【プロのコード進行】世界的バンド「BLOOD STAIN CHILD」RYU氏のメタル制作講座【音楽理論編】
どうも、BLOOD STAIN CHILDのRYUです。
5/8(水)にBLOOD STAIN CHILDのニューアルバム2作、「METALIA」と「CYBERIA」がリリースされました。 サウンド的に違いを持たせた2つのアルバムで、それぞれ「METALIA」のほうはMETALサウンドを主軸として、EPIC系音源やシネマティックオーケストラ音源を多用し、まさにEPICで壮大な楽曲中心の内容、一方「CYBERIA」のほうは全く新しい方向性で、METAL&サイバー&ダンス&Hip Hop・・・もはやジャンル不明のUpliftingなサウンドになっています!
この2つのアルバム「METALIA」と「CYBERIA」を元にレコーディング&ミックスそしてアレンジ&使用音源に至るまでのサウンドメイク術を全3回にわたって徹底解説させていただきます。
もう包み隠さずボリュームMAXでお届けいたします(笑) 是非アルバムのほうも聴いていただけたら幸いです。以前も何度か記事を書かせていただいていますが、やっときたかという内容で私自身もわくわくしています。SONICWIREさんに感謝!
メタルの音作りについて解説した前回に続いて今回は、上記アルバムの楽曲で使用されているコード進行やスケールなどを中心に理論的なアレンジ面のお話をします。
第一回 ≪ 【プロの秘技】世界的バンド「BLOOD STAIN CHILD」RYU氏のメタル制作講座【音作り編】 |
第三回 準備中 ≫ |
「キャッチー」と「新鮮」を両立させるコード進行が大切
メタルやラウドロックではジャンル的にどうしても短調で、ナチュラルマイナースケールやハーモニックマイナースケール中心のフレージング、そしてダイアトニックコード内でのコードワークが多く、最初に聴いた感じではいい曲だと感じていても飽きてくるのが早い気がします。
それはコードや調、スケールの変化が少ないため、ひっかかる部分があまりなく、予定調和ではないハッとさせられる瞬間がないためでもあります。
やりすぎると逆にキャッチーさが失われるので、ジャンル的にバランスが重要になってきます。
今回の2つのアルバムではその部分も重要視して仕込んでいます。私は専門学校で音楽理論の講師をしていて、こういうお話をしてるとなんだか授業みたいだなって思えてきますね(笑)
モーダルインターチェンジとMPE
まずはMETALIA収録の2曲目”OMNIVERSE”のギターソロパート(※2:47~)のコード進行。
ジャズ等ではよく使われているパターンなのですが、メタルやラウドロックでは聴きなじみのない進行なので、ハッっとする新鮮さがあると思います。
ここは「ⅣM7 ⇒ Ⅰ/Ⅲ ⇒ Ⅲ♭M7 ⇒ Ⅱm7」となっていてモーダルインターチェンジをしています。
「Ⅲ♭M7」が同主調のドリアンスケールのⅢとなっていて、ソロではこの「Ⅲ♭M7」上でのみBリディアンスケールを使用しています。
次に外せない注目のポイントとしてCYBERIA収録の1曲目”Unreal World”のイントロとサビ部分で使用しているコード、そして新しい機能MPE(MIDI Polyphonic Expression)の紹介です。
まずこのパートのコード進行もメタルでは聴きなじみのない感じで、前衛的な響きを感じていただけると思います。
「AM7/E ⇒ GM7/F ⇒ GM7sus2 ⇒ A/D」となっていてかなり高度な進行なのですが、このコード進行にMPEという機能を使用しさらに特徴的な音作りをすることでインテリジェンスな近未来的な響きを作り出しています。
MPEというのはMIDI Polyphonic ExpressionというMIDI2.0にも通じる拡張規格で、同一トラック上で同時に鳴っているMIDIノートを自在に動かすことができます。
わかりやすく言うとコードを構成している各音を好きな音階へピッチベンドできるというものです。 通常、入力されたコードをベンドすると全ての構成音が一緒にベンドされますが、MPEを使用することで各音を別々に好きなところへワープさせることが可能です。
この機能を使用し、シームレスにつながるようにコードチェンジ、ボイシングさせることによって全く新しい響きを得られることができました。非常に有用で面白い機能だと思います。
(Pitch Innovations社の「Fruid Chords」というMPE機能を活用するプラグインでピッチベンドしています。)
遠隔調への転調など
また遠隔調への転調をスムーズに行う例として、CYBERIA収録の10曲目”STONE∴CIRCLE”がいい例と言えます。この曲はイントロからAパートへの転調でハッとした新鮮さを感じられると思います。
イントロの進行は「Ⅵm ⇒ Ⅲm ⇒ Ⅴ ⇒ Ⅱ」、コードネームだと「Dm ⇒ Am ⇒ C ⇒ G」となっており、最後の「G」は同主短調からの借用となります。そしてそのイントロ終わりの「G」からAパートの頭「A♭」へ進みます。
この「A♭」はE♭キーのⅣなのですが、「G」から「A♭」へ半音の流れを作ることでスムーズな転調かつ大胆な転調を行っています。
他にもCYBERIA収録の8曲目”AiAiAi”のギターソロパートでは前半でドリアンスケール、後半でリディアンスケールを使用しバリエーションかつ浮遊感を持たせたり、METALIA収録の9曲目”DIGITAL FOREST”のコード進行では同主短調からの借用和音を多用したりと様々なコードプログレッションを聴くことができます。
まとめ
以上のように、今までのメタルやラウドロックではなかったようなコードワークを上手く取り入れることによって、ハッとする瞬間が生まれ、聴き飽きにくい、かつキャッチーで聴きやすいアレンジができたと思っています。
ジャンルは違いますがKing GnuさんやOfficial髭男dismさんはその辺りのアレンジがとても上手だと思います。
私が曲を作る時はパッションで作る部分と理論的に組み立て計算して作る部分という2つを両立させて作ります。持論ではありますが、この2つを両立させることによってキャッチーかつより聴くたびに新しい発見があるような曲に仕上がるのです。
少し余談にはありますが、今回私自身映像制作もスタートさせ、4作のMusic Videoも制作しました。撮影、VFX、編集、監督と全ての映像制作を一人で行いました。(生成AIは使っていません笑)
私はずっと音楽と映像は密接な関係であり、合わせて一つのアートにしたいと考えていました。アルバム2枚分の楽曲制作と合わせて途方もない制作時間でしたが、私自身で両方作ることによって、私が思い描く音楽と映像がより強く一つになったと思います。
是非見ていただきたいです。ありがとうございました!
作詞家/作曲家/編曲家/ギタリスト
メタル×EDMのパイオニアとして世界中に知られているバンドBLOOD STAIN CHILDのコンポーザー、ギタリスト。声優小岩井ことりとのユニットDUAL ALTER WORLDでも活動。
VFX映像制作もスタートさせ、音楽×映像のトータルクリエイターとしての活動をスタート。
その他、アニメ関連,ゲーム音楽の制作や専門学校講師(サウンドクリエーターコース)、レコーディング&ミキシングエンジニアと多岐にわたり活動している。
ツアー情報
BLOOD STAIN CHILD Release Tour 2024 “W”
【METALIA phase】
- 6/8(SAT) 大阪心斎橋soma
- 6/16(SUN) 東京吉祥寺ROCK JOINT GB
【CYBERIA phase】
- 7/6(SAT) 大阪心斎橋soma
- /27(SAT) 東京新宿Wildside Tokyo
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