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【入門編】“歌ってみた”の録音~MIX依頼までの流れ

2024年4月5日 20:00 by toy

前回の「【入門編】“歌ってみた”に必要な機材を知ろう!」から期間が空いてしまいましたが、続いて録音編をやっていきます!

スマートフォンでも録音はできますが、今回はパソコンでDAWを使って録音を始めるまでの流れ~録音したデータを書き出して、MIXの依頼をするところまでを簡単にご紹介します。

⚠ スマホ録音はNGというMIX師さんもいらっしゃいます。本格的な活動を始めるために、前回の記事で必要な機材を振り返りましょう。
⚠ 筆者のメインDAWが「Studio One」のため、記事中のスクリーンショットは主に「Studio One」です。

目次

  • 録音してみよう

    • 録音する曲を決めて、オフボーカルを手に入れる
    • オフボーカルをDAWに取り込む
    • 録音してみよう
    • 録音NG集
  • 録音が終わったら

    • データを書き出す
    • MIX師さんに送るデータをまとめて依頼しよう
    • 依頼時のNG集
  • まとめ

録音してみよう

1 録音する曲を決めて、オフボーカルを手に入れる

歌が好きな人は大体そうかなと思うのですが、初めて聴く曲の中で「うわ、かっけぇ・・・歌いてぇ・・・」とか「これ俺/私に合うんじゃないか」と感じる出会いがありますよね。筆者は大体そうで、気になる曲を見つけたらとりあえず録音してみるという流れが当たり前になりつつあります。

ただ、全ての楽曲が“歌ってみた”として公開することはできないので、“歌ってみた”の投稿が許可されている楽曲で楽しみましょう!

弊社が運営するCGM型コンテンツ投稿サイト「piapro」では、ボカロPによる投稿楽曲の中にオフボーカル(カラオケ音源)が公開されているものがあります。まずはこちらから歌ってみたとして投稿したい曲を探してオフボーカルをダウンロードしましょう!

中には動画の概要欄にGoogle DriveやDropboxなどのURLを記載している方もいるので、二次利用して問題ない楽曲を探しましょう。


2 オフボーカルをDAWに取り込む

ダウンロードしたオフボーカルをDAWに取り込みます。DAWを立ち上げて、プロジェクトを作成します。プロジェクトを作成する時に「サンプルレート」「解像度」を設定しますが、基本は「サンプルレート:48khz」「解像度:24bit」にしている人が多い印象です。

プロジェクトを作成した後は、オフボーカルのデータをDAWにドラッグアンドドロップをするだけですが、ここで1つ大事になってくるのは、プロジェクトと楽曲のBPM(テンポ)を合わせることです。

BPMの設定は、DAWによってはプロジェクトを作成する時に行える場合もありますので、BPMの項目を見つけたら忘れずに設定しましょう。「曲名 BPM」で検索すると出てきたり、オフボーカルのファイル名や配布されている圧縮ファイル内に情報がある場合が多いので、まずはDAWのプロジェクトのBPMを合わせます。

BPMを合わせることで、メトロノームを使って正しいリズムで歌えるようになるのはもちろん、“頭出し”を行う時や、MIX師さんに依頼する時にも大事になってくるので、必ずやった方が良い作業です!BPMを設定したら、オフボーカルを取り込みましょう。


3 録音してみよう

オフボーカルを取り込んだら、マイクが正しく接続されているとを確認して録音してみましょう。DAWによって手順が異なるので、主要なDAWの録音の始め方を記載します!無償版/試用版のDAWをつかっていても多くの場合は手順が共通なので、参考にしてください。

Cubase


  • 「入出力チャンネル」の空白部分を右クリック or 「プロジェクト」→「トラックを追加」から、オーディオ入出力の設定が間違っていないことを確認して「Audio トラック」をモノラルで作成します。
  • トラックのレコーディングボタン[●]をクリックして録音するトラックを指定します。画面下部の録音ボタンをクリックして、録音を開始します。

Studio One


  • 画面左側の空白部分を右クリック or 「トラック」→「オーディオトラックを追加(モノ)」からトラックを作成します。
  • オーディオの入出力の設定の確認は、ウィンドウ上部の「Studio One」→「オプション」→「オーディオ設定」から行えます。

  • トラック名の左側にあるレコーディングボタン[●]をクリックして録音するトラックを指定します。画面下部の録音ボタンをクリックして、録音を開始します。

Logic Pro X


  • プロジェクト作成時にトラックの追加画面が表示されます。「オーディオ」を選択して、オーディオ入出力の設定が間違っていないことを確認して、トラックを作成します。
  • トラック名下のレコーディングボタン[R]が点滅している状態が録音の待機状態です。画面上部の録音ボタンをクリックして、録音を開始します。

準備が出来たら録音ボタンを押して、いざ録音を始めましょう!録音を始める時に音が入らないなどのアクシデントが発生した場合は、入力チャンネルの設定がしっかり出来ていない可能性があります。設定手順については「DAWの名前 入出力チャンネル 設定」などで調べてみてください!

一発録りにこだわらなければ、一息で歌えない部分も区切りながら録音ができます。例えば画像のように複数のトラックを使ってテイクを残す方法や1つのトラックでリテイク/保存したりと、DAWによっていくらでも方法はありますが、依頼するMIX師さんによっては渡すプロジェクトのトラック数で値段が変わることもあるので注意しましょう。(必ず募集要項を読みましょう)

余談ですが、筆者は友人にMIX依頼をしたときに、トラック多すぎ!と悲鳴を上げられたこともあります。どのテイクも捨てがたく、今回も気が付いたらトラックが多くなっていました。


4 録音NG集

録音に正解はありませんが、NGは多くあります。もし気心の知れた友人に頼むとしても、マナーは守った方が良いですよね。何がNGなのか例を挙げていくつかご紹介します!

そもそも歌詞を間違えている

録音したデータを聴いてみると、たまーに歌詞を間違って歌っている場合があります。カラオケでも歌詞を見ているのに何故か二番の歌詞を歌っている現象ありますよね?(ないですか?)

歌詞間違えを指摘してくれるMIX師さんならリテイクの連絡が来るはずですが、全員が全員その楽曲を知っているとは限りません。自分で歌いたかった楽曲な訳ですし、間違えがないかを必ず確認して、どんなに良いテイクでも録り直しましょう。

物音が入ってしまう

▲左がノイズで、右は咳払いでした。

マイクによってはかなり繊細な音やノイズも拾ってしまうので、録音中にリズムを取るために足踏みしていたり、近所の音(鳥とかカエルの鳴き声にも注意)は極力入らない状態を確認してから録音しましょう。

宅録の場合、よくよく聴いてみたら家族の会話などが紛れ込んでいたりするので、注意です!特に「ガタッ」といった物音が入ってしまった場合は、すぐに録音をやり直しましょう。

ピッチ/リズムが極端にズレている

いずれも補正できる点ではありますが、極端にズレている点を補正してしまうと声が変わって聴こえたり、意図せず声が歪んだりしてしまいます。

上手く歌えたのに・・・と落胆しないように、メトロノームを聴いてリズムを身体に馴染ませて、ピッチは歌い込んでおくことで改善できますので、頑張りましょう。

音量が極端に違う

大きい声の時はマイクを離して歌う、といった歌い方は基本NG。マイクとの距離は一定を保ちましょう!

大きい声で録れた方が良いですが、例えば画像のように、ハイトーンの部分が大きすぎると上のトラックのように波形がとんがってしまうのは良くないです。逆に小さすぎると下のトラックのような細々とした音になるので、一定の距離を保って一定の音量で録音しましょう。

逆にやっておいた方がいいこともあります!

やっぱりハモリは歌った方が良い◎

ハモリをプラグインで生成できてしまう昨今では、ハモリは歌わずにMIX師にハモリの追加を頼ってしまいがちです。しかし、ハモリも自分で歌った方がより良い歌ってみた作品を作り上げる事ができます。音感を鍛えてレッツハモリ録音!

録音が終わったら

1 データを書き出す

さぁ、遂に録音が終わりましたね。今回は「カルチャ / ツミキ feat.初音ミク」を歌ってみました。あとはMIXして、動画のエンコードをして、サムネイル/動画作成の依(ry などとやりたいことは沢山ありますが、今回はMIX師に依頼するところまで。

まずは録音したデータを書き出す必要があります。書き出しの方法もDAWによって異なるので、こちらも主要DAWに絞ってまとめます!

まずは全てのトラックを“頭出し”することを覚えておきましょう。頭出しというのは、録音・再生の開始位置(タイミング)を合わせる作業のことです。簡単に言うと「音のない部分も含めて、ボーカルの書き出しをする」ことです!録音した人がしなくてはならないことですので、忘れずにやりましょう。

  • 頭出ししていない状態で書き出したボーカルトラック。音のある場所だけが書き出されているので、DAWに取り込んだあと曲に合わせて位置を合わせる必要がある。

  • 頭出しをしたボーカルトラック。曲の頭から無音の部分も含めて書き出されているので、DAWに取り込むだけで位置合わせが完了している。

Cubase


  • 頭出し:タイムバーのグレー部分が指定範囲になります。オフボーカルの長さに合わせて範囲指定をします。
  • ウィンドウ左上の「ファイル」→「書き出し」→「オーディオミックスダウン」を選択します。
  • 左側の「Output Channels」から、書き出すトラックを1つ選択します。ファイル名/保存先/ファイルの形式を入力・選択して「オーディオを書き出し」をクリックします。

Studio One

  • 頭出し:タイムバーの青い部分が指定範囲になります。オフボーカルの長さに合わせて範囲指定をします。
  • ウィンドウ左上の「ソング」→「ステムをエクスポート」をクリックします。
  • 「ソース」で書き出したいトラックを選択、「ロケーション」で保存する場所を選択、「フォーマット」は[Waveファイル]を選択し、解像度とサンプルレートを確認、「エクスポート範囲」を”ループ間”に設定して、【OK】をクリックします。

Logic Pro X


  • 頭出し:タイムバーの黄色くなっている部分が指定範囲になります。オフボーカルの長さに合わせて範囲指定をします。
  • ウィンドウ左上の「ファイル」→「書き出す」→「〇個のトラックをオーディオファイルとして…」を選択します。
  • 【重要】「範囲:サイクル領域のみを書き出す」「保存フォーマット:WAVE」を指定して、「書き出す」をクリックします。

2 MIX師さんに送るデータをまとめて依頼しよう

データの書き出しが終わったら、MIX師さんに送るデータをまとめましょう。

  • ファイル名を分かりやすく

  • 「Vox_001~020」など、A・Bメロ、サビなどの曲構成に沿って番号を付けるのが筆者流ですが、「Vocal_A1~Sabi1」などでも伝わればOKだと思います!とにかく分かりやすい名前を付けるよう工夫しましょう

  • オフボーカルはダウンロードしたデータと、書き出したデータを送る

  • ダウンロードしたままのオフボーカルに加えて、録音時にDAWに取り込んで使ったオフボーカルも書き出して一緒に送りましょう。録音時にどれくらいオフボーカルの音量を下げていたのか/音質が変わっているのかなどの基準になります。また、マスタリング前後のオフボーカルを配布している場合は全部送るようにしましょう。

  • フォルダ名を工夫しよう

  • 例えばXのコテハンだったり、自分の「名前 + 曲名 + BPM」などにすると親切です。(toy_カルチャ_BPM172 など)MIX師さんがダウンロードしたデータを管理しやすいように、BPMも書いておくと調べる手間が省けてベストです!

  • お願いしたい内容をテキストファイルなどにまとめる

  • 歌詞データもあると分かりやすいので、歌詞をまとめたテキストと併せて、サンプルレートと解像度などファイルの情報や要望を書き込んだテキストを用意しましょう。

    要望は、時間指定 or 歌詞指定をしながら、ここで「リバーブを深く」とか「ディレイをかけて」など、具体的にまとめます。ハモリを録音していない場合は「○○○○の部分でハモリの生成をお願いしたいです」など、MIX師さんが作業をしやすい状態にしましょう!

  • 参考音源を用意する

  • 例えば「○○さんの歌ってみたを聴いて、これを歌いたくなった」という場合は、多少なりともその人から影響を受けている部分があるはずです!

    MIX師さんには「この方の歌ってみたを参考にしています。」と送ると、『こういうハモリが好みなんだろ!!』と生成してくれたり、エフェクトも同じようにかけてくれ(る場合があり)ます!

    自分が思い描いている完成例を共有しないと、何度もやり取りを重ねて実作業以外のところで手間をかけさせてしまうことに繋がるので、参考音源の共有はマストです。今回録音するにあたり、聴きまくったのは「はへー/HAHE」さんのカルチャでした。(歌うますぎますね)ぜひ聴いてみてください。


3 依頼時のNG集

前段で依頼時のデータのまとめ方に触れてきましたが、こうした方が良いという説明だったので、NG集みたいになってしまいました。他にも沢山NGがあるので、少しだけまとめてみました。

  • ボーカルトラックをMP3で送る

  • 書き出しの時に「MP3の方が容量軽いし、こっちの方がデータ重くならないから親切だよな!」と思い、MP3で書き出していませんか・・・?

    WAVファイル(主にCDとかに収録されるようなデータ)で書き出すのが基本です。ファイルサイズの圧縮と共に音質も低下しているので、MP3で送るのは絶対にNGですよ。

  • MIX師さんの募集要項を読まない

  • 一番のNG行為です!!!必ず読みましょう。多くの方は依頼料と参考音源だけをチェックしていそうですが、それより大事なのが要項です。

    例えばMIX師さん個人のNGが書かれていたり(冒頭で触れたスマホ録音もそう)、納期も明記してくれていたり、依頼するにあたって送ってほしいデータや、録音時の設定なども書いてあったりするので、要項は一度と言わず何度でも読み返しておきましょう!

まとめ

結構気を付けている“つもり”でも、意外と穴になってやっていないことがあるかもしれません。本記事を録音時~依頼時までのチェックリストとしてご活用ください。

自分のためにも、そして何よりMIXをお願いする人のためにも、今回触れたことはやっておいた方が良いこととして覚えておきましょう!

MIX師さんからMIX後のデータが返ってきたら、遂に歌ってみたが投稿できますね!次回は、○○編でお会いしましょう。

この記事のために録音した「カルチャ」はいつかフル尺で公開します。