SONICWIRE

聴いたことが無い音、こちらにございます。オリジナル楽器のソフト音源5選!

2024年3月1日 18:24 by iro

音楽を楽しんでいる方なら、欲しい「音」がなかなか見つからないという悩みに直面したことがあるはずです。楽曲の中で1回しか鳴らないのにその一音が決まらず作業が進まないといった経験に覚えがある方もいるのではないでしょうか。

どんな高級楽器でもどんなにレアな楽器でも既存の楽器では埋められない自分が求める「音」を、楽器を自作することで適えるアーティストがいます。今回は、そんな深い好奇心/探求心が具現化されたともいえる「オリジナル楽器」の音色を収めたソフト音源の中から、5点をピックアップしてご紹介します。説明を読んでもピンとこない場合は、ぜひ記事中のデモムービーやデモソングでサウンドを試聴してみましょう。

BEST SERVICE『KLANGHAUS 2』

世界唯一の独創的な楽器をコレクションした、強力な創作楽器音源!
税込価格 ¥40,678
  • メーカー:BEST SERVICE
  • カテゴリ:ソフト音源

『KLANGHAUS 2』は、1982年以来、新しい楽器、サウンド・スカルプチャー、インスタレーションを発明/制作してきた音楽家Ferdinand Foersch 氏が約30 年もの歳月をかけて生み出しや唯一無二の、ユニークな創作楽器のサウンドを集めたソフト音源です。

大きな共鳴盤を備え多種の楽器を組み合わせた”Polytone”を始め、水の入った円柱状の金属を吊るしたゴング的音色の楽器”Channel Gongs”、様々な創作打楽器を組み合わせたドラムキット”Bio Modul”といった楽器の数々を収録(名前だけ聞かされても「???」となりますが、本記事は以降もそんな感じです)。

Ferdinand Foersch 氏の研究と作品は、音響と視覚の関係、音と形、聴覚と視覚の相互作用が念頭に置かれています。上の画像に並ぶ楽器達を見ると、どんな音がするのか興味がわいてきませんか?『KLANGHAUS 2』では、各楽器のアコースティックな音色を丁寧に収録。打楽器のリズムはmidiフレーズで制作されているので、DAWのテンポへシームレスにシンクすることができます。また各楽器のサウンドをもとにデザインされた上モノ系シーケンスやリズムループ、スウェルなども収録され、アコースティックな音色以外にも劇伴やエレクトロニカ、アンビエントなどに使える音も用意されています(以下Klanghaus 2 Trailerを参考ください)。

IMPACT SOUNDWORKS『HAMMER KLAVIER』

フェルトハンマーを金属製ハンマーに置き換えたピアノ音源!
税込価格 ¥10,813
  • メーカー:IMPACT SOUNDWORKS
  • カテゴリ:ソフト音源

『HAMMER KLAVIER』は、IMPACT SOUNDWORKS 社とピアノやギターを使って想像力に富んだ音楽的実験をするYouTuber/ギタリスト、Mattias Krantz 氏との共同開発により生み出された”金属ハンマー・ピアノ”音源です。通常のピアノはフェルト製のハンマーで弦を叩いて音を奏でますが、『HAMMER KLAVIER』では従来のフェルト・ハンマーを全て金属製ハンマーに置き換えたアップライト・ピアノのサウンドが収められています。

ピアノの弦の上にガラクタを乗せるなどして個性的な響きを作る「プリペアド・ピアノ」は有名ですが、”金属ハンマー・ピアノ”はそれよりも優れた汎用性を備え一般的なピアノと同じように演奏可能です。そのサウンドはパワフルなチェンバロを彷彿とさせ、通常のピアノのダイナミクスとハンマーダルシマーのパーカッシブな性質を併せ持っています。ソフト音源としても、ダイナミック・レイヤー / ラウンドロビン / リリース・ラウンドロビンなどがしっかり組まれており、ユニークなサウンドを持つカスタム・アップライトピアノ音源として”使える”仕上がりです。

SOUNDIRON『HOPKIN INSTRUMENTARIUM:RUMBA BOXES』

バート・ホプキンによって発明された独自の集合楽器
税込価格 ¥6,721
  • メーカー:SOUNDIRON
  • カテゴリ:ソフト音源

『HOPKIN INSTRUMENTARIUM:RUMBA BOXES』は、一風変わった独創的なアコースティック・アートに重点を置いて、自身が夢見る限りのあらゆる楽器を設計・製作してきた楽器製作の巨匠Bart Hopkin 氏が考案した、独創的な大型木製バス・カリンバのソフト音源です。Bart Hopkin 氏によって発明されたルンバボックス、カホン(ルンバボックス本体の木箱部分)、そしてアービー・マッコーンのサウンドを収録しています。

「ルンバボックス」とは、英語圏のカリブ海で使われているバス・カリンバの名称。通常カリンバと聞くと両手サイズ程度のものを思い浮かべますが、「ルンバボックス」はカホン程の大きさの木箱にタイン(金属棒)が取り付けられており、奏者が本体の上にまたがり、両足の間から手を伸ばしてタインを弾きます。Bart Hopkin 氏は「ルンバボックス」をいくつか制作し、そのほとんどはクロマチックで、バネ鋼のタインを設置。中には、倍音をチューニングしてまとまりのある音を作るために、タインの形状が試行錯誤されていたり、ラトルが付いているタインもあります。

「アービーマッコーン」は、ルンバボックス/カホン/パーカッション/ガジェットの集合体。ルンバ・ボックスがカホンとしても非常にうまく機能することがわかったBart Hopkin 氏は、ルンバ・ボックスにバネを取り付けた金属音やクラーベ、シェケレ、シェーカー、ラトルタイン、ベルなど、さらにいくつかのパーカッシブな楽器を取り付けました。Bart Hopkin 氏いわく、演奏していて本当に楽しいそうです。

各楽器は、さまざまな道具や奏法で演奏され2つのマイク・ポジションで録音されたアコースティックサウンドに加えて、サウンドデザインされたテクスチャ、パッド、ドローンなど、幅広く収録。クリエイティビティを完全に自由に発揮できます。

SPITFIRE AUDIO『MERCURY』

ハリウッドの“秘密兵器”が奏でる未知なるサウンド
税込価格 ¥23,353
  • メーカー:SPITFIRE AUDIO
  • カテゴリ:ソフト音源

『MERCURY』は、ハリウッドの一流楽器デザイナーChas Smith 氏がハンドメイドで制作した唯一無二のサウンド・スカルプチャーを14種収録したソフト音源です。それらのハンドメイド楽器は、ハンス・ジマーやチャーリー・クラウサーなどのトップコンポーザーによって、「DUNE/デューン 砂の惑星」「インターステラー」「ハンガー・ゲーム」「ソウ」など数々の映画サウンドトラックで用いられ、情景や心情を表現してきました。SPITFIRE は、「独自の音の世界を構築し、畏敬の念を抱かせるスコアを作るには簡単には再現できないサウンドや楽器を発見する必要がある」との考えに基づいて、Chas Smith 氏と協力し『MERCURY』ライブラリを開発したのです。

Chas Smith 氏自身は元々音楽家として活動していたわけではなく、溶接工/加工工として映画産業に携わり、モーション・コントロール・カメラクレーンの構造工学でアカデミー賞技術賞を受賞するに至った金属加工のプロフェッショナルです。金属加工における”職人”と呼ぶにふさわしい同氏により作り上げられた楽器はまさに「作品」。他の誰にも真似することのできない複雑で有機的なサウンドを奏でます。

『MERCURY』ライブラリは、各楽器のピュアでオーガニックなサウンドと、SPITFIREが誇るサウンドシェービングエンジン「eDNA」をベースにした最新の「Solar」エンジンによって、600以上のテクスチャー、トーン、パッドが演奏可能できます。

HEAVYOCITY『UNCHARTED 88』

ピアノを分解し再構築したシネマティックパーカッション音源
税込価格 ¥25,685
  • メーカー:HEAVYOCITY
  • カテゴリ:ソフト音源

先にご紹介した『HAMMER KLAVIER』や「プリペアド・ピアノ」のように、これまで新しい音を作る素材としてよくピアノが用いられてきました。この『UNCHARTED 88』も、ピアノを文字通り「素材」として作られたオリジナル楽器の音源です。HEAVYOCITYは、通常のピアノを徹底的に分解した上で弦 / 鉄板 / 木枠などあらゆる内部部品を組み上げ、新たなパーカッシブエレメント「Damaged Piano」に還元しました。

「Damaged Piano」のあらゆる箇所を(マレット、ハンマー、コイン、ピックなど様々な道具で鳴らしたサウンドをキャプチャし、HEAVYOCITYの十八番であるサウンドデザインを施すことで、これまでにない不穏且つ独特の緊張感を与えるパーカッション・スイートが完成。オーガニックな打音のみではなく、サスペンスフルなインパクト、ミステリアスでエッジの効いたトランジションなど活用の幅が広そうなワンショットがたっぷり。更に仮想のステージ上に各種ワンショットを配置して、独自のアンサンブルを組むこともできます。更に更に豊富なループを収録しているのもうれしいところ。パーカッションの型にはまらないカスタマイズ性とワークフローを提供します。

さいごに

今回は、「オリジナル楽器」音源の一部をご紹介しました。これらの音源は、デジタルの音作りが十分に発達した現代にあえてフィジカルの楽器を作ってしまうまでに至ったアーティストと、今までにない音を届ようと日々開発に明け暮れているソフト音源デベロッパー双方の探求心の結晶とも言えます。各音源には、収録サウンドに”もう一味”を加えるエフェクト等が備わっていますので、あなた色に染めた世界に一つだけの音を鳴らしてみましょう!

ちなみに、音の探求心のもう一つの形として、楽器じゃないものを楽器じゃないもののまま音楽的に演奏させるソフト音源も多数存在します。そちらのご紹介はまた別の機会に。