SONICWIRE

「プリセットが非常に洗練されていて、こんな効き具合で鳴ってほしいという願いを叶えてくれます。」/林ゆうき氏による、OUTPUT製品インタビュー&デモソング公開。

2021年1月29日 12:00 by kta

数多くのテレビドラマ~映画、アニメといった作品の劇伴を手がけ多忙を極めるコンポーザー“林ゆうき”氏に、制作活動におけるOUTPUT製品の使いどころや、魅力についてお話を伺いました。

記事内では同氏制作のデモソングも視聴できます。プロの作曲家が手掛ける、製品にフィーチャーしたデモソングをお聴きいただける滅多にない機会ですので、是非視聴してみてください!


※本内容は、SONICWIRE公式Youtubeチャンネルで生配信した「林ゆうき氏&本国スタッフに訊く!OUTPUT製品の魅力。」の内容を基に、林ゆうき氏インタビュー部分を抜粋し、編集・加筆しています。

- はじめに、どのようなご活動や制作活動をおこなっているのか教えてください。

普段の活動はアニメやドラマ、ゲーム、映画などの劇伴音楽を制作しています。OUTPUTの音源は、同社から初めてリリースされた『REV』から使っています。逆再生できるところから、「あっ、こういうの待ってた!」っていう感じでしたね。今では、新しい製品が出るたびに購入しています。ヘビーユーザーです(笑)。

- OUTPUTの製品自体に対するイメージや、どういったシチュエーションで起用されるかを教えてください。

製品にもよりますが、エレクトロ/アンビエント系の音色のセンスが良いイメージがあります。色々なソフト音源を使ってきましたが、「パッと」選んだプリセットがそのままですぐ使える事はなかなか無いです。OUTPUTの製品に関してはプリセットが非常に洗練されていて、最近リリースされた『PORTAL』『THERMAL』などのプラグイン・エフェクトもプリセットを選んだ段階で「こんな効き具合で鳴ってほしい」という願いを叶えてくれます。そこから自分なりにカスタマイズしていくことが出来るので、基板から音作りしなくても良いところが気に入ってますね。

- 今回、OUTPUTの音源を使って2分程度の楽曲を制作いただきましたが、楽曲内でどのように音源をアサインしてプリセットを選択しているのかを教えてください。

▲ 林氏がOUTPUT 製品を使用して制作した楽曲を試聴。

曲自体はエレクトロ、アンビエント的なニュアンスで始まって、後半はエピック系になるように作成しています。OUTPUTのソフト音源の気に入っている点が、インターフェース上で「何がどのように出来るのか」が分かりやすく表示してくれていて、好みの音色に出来る点です。1つ目の『EXHALE』のトラック(プリセット:054 – WhiteWood)では、モチーフを最初に作って、STUDIO ONE上でオートメーションを描き、モジュレーションをかける感じで音作りをしています。マクロ・スライダーは単調な曲調を改善し、要所で変化を出すことが出来るのでかなり便利です。

- 普段はマクロ・スライダーで音色の調整をすることが多いのでしょうか?

そうなんですよ。何が言いたいかというと、僕、ソフト音源の難しい操作が嫌いなんですよ(笑)。細かい所をいじったりするのは楽しいんですけど、締め切りに追われているときのドキドキ感は半端ないです(笑) 。クリエイティブな事をしている時に細かい調整に時間を使いたくないと考えていて、音作りの段階でその作業があると、制作のスピード感が鈍っちゃうんですよね。そういう意味でいうとOUTPUTの音色は痒いところに手が届く頼もしさがありますね。

- なるほど。プリセットを選んでいくことである程度使えてしまうということですか?

はい、そうですね。2つ目の『EXHALE』のトラックは、”SLICES”より「合いの手」のような参考音源(プリセット:118 – Diegoaaaaal)を選んできて、それに対して広いリバーブとディレイをかけ、さらに音数の少ない場面でも変化を出す事を狙って、同社の『PORTAL』(プリセット:DUMBLER)を使用しています。

イントロに関しては、『REV』(プリセット:003 – Dusty Mirror)の逆再生を使い、少し時間が経ってから『ANALOG STRINGS』(プリセット:034 – Multicolor)が姿を表す形にしています。曲中のブレイクする部分では、消えた感じが欲しかったので”filter”を絞るようにオートメーションを描きました。また、『SUBSTANCE』を用いたベースラインが二つあって、1つ目はどっしりとした音色(プリセット:296 – G Funk)を選び、2つ目(プリセット:095 – Edge Racer Arps)は徐々に音が出てくるようにして、高揚感を演出しました。プリセット選択画面から頭の中で描いているものを直感的に選択できるので便利です。なお、『SIGNAL』は所謂トランスぽい音色で使っています。

Bセクションではリズム感を出したかったので、最初に『ANALOG STRINGS』の”pulse”を上げて、上がりきったところで「パッと」切る事により、A2セクションで壮大なエピック感を演出しました。

A3セクションでは高揚感を残すためにレガートをメインとし、その代わり『ANALOG STRINGS』をもう一つ重ねました。また、下の帯域に4つ打ちぽいものを入れ込みたかったので、『SUBSTANCE』のベースラインも4つ打ちで入れ込みました。 曲始めからストリングスとボーカルがメインとなっていたので、途中のA2からは『ANALOG BRASS & WINDS』を入れてオーケストラっぽいニュアンスを出しています。

- OUTPUT製品は音源名に捉われないサウンドを生み出せる印象がありますよね。

『ANALOG STRINGS』と『ANALOG BRASS & WINDS』に関しては、生楽器っぽくないコンセプトで制作されているのではないかと思いますね。

- 「このイメージの時はこのライブラリを使う」といったような選択基準はどうお考えですか?

仕事上、生のストリングスやブラスをレコーディングすることはできるので、逆にソフトシンセで生っぽい音を求めることは滅多にないですね。音色的に面白かったり、質感がエレクトロ的な方が欲しかったり、特に近未来感がある楽曲を制作する際は『ANALOG STRINGS』と『ANALOG BRASS & WINDS』を重宝してますね。

- 『THERMAL』『MOVEMENT』はどこで使われましたか?

『EXHALE』に付加させています。ボーカルのパルス系の素材に対して、徐々にビート感を出していくように使いました。

- 予めライブラリを触って予習をしていたりするのですか?

そうです。どのような作品を制作するかによるのですが、提示されたイメージに合わせて予習するような感じですかね。

- ちなみに、今聴かせていただいた楽曲の制作時間はどれくらいですか?

1時間ちょっとくらいです。

- 早いですね。最後になりますが、その制作の早さの秘訣はプリセットが役に立っているということで間違いないでしょうか?

そうですね。音色で迷わなくなるというのが強みですね。逆に曲自体は1時間くらいで出来たのですが、『PORTAL』や『THERMAL』等を用いて細かいエフェクト決める方が時間を要しましたね。

 
 
 

- OUTPUT製品をご愛用いただいていることが非常に伝わってきました。本当にありがとうございました!

OUTPUT製品はこちら

林 ゆうき

1980年生まれ / 京都府出身

作詞家/作曲家

高校生の時に男子新体操に出会い、踊るための音楽を選曲しているうち に伴奏音楽の世界に傾倒していく。演技者として大学に進学…音楽経験はなかったが、独自の音楽性を求め 大学在学中に独学で作曲活動を始める。 卒業後にHideo Kobayashi にトラックメイキングの基礎を学び、 本格的に伴奏音楽制作者に。2008 年末、ドラマ「トライアングル」の音楽制作に関わり、以後サウンドトラックを中心に活動する。

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