SONICWIRE

NAMM Show 2024 スタッフレポート

2024年3月5日 11:55 by rym

2024年1月25日~28日にアメリカはカリフォルニア州、アナハイム・コンベンション・センターで開催された、世界最大級の音楽機材見本市「NAMM Show 2024」。昨年に引き続き、SONICWIREスタッフも本イベントに参加してきました!

遅ればせながら、イベントの様子を本記事でお届けします。

筆者プロフィール紹介

クリプトン新卒入社5年目。VIENNA SYMPHONIC LIBRARY社製品の他、ZPLANE社OEKSOUND社などのプラグイン・エフェクト製品のプロダクト・スペシャリストを務める。

羽田空港から約11時間にわたるフライトを経て、無事ロサンゼルス国際空港に到着。昨年は入国時にトラブルがあったりもしましたが、今回は何事もなく無事入国審査を通過。スタッフ一同胸を撫で下ろし、NAMM前日の入場許可証の受け取り(Badge Will Call)とエントリーも済ませ、翌日に備えます。

そしてNAMM Show開幕。大小2つに分けて設けられた会場はそれぞれ目を見張るほど大きく、今回NAMM初参加の筆者は度肝を抜かれました。

上の画像は2会場のうち小さい方の写真ですが、大きい方の会場はこの4~5倍。カメラでは到底収めきれないほどの規模で、この規模のエリア全体に世界各国のデベロッパーがビッシリと出展しています。

※昨年の渡航メンバー曰く、去年に比べるとさらに大規模になっているらしく、コロナ禍前の勢いを取り戻してきているとのこと。

ありとあらゆる場所に大量の楽器や音楽機材が立ち並び、至る所で名の知れたアーティスト/エンジニアによる講演会が行われています。中にはドラムのライドシンバルだけが大量に並ぶ、ドラマー大歓喜のエリアも。様々な催しや体験エリアが設けられており、自分の専門外のブースでも思わず足を踏み入れてしまいます。筆者はハードウェア機材には明るくないのですが、それでも聞いたことのあるレベルの有名アウトボードや機材、楽器が所狭しと並べられており、詳しい渡航メンバーに機材やデベロッパーの歴史、各機材の特徴などを解説してもらったりしていました。

サックスが展示されているエリアに行ってみると、隣のブース同士が即興でコラボしてセッションしているような光景も。プロクオリティの演奏がそこら中で繰り広げられており、各々が思い思いに「音楽」を楽しんでいる、そんな空間でした。

余談ですが、クラシックピアノから音楽を初めた筆者としては絶対に訪れたかったピアノエリア。「いつか演奏してみたい」と夢見つつもなかなか機会の無かったイタリアのピアノメーカー、FAZIOLI(ファツィオリ)社のグランドピアノを実際に触ることができたのが個人的に嬉しい出来事でした。

今回試奏したのは「F212」。中型のグランドピアノでありながら発せられる土台の安定した低音と、ピアノ内部の材質を生で感じられる音色に、思わず「動画で聴いたあの音だ…!」と感動。意外と軽くレスポンスの良い(早めのパッセージが弾きやすい!)タッチから奏でられるアタックの強めな音色に、グランドピアノとしての品格を感じずにはいられません。

※なんと日本帰国後にはVSL社から『SYNCHRON FAZIOLI F212』のリリース情報が来ており、直近で実機に触った経験がリリース作業に活きることになるとは思いませんでした…。非常に貴重な体験です。

思わず楽器ばかりを語ってしまいましたが、我々の本分である「ソフトウェア」も見ていきましょう。

会場内にはベテランのデベロッパーから新興デベロッパーまで様々な会社がズラリ。ソフト音源やエフェクト、といった括りで言うと数えきれないほど展示されていますが、中には新しいコンセプトの下で開発されたDAWや、微分音での演奏に対応したシンセサイザーなど、完全初見のものも。微分音シンセについては、ベンドを用いて他社シンセサイザーも微分音で発音させられるとのことで、多方面での活躍が期待できそうです。微分音を売りにしたプラグインは他にも何社か発表されていたため、少しずつではありますが今後のトレンドになっていく可能性も秘めているのではないでしょうか。

▲OEKSOUND社の新作「bloom」

SONICWIREでも取扱っているデベロッパーの方々とミーティングをしつつ、最近の動向や新作の情報などについて伺っていきます。直近ではOEKSOUND社(『SOOTHE2』などを販売)から新作「bloom」が発表されましたが、それも展示されていました。

「bloom」はあらゆる素材のトーンバランスをマルチバンドで効果的に操作できるといった製品で、エキサイターのように特定帯域の音をきらびやかにする効果がありながらもサチュレーションの類は一切使っていないという、同社の技術力が見え隠れする製品でした。向こう1~2ヶ月程度でリリース予定とのことで、期待ですね。

GULLFOSS』で一躍有名となったSOUNDTHEORY社とのミーティングでは、進行中の新作「KRAFTUR」に関する情報を耳にしました。

詳細はドキュメントなどでの解説が待たれる製品となりますが、シンプルな操作で高ラウドネスを実現可能な、マスタートラック向けのリミッターであるような印象を受けました。シングルバンド処理/マルチバンド処理の度合いも自由に調整可能で、かなり柔軟かつ強力なリミッティングが行えそうです。

こちらも「bloom」同様に、向こう1~2ヶ月程度を目処にリリースとのことです。この2社は筆者の担当デベロッパーであることもあり、期待が高まります…!

▲SOUNDTHEORY社新作「KRAFTUR」

また、日本国内でまだ代理店がいないデベロッパーへのお声掛けもNAMM参加の目的の一つ。気になるデベロッパーへ日本国内での展開についてご提案しました。すでに取扱いに向けて進行中の会社もありますので、今後皆さんへご案内できる日が非常に楽しみです。

足がパンパンになるほど毎日会場内を歩き、「大きい」&「濃い」なTHE アメリカンフードでエナジーリフィルし続けた4日間の会期でしたが、気付けばあっという間に終了。食べる時に顎が外れるかと思った巨大ハンバーガーと、ミニフライヤーに入った大量のポテトに少し思いを馳せる今日この頃です。

会期を終え、初めてのNAMM(どころか渡米も初)にカルチャーショックにも近い衝撃を受けた筆者。自分の知らない音楽の世界がまだまだあるんだなと感じると共に、いちSONICWIREスタッフとしても日本国内のDTM文化はまだまだ盛り上がれるなとひしひしと感じました。

世界一とも評される音楽のイベントにおいて、取引先デベロッパー、果ては世界中の音楽にまつわる会社の熱量を直で感じ、思わず「自分にやれることを探さなくては」という使命感に駆られた時間だったと言えます。

今回のNAMM Showをきっかけに、よりコラボレーションが前進したデベロッパーもありますので、引き続きご注目ください!