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空き時間5分で習得!お手軽パーカッション・ガイド(クラーベ編)

2024年11月22日 12:00 by fum

叩く、振る、擦るなどの動作で音を鳴らす楽器、パーカッション。「打楽器」とも呼ばれ、ドラム、シェイカー、コンガ、ウィンドチャイムなど、形や音色が多種多様で、世界中の様々な音楽に欠かせない存在です。

本シリーズ【お手軽パーカッション・ガイド】では、特定のパーカッションやリズム・パターンにスポットを当て、サクッと知識を深められるようなガイドを目指しています。

代表的なパターンやアンサンブル例と共に、パーカッションの世界をのぞいてみましょう!

claves( クラベス )

クラベスとは手のひらサイズの木の棒2つを使って鳴らす楽器で、日本の拍子木にも似た楽器です。

キューバ系ラテン音楽のリズムにおいて要となる重要な位置付けがされており、クラベスで演奏されるリズムパターンをクラーベと呼びます。

クラーベはキューバ系リズムをルーツとした多くのラテンミュージックに深く根付いており、クラベス自体が登場する事が無くても、ベース、ピアノ、ドラムなどが代わりを担うなど、リズム・アンサンブルには当たり前のようにクラーベ・フィーリングが内在しています。

5分で習得!クラーベの代表的なリズム4種

son clave 3-2( ソン・クラーベ・スリーツー )

スリーツーと呼ばれる、クラーベのベーシックなリズムパターンです。高音の方がクラベスです。ポクポクとリズムを刻んでいる Wood Block はメトロノームとしてお聞きください。クラベスの動きは、前半に3つのアクセント、後半に2つのアクセント、というのを繰り返します。

シーケンサー上で見ると下図の様な配置になります。

▲son clave 3-2

son clave 2-3( ソン・クラーベ・ツースリー )

そして2-3というパターン。安定感を感じる3-2と比べると、スピードを感じられるリズムです。

▲son clave 2-3

3-2と2-3、これら2種のクラーベ、16分音符にした下図で見ると判り易いですが、前半と後半が入れ替わっただけのものです。拍を打つ間隔自体は全く同じなのですが、最初にもってくるアクセントをどうするかで、グルーヴやスウィング感に違いを出す事ができます。

|●〇〇●〇〇●〇|〇〇●〇●〇〇〇|3-2

|〇〇●〇●〇〇〇|●〇〇●〇〇●〇|2-3

rumba clave 2-3( ルンバ・クラーベ・ツースリー )

こちらはルンバ・クラーベというパターンです。ソン・クラーベに少し訛りを加えたようなリズムです。3つのアクセントがくるセクションのうち、最後の音が半拍うしろに鳴っているのが特徴です。

▲rumba clave 2-3

rumba clave 3-2( ルンバ・クラーベ・スリーツー )

こちらがルンバ・クラーベの3-2。主に柔軟で即効的な要素を求められるルンバというジャンルでは、ルンバ・クラーベが用いられます。

▲rumba clave 3-2

以上4種がクラーベの代表的なリズムパターンになります。クラーベはラテン的なリズムの骨格を提供するもので、他の楽器やボーカルが自由に展開できる土台を作ります。前述の通り、クラーベは必ずしもクラベスで鳴らす必要はなく、他の楽器がクラベスの役割を担ったり、クラーベを軸としたリズム構成であっても、直接的に表現しない事が殆どです。クラーベのフィーリングをどのように取り入れるのかはミュージシャン次第で、現在も様々な音楽の中でクラーベのグルーヴを感じ取る事ができます。

付録:クラーベを感じてみよう

長きに渡りリズムの根幹を支え続けているクラーベが、アンサンブルの中でどのように作用しているのか、実際に聞いてみましょう。

El Cuarto de Tula

Buena Vista Social Clubの「El Cuarto de Tula」では、クラーベの推進力が生み出す楽曲のグルーヴを感じられ、クラベスの音もしっかりと確認できます。(奏者は映りません、、、)

Cubano Chant

ジャズドラマーArt Blakeyによる、クラーベのリズムを基盤にした「Cubano Chant」は、アフロキューバン音楽のリズム要素を取り入れた、ハードバップの代表的な楽曲のひとつです。

Come Down

HIP HOPとFUNKが融合したAnderson.Paakの「Come Down」でも、ドラムとベースのグルーヴにクラーベ的な裏のリズムが潜んでいるのを感じる事ができます。

Deja Vu

アフリカ系のリズムを中心にとらえたBeyonceの「Deja Vu」では、ベースとドラムが密接に絡み合う躍動感溢れるリズムが印象的です。リズム自体は明確なクラーベではないものの、各楽器の絡み合いの中で生まれるアクセントの随所に、クラーベを感じさせるグルーヴを含んでいます。


シンプルなリズムに秘められたクラーベの奥深さを感じていただけましたでしょうか。単なるリズムパターン以上の創造性を持つクラーベは、皆さんの楽曲制作にもきっと役立つはずです。

次回は、同じくキューバをルーツとする打楽器「コンガ編」をお届けします!