【あるある】異世界ファンタジー作品の劇伴でよく聴く「酒場」BGMにありがちなこと3選
はじめに
冒険者たちの出会いと憩いの場、そして時にはケンカの舞台として「異世界ファンタジー」に欠かせない「酒場」。
「酒場」のシーンに楽しげな雰囲気を加えるBGMは、危険なモンスターがはびこる「フィールド」と冒険者たちのホームである「町」のコントラストを際立たせ、ストーリーにメリハリを与えます。
というわけで今回は、今までの記事と同じく「中世ヨーロッパ」的な世界観を前提として、「酒場」のシーンで流れるBGMに焦点を当ててみます!
マニュアル的な「作り方」というより、「ありがち」なポイントをピックアップして広げていくことで、皆さんの創作にヒントを与えるかたちにしたいと思います。
こちらの記事にもある通り、異世界ファンタジーの楽曲は自由度が高いものです。ぜひ、皆さんの頭にある冒険譚に合わせて、存分に「異世界」の情景を奏でてみてください!
6/8拍子、使われがち
「酒場」BGMは、なぜか6/8拍子の軽快なリズムで進行されがちです。
これは、アイルランドを中心に広がる「パブセッション」で演奏される楽曲と深い関係があると思われます。
パブセッションとは、アイルランドを中心に広がる、酒場に楽器を持ち寄って音楽を演奏するイベントのこと。
気の合う仲間同士で演奏する場合がほとんどで、朴訥とした雰囲気は、まさに「冒険者たちの交流」を彷彿とさせます。
※パブセッションの一例
パブセッションでは、アイルランドの伝統音楽が演奏されることが多く、その中でも「ダンスチューン」と呼ばれる踊りやすい楽曲が定番になっています。
ダンスチューンは「リズム」で区分されることが多く、パブセッションでは様々なリズムの楽曲が演奏されていますが、それらの中でも、Jig(ジグ)と呼ばれる6/8拍子のリズムの楽曲や、Slide(スライド)と呼ばれる12/8拍子の楽曲は「酒場」BGMのリファレンスとして定番になっていると感じます。
跳ねるようなリズムと、明るく素朴な雰囲気、そして何より「現実の酒場」というシチュエーション。パブセッションが持つこれらの要素が、中世ヨーロッパ的な「酒場」のパブリックイメージと合致し、劇伴に落とし込まれていると言えるでしょう。
また、リズムだけでなく、使われている楽器も「酒場」BGMの構成に影響しがちです。どんな楽器が使われているのか、次のセクションで見ていきましょう!
バイオリンと笛、登場しがち
この記事をここまで読んだ方なら、おそらく「中世ヨーロッパの酒場」をイメージした楽曲も聴いたことがあるのではないかと思いますが、それらの楽曲に「バイオリン」と「笛」が登場しがちなのは共感していただけると思います。
それもそのはず、「バイオリン」と「笛」、より正確な呼び方をすると「フィドル(Fiddle)」と「ティン・ホイッスル(Tin Whistle)」は、パブセッションの主旋律を担う「花形」として用いられることが多い楽器なのです。
パブセッションにはこれらの他に、文化を象徴するコンサーティーナや同じ蛇腹楽器のアコーディオン、伴奏からメロディまで幅広くこなすギターやブズーキ、主旋律の1オクターブ下を担当することが多いバンジョー、打楽器のバウロンなどのユニークな楽器が持ち込まれることが多く、これらは「酒場」BGMにも登場しがちです。もしパートに迷ったら、ぜひ今挙げた楽器を試してみてください!
どの楽器を試すかは、実際のセッションの動画を参考にしてみるのも良いですが、音源に触ってみてイメージを固めるのも良いでしょう。
ここで、実際にパブセッションで使われている楽器や、世界観に応じたプラスアルファとなる楽器を網羅するソフト音源をいくつか紹介します。
特に、紹介する製品全てに収録されている「フィドル(Fiddle)」は要注目。バイオリンと楽器は同じですが、いわゆる「オーケストラ音源」の奏法(アーティキュレーション)では伝統音楽ならではの雰囲気を出すのが難しいため、ぜひ手に入れておきたいサウンドといえます。
打ち込みのみで本格的な雰囲気にこだわるなら、ぜひこれらの音源の導入をご検討ください!
「普段」と「宴」のギャップが激しくなりがち
最後の「あるある」は、劇伴ならではの「場面」に応じた曲調の違いについてです。
まず、目立った出来事が無い時の「酒場」BGMは、今まで紹介した通り、アコースティック中心の素朴な雰囲気になりがちです。
伝統的なパブセッションには「メロディが主役、伴奏は控えめ」という暗黙の了解があり、伴奏やパーカッションは1人で行うことが多く、残りの参加者は同じメロディを担うことが多いです。
そのため、パブセッションを参考にすると自ずと音数が少なくなり、会話や交流が見せ場の「酒場」らしい劇伴になりがちだと言えるでしょう。
ただ、酒場には宴がつきもの。ひとたび酒場に人が集まり「乾杯」の号令がかかると、流れるBGMの雰囲気がガラッと変わり、総じて派手になりがちです。
パブセッション的な原型を保ちながらも、テンポアップしたり、ストリングスやパーカッションなどを詰め込んだりなど、まさに「飲めや歌えの大騒ぎ」。冒険者たちが無礼講を繰り広げる止め絵が続き、最後に酒場の外観がズームアウトするタイミングでBGMがちょうどよく終わるまでが「あるある」です。
この変化は、作品の演出を考えるとごく一般的なことですが、「酒場」という舞台の奥深さを感じさせられます。
おまけ:リファレンスの探し方
おまけとして、酒場のBGMを作るにあたり、私なりのリファレンスの探し方を紹介します。
もちろん、すでにある酒場風のBGMや実際の劇伴を聴きこむことが最短経路だと思いますが、よりオリジナリティのあるサウンドを追求する場合の指針になれば幸いです。
■パブセッションの動画を探す
最初のセクションで紹介したようなパブセッションの動画は、現場の雰囲気を見るという意味で良いリファレンスだと思います。演奏風景も見えるので、楽器選びの参考にもなります。
ただ、パブセッションは飲酒しながら演奏している場合がほとんどなので、演奏自体はざっくばらんで、奏者の手癖が強く反映されがちです。そのため、自身の作風や、元となる作品の雰囲気とバランスを考えながらインプットするのがよいと思います。
■楽曲単位で調べる
パブセッションの動画には、ダンスチューンの曲名が書かれている場合があります。曲名は「○○’s Jig」など、リズム名が含まれるものが多く、非常に分かりやすいです。
有名な曲はだいたい他の曲と一緒に演奏されていて、その動画や楽曲もたくさんあります。そのため、有名曲に出会えさえすれば、曲から曲をたどって芋づる式にインプットできます。
また、楽曲をインプットしていくうちに、ダンスチューンと他の要素をクロスオーバーした楽曲に出会うことがよくあります。これらの楽曲は確かに格好良いですが、酒場という場面を考えると「格好良すぎる」点には注意が必要です。時にはライブ感あふれる演奏動画を見返しつつ、ちょうどいい塩梅を探してみてください!
今回は、「中世ヨーロッパ」的な世界観を前提として、異世界ファンタジー作品でよく聴く「酒場」BGMにありがちなことを紹介してきました。
ぜひ皆さんが感じた「酒場BGMあるある」を仲間たちと話し合ったり、頭の中にある「酒場」や「宴」を曲にしたりしてみてください!
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この記事が、新たなサウンドを追求する旅の道しるべになれば幸いです。
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