RAW CUTZ製品レビュー by O.N.O 氏
THA BLUE HERBのトラックメイカーとして独自のサウンドを確立し、ソロ・プロジェクトにおいても唯一無二の世界を創造し続けているトラックメイカー“O.N.O”氏に、クラシックなHipHopライブラリを展開するサンプルパックブランド、RAW CUTZの製品レビューをいただきました!
みなさんはトラックメイクでサンプルパックを使いますか?自分は音色や質感の補強に使う事が多く、トラックのヒップホップ度数が濃くなると使用頻度が増えます。特にドラムマシンの音色にラグドな質感や煙たい空気感が欲しい時に多用していますね。
RAW CUTZはザラついた芯のあるビート、アナログレコードのような質感と90sヒップホップで好まれた、ジャジーでソウルフルなネタ使いを再現した音色やフレーズ、不穏でスモーキーなアブストラクト感のある素材などがループ、ワンショット素材で収録されています。収録されてるドラムはループ素材、ワンショット素材ともにタイトながら力強く奥行きのある鳴りで、乾いた質感が気持ち良いです。
アナログな質感が魅力のRAW CUTZ製品
ベースや他の楽器、ウワモノも過剰なコンプ処理がされておりません。アウトボードやサンプリング機材の特性が活かされた質感は組み合わせやすく、ミックス時の音作りにも重宝すると思います。
ネタ掘りとサンプラーを使った、往年のヒップホップのトラックメイクを通過したビートメイカーのほうがサンプルパックの使用に躊躇するかもしれませんが、フレーズのまんま使いじゃなく、分解やカットアップ、ワンショットの組み合わせなど、コラージュによるヒップホップ的なトラックメイクを構築するためのツールとして、RAW CUTZや他のサンプルパックを使うと相当楽しいと思います。
それでは実際にAkai MPC XとMPC SOFTWAREを使って、RAW CUTZのサンプルパックだけでトラックを構築してみたいと思いますが、多くのDAWやサンプラーでも同様のトラックメイクが可能です。
今回は『BOOM BLACK』『DEAD BEATS – DARK HIP HOP』をメインに使用していきます。
素材選びと新たなグルーヴ探求
先ずはワンショット素材、分解したループ素材をそれぞれ、パッドに割り当てていきます。MUTANTなどのサウンド管理ツールを使うと素材選びが早いです。
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『MUTANT』を使用する事で、多くのサンプルをサクサクと聞く事が可能です。
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選んだサンプルから使えそうな部分の切り出しをしています。
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切り出したサンプルやワンショットをパッドに割り当てます。鍵盤やパッドでサンプルの演奏が可能になります。
割り当てたサンプルを使って組み立てられたビート
▲音色やグルーヴの異なった素材同士を組み合わせる事で、新しい質感とグルーヴを作る事が出来ます。ワンショットのドラム素材も重ねて補強し、ビートを組んでいきます。
複数のベースサンプルを分解しフレーズ作成
MPCの場合、ベースはミュートグループなどの機能を使うと音が重ならず、フレーズ作りに便利です。(ベース込みのメロディのループ素材をフィルターで低音だけ出したりする使い方も90s感ありますね。)
割り当てたサンプルを演奏しながらフレーズを作成
▲今回3種類のベースループ素材を分解し、更にワンショット素材を組み合わせ、パッドで弾きながらフレーズを決めていきました。
空気感の異なるサンプルを重ね合わせていく
ウワモノを重ねて、不協感を狙った鳴らし方もドープですね。ぶつ切り感が良いので、今回は空間系のエフェクトやサンプルのテール部分の加工はせずに組み上げます。
サンプルに対して部分的にリバース処理を施し、オリジナリティを加える
▲ループ素材、ワンショット素材ともに、部分的なカットやミュート、リバースなどをし、パッドに入れてグリット(シーケンサ)で打ち込んでいきます。
RAW CUTZのサンプルパックを使用したDEMO TRACK
イントロ、メイン、フック、アウトロでDEMO用に短めにまとめたので聴いてみてください。
DEMO TRACK by O.N.O
DEMO TRACKのミキサーコンソール。プラグイン・エフェクトが使用されていないことがわかる
▲今回のDEMO TRACKは、RAW CUTZの素材の音そのままを聴いてもらうため、EQやコンプなどの処理はしていません。取り込んだ素材は50個くらいでしょうか。トラック内で実際に使うかどうかは気にせず、沢山サンプラーに入れておくとアイデアが広ると思います。
最後に
サンプルパックは色々な使い道があると思うんです。
収録されている各パート毎のフレーズを組み合わせるだけでも完成度の高いトラックメイクが出来ますが、自身のアイデア外のフレーズをサンプルパックから探すのもおすすめです。シンセやリズムマシンでトラックメイクする時に、自分の機材だけで出せない音を足して補強したり、テンポを変えて他ジャンルのサンプルパックから探す方法も新しい発見がありそうです。また、ループ素材はライブやDJのツールとして現場でも使っていけます。
DAWやMPC以外のサンプラーでも基本は一緒で、決まったルールもありません。普段サンプルパックを使わない方や初心者の方も、是非サンプルパックに触れ、トラックメイクに挑戦してみてください。
- メーカー:RAW CUTZ
- カテゴリ:サンプルパック
THA BLUE HERBの全トラックメイクを手掛け、独自のプロダクションで唯一無二のサウンドを創造するアーティスト。機材と肉体との有機的な合奏によるライヴパフォーマンス=O.N.O a.k.a. MachineLive、反復し変質し続ける音の連続体ミニマルテクノプロジェクト=onomonoという名義も持ち合わせ、現在までにTHA BLUE HERB、そしてソロ・プロジェクトを合わせて12枚のアルバムを発表。あらゆる音楽と現場を通過し選び抜かれたインスピレーションは、境界を突き崩し前進し続ける。2022にNew Album「Duskrom」をリリース。
リリース情報
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