OUTPUT『PORTAL』レビュー
by 鈴木光人(SQUARE ENIX)
鈴木光人 氏:
『REV』等ソフト音源を沢山リリースしているOUTPUT社からプラグイン・エフェクト『MOVEMENT』に続き、今度はグラニュラー合成を採用した『PORTAL』の登場です。
グラニュラー合成とは「音」を細かい粒(グレイン)に分割し、ピッチや長さを変えてクロスフェードさせる再生技術。Max/MSPによる自作パッチなどでは数多く見られますが、グラニュラー合成に特化したプラグイン・エフェクトは実はそれほど多くないので、VSTなどで手軽に使えるのは嬉しいところです。
さていきなり結論付けると、
- 楽曲やフレーズを手軽に加工して変えたい
- 飛び道具的なエフェクト処理をしたい
この2点に尽きると思います。
UI自体とてもシンプルな上、カテゴリー毎にプリセットが用意されてるので、まずはプリセットを適当に選択してXY CONTROLを操作してみましょう。ピッチシフトやグリッチを組み合わせた変則的な加工はこれだけでいかにも「らしい」処理を施す事が出来ます。
PORTALのXY CONTROLセクション
僕が特に気に入っているのは「声」や「ギター」といった生モノの加工で、1つのフレーズからパッド的に空間を埋める残響や、ピッチ変化させたディレイのフィードバックが複雑に絡み合うフレーズを作り出すなど、頭の中で思い描いてる物と違う物が生まれる可能性が極めて高いところ。従来のディレイやリバーブといったエフェクターと違って、決まった使い方がないので、アイデアと偶発性でいくらでも処理を試せるのはDAW環境ならでは、そしてコンピュータで音楽を作る魅力の一つと言えるでしょう。そして何より代用がきかないプラグインという事で、プラグインスタメン入り決定です。
スクウェア・エニックス所属の作曲家。
『ライトニング リターンズ ファイナルファンタジーXIII』、『スクールガールストライカーズ』、『メビウス ファイナルファンタジー』などを担当。近年ではゲームのみならず、TVアニメ『スクールガールストライカーズ Animation Channel』の楽曲も手掛ける。音楽専門誌での機材レビュー執筆や舞台音楽の制作にも携わっており、多方面で才能を発揮している。
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