SONICWIRE

米国のKeyboard誌に掲載されていた「HANS ZIMMER PIANO」(SPITFIRE AUDIO)の製品レビューをご紹介します!

2016年5月26日 18:51 by T

Keyboard誌4月号(アメリカ)に、ハンス・ジマー氏の要望を叶えるべく制作された究極的ピアノ音源「HANS ZIMMER PIANO」のレビューが掲載されていましたのでご紹介します!(和訳)


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ここ何年かの間で、ハイエンドなバーチャル・ピアノ音源はある程度安定した商品カテゴリーになりました。IvoryやPianoteqなどの「万能ピアノ音源」がリリースされたり、ピアノ個体の特徴を上手く掴んだ「オリジナリティあるピアノ音源」(例えばNative InstrumentsのThe Giantなど)等がリリースされています。しかし、Spitfireは高度なサンプリング技術力を用いて、そのどちらの要素も取り入れた『Hans Zimmer Piano』を誕生させました。Keyboardマガジンの評価:このライブラリは、ここ何年かの成功の集大成です。

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このKontakt Playerベースのバーチャルピアノは、ロンドンのAir StudioにあるSteinway D です。このピアノはコンポーザーであるハンス・ジマー氏の長年のお気に入りで、氏の制作に使用されることもあれば、ただ単に氏が演奏を楽しむだけにも愛用されてきました。ライブラリ上には4つのマイクポジションがあるだけではなく、とても近いものから、リアサラウンドチャンネルで使用することを目的としたものまで幅広く用意されています。加えて、各マイクポジションのバランスを調整をすることができます。様々に音色を調整できるようにした結果、『Hans Zimmer Piano』はどんなムードの音楽にも合う万能的なものになり、音楽制作をする上で音色に迷うことがありません。この1つのバーチャルピアノは、従来のピアノ音源の1ダース分、またはそれ以上の働きをします。それはデベロッパーがレコーディング・テクニックを完全に熟知しており、どう収録すれば何ができるようになるかを深く知っている証拠です。加えて、全ての音色は完璧に調整されているのでミックスは簡単に済みますし、 EQ等の各種エフェクトに手が伸びることはほとんどありません。

実際の収録がどれほど綿密に行われたかの裏話は、Spitfireのウェブサイトをチェックしてみてください。ただ私の小耳に入ってきた、とりわけ印象が強かった裏話は、ハンス・ジマー氏がソフト〜ミディアム・ベロシティー・レンジに特にこだわってしまい、完璧なリアルと感情的なニュアンスを実現するために莫大な労力をつぎ込んだというものです。このピアノの音色は「ダーク」ではありません。むしろ明るく、耳障りな音が1つもない、クリスタルのようにクリアー です。音色の一貫性に関しても、これに匹敵するピアノ音源は他にありません。可能な限り様々なマイクコンビネーション、音域、ベロシティーレベルで弾いてみたところ、レスポンス は少し違うのものの、変な発音はありませんでした。マイクの距離が補正されたサンプルセットがあり、位相の問題が起きないようにも配慮されています。

情熱と野心が注ぎ込まれたこのライブラリは、動作環境も限界まで挑戦しています。『Hans Zimmer Piano』は211GBもの空き容量が必要です。インストール時は約400GBの空き容量が必要です。Spitfireはこのライブラリをハードドライブとしても届けているようですが、それはインストールメディアとしてであり、ストリーミング用ではありません。ユーザーには、デスクトップ用とノートパソコン用として2つのライセンスが与えられます。ノートパソコンで一度に1つ以上のマイクポジションで演奏する場合、少なくとも信頼性の高いSSDがThunderbolt、または少なくともUSB3で接続されていることがオススメされますが、同時発音数のチェックをするとドロップアウトすることがあるでしょう。ストレスなく、全てのマイクポジションと、濃密なサウンドのために、SSDをRAIDストライピングすることをオススメします。もしあなたが制作環境のストレージの容量をアップグレードしようと考えていたのなら、極上のサウンドを収めた『Hans Zimmer Piano』は良いきっかけとなることでしょう。

『Hans Zimmer Piano』は技術面もサウンド面も完璧な、直感的に使えるライブラリです。ここに免れない質問があります。それは「このライブラリはIvoryを殺すもの?」。私はこう回答するようにします。「それは テスラ・モデルS から ブガッティ・ヴェイロンに乗り換えるぐらいなものでしょう。」。前者は全てを効率良く上手くこなし、あなたはご近所さんから羨望の眼差しで見られることでしょう。後者はコストを惜しまない時にピッタリです。ただもしほんの少しだけ費用を上乗せすることでテスラではなく、ブガッティを買えるとしたら?その時は もっと大きなガレージが必要になることでしょう。

スナップ・ジャッジメント

(良)とにかくゴージャスなサウンド。とても統一感のあるハーモニーと幅広く揃ったピッチ、ダイナミックなベロシティー・レスポンス。ベロシティレイヤーの間は感知できない。複数のミックス可能なマイクポジションと、位相が調整されたブレンディング前提のサンプルセット。

(悪)ストレスなく演奏するためには、プログレードのストレージと転送スピードが必要。

要点

想像も付かなかった、最も壮大なピアノ音源。