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ボカロP「神様うさぎ」が表現する『生きる』ということ【Reason for Creation】

2023年9月22日 17:00 by hmd

【Reason for Creation】

Reason for Creationは、次世代音楽クリエイターがツクルことを始めた理由について「創作活動」と「日常」の二面から掘り下げていくインタビュー企画です。

 
第一弾となる今回は、音楽配信流通サービス「ROUTER.FM」を利用中の「神様うさぎ」氏へ、
「生きる」をテーマにしたアルバム「生きてる意味がわからない」のリリースを記念してお話を伺いました。
 

「音楽をツクル」ことを始めたきっかけ

– まずは自己紹介をお願いします。

神様うさぎ:ボカロP「神様うさぎ」です。2017年頃からボーカロイドを用いた楽曲を投稿しています。

 

– 音楽を始めたときのことを教えてください。

神様うさぎ:父親がよく聴いていたオフコースが好きで、聴いているうちに自分でも作りたいと思い、その影響で音楽を作り始めました。音楽ジャンル的にはハードロックやメタルを自分のバックボーンとして持っています。X JAPANやBUMP OF CHICKENもよく聴いていました。

 

– 最初に始めた楽器は何ですか?

神様うさぎ:一番最初に触った楽器はハーモニカです。その当時好きだった『ゆず』の影響です。その後、ギターも弾くようになってバンド活動を始めました。高校では軽音楽部に入ったのですが、比較的規模が小さかったので部員数の都合でギターのほかにもドラムやピアノなどいろんな楽器を経験することができて、その頃の経験が今の作曲活動に活きていると思います。

 

– 打ち込みも高校の頃からするように?

神様うさぎ:そうですね。当時組んでいたバンドでオリジナル曲を作るとき、デモテープが必要になったので、父親のノートパソコンを借りてフリーの作曲ソフトを使って打ち込むところから始めました。

 

– よく使うソフト音源やプラグインはありますか?

神様うさぎ:ドラム音源の「SUPERIOR DRUMMER 3」はかなり使っています。配信アルバム表題曲の「生きてる意味がわからない」や「人から嫌われるのが死ぬほどこわいだけなんだ」に使用しました。シンセはいつも「AVENGER」を使っていて、ギターのアンプシミュレーターは「BIAS FX」を使っています。ベースは、曲を作りながら途中で大胆に変えることがあるので打ち込みにしていて「TRILIAN」をよく使っています。

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「日常」と「創作活動」の繋がり

▲神様うさぎ氏の制作デスク。写真中央手前にはMIDIキーボード Native Instruments KOMPLETE KONTROL A61が広がる。美しいフォルムに創作意欲が掻き立てられるだけでなく、鍵盤のタッチも気持ちよく長時間弾いていても疲れないそう。モニター下の青く四角いハコは、硬派な見た目が特徴的なオーディオインターフェイス RME Fireface UCXだ。導入以降はミックスダウンの精度や録音するギターの音質が向上したとのこと。

 

– 楽曲をつくる時のスタイルのようなものはありますか?

神様うさぎ:先に歌詞を完成させてから、詞に合う曲を制作していくことが多いです。
最近は、普段の生活で「思いついた言葉」や「気にとめた言葉」をスマホにメモしていて、2.3ヵ月貯めていくと段々フレーズにまとまりが出てくるので、それをまとめて曲にしています。

 

– インプットやインスピレーションはどこから得ますか?

神様うさぎ:主にツイッター(現X)や読書を通して発見する事が多いです。ツイッターは時代を反映するメディアだと思いますし、人間の生の心が現れています。普段はタイムラインを見ることが大半ですが、話題のトピックのリプライ欄を見ることもあります。

 

– 音楽を作っている時以外は何をしていますか?

神様うさぎ:小説をよく読みます。最も好きな作家は、人間の抱く劣等感の表現が秀逸な武者小路実篤という方ですが、今最も推しの作家は佐川恭一さんです。いわゆる弱者男性達の苦しみや悲哀、切なさの表現がとても上手な方で、最近の楽曲はこの方の小説のイメージから着想を得て制作したものが多いです。

▲神様うさぎ氏が所有する書籍(武者小路実篤「友情・愛と死」/佐川恭一「舞踏会」)。どちらも愛や生命の本質を探究した素晴らしい小説で、創作活動の源泉になっていると言う。

 

– 神様うさぎさんの楽曲は、人の弱さをストレートに表現した歌詞が特徴的だと感じます。作詞を行う上で意識しているポイントはありますか。

神様うさぎ:「頑張れ!元気を出そう!」のような明るい歌詞も良いと思いますが、本当に苦しんでいる人に対してはあまり意味がないと思っています。様々な苦しみや悲しみの有り様を楽曲に落とし込むことによって、どこかの誰かが自分の抱えた悲しみと照らし合わせて、少しでも救いになることができれば、それが理想だと思っています。

 

– 普段はどんな音楽を聴きますか。

神様うさぎ:ジャンルはばらばらですが、昭和歌謡をよく聴きます。特に好きなのは村下孝蔵さんです。昭和歌謡は歌詞とメロディーに重点が置かれているジャンルだと思っていて、それは今の音楽でも重要なものだと思います。以前(制作楽曲が)吉田拓郎さんに似ているとコメントをいただいたことがあるのですが、自分が目指す音楽がリスナーさんに伝わった気がしてとても嬉しかったです。ボカロPのなかに昭和歌謡がルーツの方はあまりいらっしゃらないかと思うので、そこは私の独自性ではないかと思っています。

 

– 昭和歌謡以外では何を聴きますか?

神様うさぎ:スピッツをよく聴きます。中でも好きな曲は「スカーレット」という曲です。曲全体を通して恋人同士の幸せな時間が流れているはずなのに、聴けば聴くほど悲しい気持ちになってくる、不思議な気持ちになるところが好きで、深みのある曲作りに憧れを持っています。

 

配信楽曲の制作で気にかけたこととは

– アルバム「生きてる意味がわからない」制作の経緯を教えてください。

神様うさぎ:これまでは10曲くらい作ったらアルバムを出すといった流れがあったので、テーマや曲調にばらつきがありましたが、直近リリースした楽曲を並べてみて、「生きる」や「人の弱さ」を扱うテーマの楽曲が多く、これらをテーマにアルバムを制作しました。

 

– 神様うさぎさんにとっての「生きる」とは何ですか?

神様うさぎ:私たちが「生きるとは何か?」を考えるのは、何かが死んだ時だと思います。私が就職して2,3年ぐらいした頃、肺気胸という病気になって、またしばらくして潰瘍性大腸炎という病気を患いました。どちらも命にかかわる病気ではありませんが、その時に「人って死ぬときは死ぬんだ」と感じて。

だから、生きるとは何か?というのは、死ぬとは何か?を考えた時に浮き彫りになってくるものだと思っていて。アルバム4曲目「いつかはみんな死ぬ」のように、死をテーマにした曲を作ることによって、生きている事を認識できるのではないかなと感じています。それぞれの曲に込められた「生きる」のメッセージを感じていただけるとありがたいです。

 

– 最後に、今後の展望や目標を教えてください。

神様うさぎ:ボーカロイド楽曲は今後も作っていきながら、今後はもっと音楽的に冒険した曲作りをやっていきたいです。ドラムがあってピアノがあって…という楽器の構成だったり、歌詞を作る流れだったりに囚われないアプローチの作曲に挑戦したいです。イラストや動画についても、これまでは楽曲ごとに世界観に合う絵師さんへ依頼していましたが、今後どこかで、視覚的にも「神様うさぎ」らしさが伝わるような作品に仕上げていきたいです。

 

神様うさぎ
ボカロP

2017年頃から、ボーカロイドを用いた楽曲を投稿している音楽クリエイター(ボカロP)。
主に初音ミクを使用し、人の弱さや劣等感を表現する歌詞に定評がある。代表曲は「人から嫌われるのが死ぬほど怖いだけなんだ」「生きている意味が分からない」など。
2022年秋のボカコレではTOP100ランキング入りを果たした。

Official Site

Youtube

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リリース情報

アルバム「生きてる意味がわからない」(作詞・作曲:神様うさぎ)

1.人から嫌われるのが死ぬほどこわいだけなんだ

2.笑ってよ、名前のない命

3.オレンジメランコリー

4.いつかはみんな死ぬ

5.急逝

6.弱い弱い弱い弱い

7.世界でいちばんあなたが嫌い

8.生きてる意味がわからない

9.アプレラモート2023ver

10.彼氏がいるなら早めに言ってよ

11.クジラが死んだらしい

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シングル「彼氏がいるなら早めに言ってよ」(作詞・作曲:神様うさぎ)

1.彼氏がいるなら早めに言ってよ

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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