【初心者必見】シンセサイザーで「音作り」をするための基礎知識
DTMではソフトウェアシンセをはじめとする様々な音源製品で、かっこいいプリセット音、追加音源を使えるのも一つの魅力です。好きな音色を選んで使用するだけでも十分有用ですが、シンセサイズの構造を知っておくと「ここは歪みのある音が欲しいな」とか「このプリセットをもうちょっとタイトにしたいな」など、浮かんだイメージを具現化できるようになります。
元来シンセサイザーは「楽器の模倣」が根底にある電子楽器ですので、思想的には無制限に音を作り出すことが可能です。当記事では「音作り」に挑戦してみようと思っている方々の ”はじめの一歩” となる基礎知識をまとめていますので、気負いせず、気軽に読んでいただけましたら幸いです。
シンセサイザーの基本的な構成
多くのシンセサイザーでは、以下3つの工程を経てサウンドが発音される構成になっています。
「音程」→「音色」→「音量」
考え方としては単純明快で、「音程」で音の高さを決め、「音色」で音の特徴を決め「音量」で音の大きさを決めるイメージです。基本的には英語表記されていますので英語名で覚えておきましょう。
音程を作るパラメーター VCO(Voltage Controlled Oscillator)
音色を作るパラメーター VCF(Voltage Controlled Filter)と VCO
音量を作るパラメーター VCA(Voltage Controlled Amplifier)
とはいえアナログシンセを再現するバーチャル・アナログ・シンセサイザーなどではVC表記されておりますので、まとめて覚えておくと良いでしょう!
上記図はシンセサイザーが発音する際の信号の流れをシンプルに表現したものですが、音のキャラクターを形成する為には、各セクションでの調整 =「音作り」が肝になってきます。
オシレーター、フィルター、アンプでどのような「音作り」がなされるのか、詳細に迫ってみましょう!
オシレーター
オシレーターは「音作り」の素となる波形(Waveform)を生む発振器です。
目的のサウンドに合った波形を選ぶ事がゴールへの近道となるでしょう。
波形には様々な種類がありますが、基本とされている6つの波形を覚えておくと便利です。
ノコギリ波(SAW TOOTH)
倍音を均一に含んだ最も基本的な波形で、様々な音づくりに適しています。
三角波(TRIANGLE)
倍音が少なく、リコーダーのような柔らかいサウンドの音作りに向いています。
サイン波(SINE)
倍音の無いシンプルな波形で、丸みがあり無機質な印象が特徴です。
矩形波(SQUARE)
奇数倍音が多く含まれており、ファミコンサウンドのような音作りに向いています。
パルス波(PULSE)
矩形波に変化を与えたもので、シンセベースやきらびやかな音作りに向いています。
ノイズ(NOISE)
様々な周波数が含まれており音程がありません。他の波形と合成させることで、幅広い音作りに貢献し、スネアドラムなどの打楽器を作る際にも重宝します。
倍音とは?
倍音とは「基音の整数倍となる周波数」です。
音程を決定づける周波数を「基音」と呼び、この「基音」の2倍、3倍、4倍~の周波数となる高い成分を倍音と呼びます。
同じ音程でも楽器それぞれ音の聞こえ方が異なるのはこの倍音構成によるもので、倍音がどのように含まれているのかで、音色の特徴が決まってきます。
これら特徴を把握し、明るく派手な音を作りたいときは倍音が多く含まれる波形、優しく丸い音を作りたい時は倍音の少ない波形を選ぶようにすると良いでしょう。
音の高さの調整も可能
多くのシンセでオシレーターの近くにある以下のパラメーターでは、音の高さを調整する事が可能です。代表的なものは以下の通りです。
オクターブ(Octave)
「-2」「-1」「0」「+1」「+2」といった設定を切り替える事で、オクターブ単位で音程を上げ下げするパラメーターです。
また、(Range)という表記のタイプでは、「32」「16」「8」「4」「2」の切り替えになっており、「32」が一番低いオクターブ、「2」が一番高いオクターブとなっています。
チューン(Tune)
半音階単位で音程を調節するパラメーターで、Coarse TuneやSemitoneと表記されています。
ファインチューン(Fine Tune)
半音の100分の1単位(Cent)で音程を調整するパラメーターで、2つのオシレーターで僅かな差を付ける事でコーラス効果をつけたり、独特のうねりを感じさせるデチューンといったテクニックにも使用されます。
フィルター
オシレーターでの音作りが固まったら、フィルターを弄ってみましょう。
基本的な考え方としては「不要な帯域をカットする」役割を担うのがフィルターです。
ローパス・フィルター(LOW PASS FILTER / LPF)
ロー(低い帯域)をパスする(通す)フィルターで、指定した周波数より高い周波数帯域をカットします。(ハイカット・フィルターと同義)
ハイ・パス・フィルター(HIGH PASS FILTER / HPF)
ローパスとは反対に指定した周波数より低い帯域をカットし、高い帯域をパスするフィルターです。(ローカット・フィルターと同義)
バンド・パス・フィルター(BAND PASS FILTER / BPF)
指定の周波数帯域だけを通し、上下の帯域をカットするフィルターです。ローパスとハイパスを組み合わせた形で、低音、高音の無い、こもったサウンドになります。
ノッチ・フィルター(NOTCH FILTER)
バンドパスとは反対に、指定の周波数帯域をカットし、他の周波数をパスするフィルターです。耳につく周波数帯域や、他の楽器と音域がぶつかる部分をカットするのに有効です。
音色の輪郭を形成しよう
フィルターの傍にあるであろうパラメーター、レゾナンス(Resonance)では、フィルターでカットした帯域の倍音を強調します。シンセ特有のクセの強いサウンド作りには欠かす事が出来ないもので、(Peak)などと記載されている場合もあります。
アンプ
アンプは、最終的に出力される音量を決める役割を持ちます。
ただしアンプ自体は音量を決めるだけなので、一定の音量を鳴らし続けるのみです。
このアンプに対し、「音をゆっくりと小さくしていってね」「音を一瞬だけ鳴らしてね」などの命令を下す(音量の動きをコントロールする)事で、目的のサウンドに近づけていきます。
次の章では、これらアンプに指令を下す、新たなパラメーターが登場します。
音色に変化を加えよう
オシレーターとフィルターを組み合わせる事で基本となるサウンドを作る事が出来ましたが、このままアンプに出力しても、単調な「ピー」といった音が鳴るだけです。
そこで、この音声信号にモジュレーション(Modulation)と呼ばれる「変調」を加えてあげる事で、音色が大きく変化し、様々なサウンド表現が出来るようになります。変調やモジュレーションと言われると難しく聴こえますが、平たく言えばパラメーターに動きをつけることを指します。
本章では「音作り」の要となるモジュレーションに迫ります!
モジュレーション
モジュレーションとは、シンセサイザーの様々なパラメーターに変調情報を送る事が出来るもので、前章で紹介したオシレーター、フィルター、アンプに対し使用していきます。
スタンダードなモジュレーターとして、低周波発振器「LFO」とノートオン(打鍵)を元に時間変化を生成する「EG」があり、いずれもシンセサイザーの「音作り」には欠かす事が出来ない部位になります。
LFO
LFO(Low Frequency Oscillator)とは、音にならないくらい低い周波数を発振するパラメーターです。周波数は波のように振動しており、これを他のパラメーターにかける事で、音色に以下のような変調を加える事が可能です。
・オシレーターにLFOをかけると、音程が揺れ、ビブラートの効果
・フィルターにLFOをかけると、音色が揺れ、ワウの効果
・アンプにLFOをかけると、音量が揺れ、トレモロの効果
LFOの波の強さ、周期などを変える事で、ゆったりとしたビブラートから、けたたましいサイレン音まで、様々な特徴を加える事が可能になります。
EG
EG(Envelope Generator)とは、音がどの様に鳴り始め、どの様に消えていくのかを指定するもので、エンベロープ、またはADSRと呼ばれています。ADSRの由来については、エンベロープを形成する4つのパラメーター、Atack、Decay、Sustain、Releaseの頭文字からきており、音の立ち上がり → 減衰 → 保持 → 余韻 の時間変化を加えることが可能です。
Atack (アタック)
音の立ち上がりを設定する部位になります。演奏開始、つまりノートオン(打鍵)からどれくらいの時間をかけて最大音量になるのかを調整します。ギター、ピアノ、打楽器など、クイックなレスポンスが欲しいサウンドはアタックタイムを短めに、パッドやストリングスなど、ゆっくりと立上がるサウンドはアタックタイムを長めに設定すると良いでしょう。
Decay (ディケイ)
Atackで到達した最大音量から、次のSustainに移行するまでの時間を設定する部位になります。ピアノのように最大音量到達点から時間をかけて減衰していくサウンドはディケイタイムを長めに、木琴など減衰が短いサウンドはディケイタイムを短く設定すると良いでしょう。
Sustain(サスティン)
Atackで到達した最大音量からDecayを経て、最終的に到達する音量を設定する部位になります。ピアノのように、鍵盤を押し続けても次第に音が消えていく減衰音はサスティンレベルを0%に、オルガンのように鍵盤を押し続ける限り音が鳴り続ける持続音はサスティンレベルを100%などに設定すると良いでしょう。
Release(リリース)
ノートオフ(離鍵)から音が完全に消えるまでの時間を設定する部位になります。弦楽器などの余韻を残して減衰していくサウンドはリリースタイムを長めに、ピアノのような余韻が少なく歯切れの良いサウンドはリリースタイムを短めに設定すると良いでしょう。
シンセサイザーの「音が鳴って消える」までの一連の過程は、これらエンベロープをVCAにかける( = 音量に時間的な変調をかける)事で表現されており、シンセサウンド特有のうねるようなサウンドは、VCFにエンベロープをかける( = 音色に時間的な変調をかける)事で、表現されています。勿論VCOにエンベロープをかける( = 音程に時間的な変調をかける)事も可能で、FXなどのサウンド表現に効果的でしょう。
音の変化を聞いてみよう
それではモジュレーションがサウンドにどのような変化を与えているのか実際に聞いてみましょう。
エンベロープのリリースを調整する
こちらのデモは、エンベロープのリリースタイムを徐々に0にしていったものです。リリースタイムが0に近づくにつれ、タイトなサウンドに変化していくのがわかります。
フィルターのカットオフを調整する
更にローパスフィルターを加えてみたものです。カットオフを2KHzから500Hz付近まで動かし、再び2KHzまで戻していったものです。500Hz帯域に近づくにつれ高音域がカットされこもったサウンドになり、高音域を通すと明瞭なサウンドに変化していくのがわかります。
アンプにLFOをかける
更にLFOをアンプにかけたものです。LFOの波に合わせて音量が上下し、揺れたようなサウンドに変化しているのがわかります。段階的にLFOの周期を変えており、音量の揺れ方が次第に早くなっています。
上記デモでは、パラメーターがもたらす音の変化をイメージし易いよう連続的な動きをお聞きいただきました。
同じ音色であっても、設定ひとつで細かいニュアンスを出せることがおわかりいただけたかと思います。
無制限に表現が可能なシンセサイザーを前に、サウンドを完成させるのはあなたです。
試行錯誤を繰り返しながら、自身が求めるサウンドを目指してみてください!
初心者におすすめのシンセサイザー
以上、シンセサイザーでの「音作り」に役立つ基礎知識をご紹介しました。
各パラメーターの働きを覚えておくことで、きっと自分の求めるサウンドが作れるようになるでしょう!
今回紹介した基礎知識を実践するのに最適なシンセサイザーはこちら!
SERUM
一切の無駄が無い優れたインターフェイスを持つ『SERUM』は、発音時に各パラメーター、グラフィックがリアルタイムに動くため、エンベロープやLFOがどのタイミングでどのように作用しているのかが非常に判り易い設計となっております。頭に描いた設計図を実際に目で追いながら音作りが出来るため、シンセサイザー初心者にとっても扱いやすく、理解を深めるのにも最適なシンセサイザーです。
『SERUM』はウェーブテーブルシンセシスと呼ばれる合成技術を採用したシンセサイザーで、オシレーターセクションには、本記事で紹介した基本的な波形の他に、実に様々な波形(ウェーブテーブル)が収録されています。ウェーブテーブルには複数の異なる波形がまとめられており、パラパラ漫画のように連続変化する波形を生成します。これにより一つの波形では表現しきれない、多彩な音作りを楽しむ事ができるシンセサイザーです。
REPRO
ビンテージ・アナログ・シンセを再現したソフトシンセ『REPRO』は、実機に迫る良質な出音と、豊富なプリセットサウンドを搭載し、初心者でも各音色がどういったパラメーター配列で構成されているのか学び易いインターフェイスとなっています。更にTWEAKSモードではパネル裏の基盤にもアクセスできてしまうというマニアックな遊び心も搭載。故障を恐れることなく禁断の改造気分まで味わえるのはソフトウエアならではの魅力となっています。シンセサイザー初心者から、上級者になっても末永く愛用できるシンセサイザーです。
SPIRE
シンプルかつ直感的な操作が可能な『SPIRE』は、初心者でも安心して操作できるシンセサイザーです。4つのオシレーターにより多彩な音色を生み出す事が可能で、より難易度の高い音作りに挑戦する事も可能です。世界中に愛用しているユーザーが居るため、インターネットを通じて様々なテクニックが共有されているのも『SPIRE』ならでは。追加プリセットパックが豊富であるところも魅力の一つとなっています。透明感ある出音が特徴的で、現代のダンスミュージック全般で活躍できるシンセサイザーです。
本記事で紹介した内容は、様々なVIRTUAL INSTRUMENT製品で応用が効きますので、是非自分が思い描いた「音作り」にお役立てください!