBRID DELAY』製品ページ »

■ 使用したソフトウェア音源

SONICA INSTRUMENTS『KOTO13』

一二三さん:
ピッキングのコントロールができたり豊富なアーティキュレーションが用意されているため、かなりリアルなサウンドに作り込むことができます。
「十七才」という曲以降、ずっと使用している箏音源です。

SONICA INSTRUMENTS『TSUGARU SHAMISEN』

一二三さん:
こちらも箏の音源と同じメーカーの三味線音源です。「萌す心を」では使用していませんが、様々な奏法を再現できるためとても気に入っています。
フレットノイズや、「はっ!」「あらよっ!」といった掛け声も収録されていて面白いです。

Native Instruments『SCARBEE RICKENBACKER BASS』

一二三さん:
リッケンバッカーのベースをピック演奏によってサンプリングした音源です。ロック向けです。
とても打ち込みやすくリアルな音が出るので気に入ってます。コスパ良し。

TOONTRACK『SUPERIOR DRUMMER 3』

一二三さん:
最近購入したドラム音源です。抜けの良いスネア、タムの音に惹かれました。
生演奏にかなり近い音色でロックとの相性の良さも感じました。
気に入っているプリセットは「Ayotte」で、バスドラだけ重心低めのものに変更して使用しています。
リズムパターンも多く用意されていて、MIDIデータとしてサクッと引用できるので便利です。
ボカロPを始めたばかりの頃はドラムの打ち込みが全然分からなかったので、この機能は初心者の方にもおススメだと思います。
まだ使い慣れていないので、これからどんどん音作りをしていくつもりです。

Toontrack『SUPERIOR DRUMMER 3』製品ページ »

― ミックス・マスタリングの際に心がけていることはありますか?

一二三さん:
深夜ではなくなるべく朝に作業するなど、疲れの溜まっていないフラットな状態で行うようにしています。
■ 次回クリエイター紹介:“Chinozo”さん
一二三さん、ありがとうございました!

 

次回の第7弾は、一二三さんのご紹介により、『グッバイ宣言』『カナリヤラメント』『空っぽ』などの楽曲を制作したChinozoさんのエフェクトチェインをご紹介いたします。お楽しみに!
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hihumi

一二三
Musician
 

大学卒業後、サラリーマンの傍ら動画サイトへオリジナル楽曲の投稿を開始する。
主に和楽器を用いたロックを制作している。
チョコレートが大好物。