

どれを使う?「目的別」で選ぶ定番ソフトシンセ 6選!
音楽制作の現場では「どのシンセを選ぶべきか?」という悩みがつきものです。膨大な選択肢の中で、自分のスタイルや目的にぴったりの一本を見つけるのは、なかなか難しいもの。とくに近年は、音質や機能が一段と進化しており、どれも魅力的で優秀なものばかりです。
そこで今回は、「目的別」で見る定番のソフトシンセをピックアップ。「今どきの音を作りたい」「直感的に音作りしたい」など、あなたの制作スタイルに応じた選び方を紹介します。
迷ったときの指針として、ぜひ参考にしてみてください!
トレンドをおさえた「旬」なサウンドを鳴らしたい
SERUM 2
音楽制作においてモダンなサウンドを象徴する存在となったXFER RECORDSの『SERUM 2』。初代『SERUM』の時代から、そのクリアで立体的なウェーブテーブル・サウンドは、DubstepやFutureBass、EDMといったエレクトロニックミュージックの進化とともに、世界中のプロデューサーに愛されてきました。
特徴的なのは、視覚的に操作できるウェーブテーブル編集機能と、直感的で美しいUI。これにより、初心者でも即戦力のサウンドを作れる一方、上級者は細部まで作り込んだ音作りが可能です。とくに、Skrillex、Flume、Martin Garrix、Virtual Riotなど、ジャンルを横断して活躍するトップアーティストたちが使用していることでも知られており、『SERUM』のサウンドが、これまでのクラブミュージックやポップスに多大な影響を与えてきたことは間違いありません。
「ウェーブテーブル特化型」であった第一世代のSERUMからアップデートがなされた現バージョンの『SERUM 2』では、サウンドの生成手段や魅力的なエフェクト系統が大幅に追加されており、Color BassやBotanicaといった制作難度の高いジャンルにも対応し易くなりました。
音楽的カルチャーにおいても、『SERUM』は単なるツールではなく、「現代のサウンドの礎」として確固たる地位を築いており、トラックに“ いま ”の質感を与えるなら、手にして損のない一本と言えるでしょう!
AVENGER 2
『AVENGER 2』の特徴
・ あらゆる音源方式を統合する音楽制作の総合兵器
・ シンセ単体でドラムトラックの作成からシーケンスの構築までを完結
・ 最前線のトレンドを生み出す多くのアーティストが愛用
ジャンルを問わず全方位型の制作スタイルを実現したいなら、VENGEANCE SOUNDの『AVENGER 2』も見逃せない存在です。
最大の特徴は、あらゆる音源方式と機能がオールインワンで統合されていること。ウェーブテーブル、アナログモデリング、FM合成、サンプルプレイヤー、ドラムマシン、アルペジエーター、マクロシーケンサー、それらが1つの統合UIでシームレスに連携し、DAWに依存せずに完結した音作りが可能です。
『SERUM 2』がサウンドの質感に磨きをかけたシンセだとすれば、『AVENGER 2』はまさに「音作りから構成までを一貫して担える制作ツール」と言えるでしょう。特にEDM、Hardstyle、Trance、映画音楽など、ダイナミックで重層的なアレンジを必要とするプロデューサーにとっては、この一台で「理想のサウンドスケープ」が描けます。
実際に、Armin van Buuren、KSHMR、Vini Vici、Heatbeatなど、フェスや大型イベントで活躍するプロたちがその可能性を引き出しています。
またVENGEANCE SOUNDから定期的にリリースされているAVENGER専用拡張音源は、特定のジャンルをフィーチャーして制作された最先端のプリセットがたっぷりと収録されており、音楽制作の総合兵器とも言える存在の『AVENGER 2』に大いに貢献してくれます。
圧巻の音色数で選びたい
OMNISPHERE 2
アイデアが浮かばない時、音そのものがインスピレーションになる——そんな経験をしたことはありませんか?Spectrasonicsの『OMNISPHERE 2』は、まさに「ひらめきの源泉」として世界中のプロデューサーや作曲家に愛される、唯一無二のシンセサイザーです。
最大の魅力は、14,000を超える膨大なプリセット音色と、それらの音に宿る物語性です。
アナログ、デジタル、ハイブリッド、フィールドレコーディングなど、多彩なサウンドソースが内包されており、単なる音作りのツールではなく、映画音楽やアンビエント、現代ポップスの空気感そのものを生み出す装置として活躍しています。
プリセットブラウザでは、残したいパラメーターをロックしながら目的の音を探せるサウンドマッチ機能を搭載し、アイデアを選んでいくような作曲も可能。また、“ 同じ音を選んでしまいがち ”という問題を回避する、プリセットリストのランダム表示など、膨大な音色への導線にも一工夫が凝らされております。
このように音の細部を構築するための機能も備えながら、世界観を一瞬で描くシンセとしても活躍。とくにHans Zimmer、Deadmau5、Tycho、BTなど、ジャンルを越えて「音の深さ」や「空間」を重視するアーティストたちも、このシンセを武器にしています。
また、ハードウェアインテグレーション(ハードウェア・シンセとの連携)にも対応しており、ハイブリッドな制作スタイルにも柔軟に対応できるのも大きな魅力です。
「音に導かれたい」場面で、ぜひ手に取ってほしいシンセです。
SYNTHMASTER 3
ひとつの音色が新たな曲を生む。そんな体験を何度も与えてくれるのが、KV331 Audioの『SYNTHMASTER 3』です。「多機能」と「柔軟性」を兼ね備えつつも、圧倒的なコストパフォーマンスと豊富なプリセットバンクで、じわじわとユーザー数を伸ばしている隠れた実力派シンセです。
『SYNTHMASTER 3』の最大の強みは、10種以上の異なる合成方式をブレンド可能なエンジン構造と、膨大なユーザー&公式プリセット(数万以上)による“ 音色巡り ”の楽しさ。
注目すべきは、アナログ回路が波形を生成する方法を意図的に再現する事が可能で、ヴィンテージアナログシンセに近い“ 温かみ ”や“ 人間味 ”のあるサウンドを作り出すことができます。
デジタルシンセでありながら、アナログの持つ不完全さ=魅力までもコントロールできるのは、『SYNTHMASTER 3』ならではの設計自由度の高さと言えるでしょう。
『SERUM 2』や『AVENGER 2』のような派手なUIこそありませんが、自由度と音色の奥行きにおいては、引けを取らないどころか、より実験的・個性的な音作りが可能です。
また、プリセットバンクにはJean-Michel JarreやBTといったシンセ愛好家によるエッセンスも色濃く反映されており、ElectronicaやCinematic系サウンドを求めるクリエイターにとっては、まさに「音の宝箱」のような存在です。
直感的な音色探索に加え、細かなモジュレーション設計やウェーブテーブル操作も可能で、中・上級者にも満足度の高い設計となっており、「音色の多様性」が創作の引き金となる場面でおすすめのシンセです!
シンプルな操作感で芯のあるサウンドを作りたい
SPIRE
「音作りに迷わず、即戦力で鳴らしたい」——そんな現場志向のクリエイターに支持され続けているのが、REVEAL SOUND『SPIRE』です。登場から時間が経ってもなお、多くのEDM系プロデューサーが使い続けている理由は明確で、シンプルな操作性と抜群の抜け感。そして音の太さにいたっては、それだけでトラック全体を支配できるほどの存在感を放ちます。
『SPIRE』のサウンドは、硬質でパンチのあるリードや、空間を押し広げるようなパッド、輪郭のはっきりしたベースに特に強く、Big Room、Trance、Future House、Hardstyleなど、クラブ向けジャンルでその威力を発揮します。
最前線シンセサイザーのような拡張的な構成や視覚的編集機能はありませんが、だからこそ、音を迷いなく作り、即座にミックスに馴染ませられるという「楽曲制作における実用性」が際立ちます。実際に、Hardwell、W&W、KSHMR、Ummet Ozcanといったフェス系アーティストのプリセットバンクも多数存在し、彼らのサウンドの中核を担っていることからも、その信頼性がうかがえます。
MASSIVE X
音作りにおいて“ 型 ”を超えた創造性を求めるなら、Native Instrumentsの『MASSIVE X』が真価を発揮します。
初代『MASSIVE』がEDMブームをけん引した名機であるのに対し、『MASSIVE X』はより実験的で構造的なアプローチに対応した、次世代の音響ツールとして生まれ変わりました。
最大の特徴は、自由にルーティング可能なモジュレーションシステムと、個性的な波形変調アルゴリズムの組み合わせ。これにより、深く掘り下げた唯一無二のサウンド設計が可能になります。
複雑なモジュレーション、進化したオシレーター、ランダム制御など、まるでモジュラーシンセとソフトの利便性が融合したような設計です。
音の方向性としては、Industrial、Glitch、Techno、実験音楽、Cinematicも得意で、Jon Hopkins、Amon Tobin、Roly Porterといった“ 音で世界を描く ”アーティストたちのスタイルにも通じる柔軟性を持っています。
「設計図から音を構築したい」と感じる場面で、挑戦していただきたいシンセです。
以上、3つの「目的別」視点から定番ソフトシンセをご紹介しました。どのシンセを選んでも目的のサウンドに近づけることは可能ですが、「どのようにその音にたどり着きたいか」がシンセ選びのポイントになるかと思います。
プロセスや好みは人それぞれ異なりますので、各シンセサイザーの特徴を把握し、目的にフィットする1本を見つけてみてください!
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