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Takashi Sasakiに聞くSERUMプリセット活用方法『HYBRID LOW END』製品レビュー

2025年12月26日 10:00 by fum

サンプルパック『HARDWARE TECHNO LOOPS』のプロデューサーであり、札幌のライブイベントbeepの主宰や、ハードウェアシンセやリズムマシンを主体とした即興演奏、音楽活動を行うアーティスト、Takashi Sasaki。今回、Serumプリセット『HYBRID LOW END』をレビューいただきながら、Serum 2の新機能を使ったカスタマイズ例など紹介いただきました!


Takashi Sasaki:

今回紹介するサンプルパックの『HYBRID LOW END』、いわゆるプリセット音色集ですね。Serum 1時代に作られたプリセットとのことですが、Serum 2にもあっさり読み込めてしまいます。過去の音色ライブラリの資産を活かせるという意味でも、Serum 2の互換性の高さは大歓迎です。

「HYBRID LOW END」の名の通りベースサウンドはもちろんLEADやARP、DRONEやEFXに至るまで、Macroへ割り振られたパラメーターを触るだけで時間を忘れさせてくれます。音色も全く古さを感じさせず、むしろこれからも使い続けられる、普遍的で即戦力になるサンプルパックだと感じました。

Serum 2によりプリセットの拡張性が大幅にアップ

Serum 1からお使いになられた方はお分かりかと思いますが、1がすでに使いやすい存在でした。ですが、Serum 2では数々の新機能が追加されて、さらに進化しています。

オシレーターへのグラニューラーの追加で、サンプルを多彩に変化させることが可能になり、エフェクトやLFOの種類も増え、ステップごとにPanやCutoffの値を変更できる機能も搭載。以前にも増して柔軟に音色をEditできるようになりました。特に待望のアルペジエイターの実装は、Swingの値も変化させることができ、非常に創作意欲を刺激してくれる存在です。

  • 13種のエフェクト・プロセッサーと3種類のスプリッター・モジュールを搭載

  • ステップごとに可変操作が可能なVOICE CONTROL

  • 満を持して搭載されたアルペジオ・モジュール

パラメーターのカスタムに貢献する8つのマクロノブ

Serum 2ではMacroのつまみが4つ増えて、合計8個になりました。一つのつまみに複数のパラメーターをアサインすることもでき大変便利です。やり方も簡単で、設定したいつまみの上で右クリック、表示されるMod Sourceの中から指定したいMacroを選ぶだけです。
この8つのMacroが「HYBRID LOW END」と非常に相性が良いのです。

「HYBRID LOW END」の各音色を聴いてみると、LFOなどを多用した音色変化の素晴らしいアイデアが散りばめられています。そのままキーボードで弾いただけでは、それに気が付かない可能性が高いです。ぜひMacroの下にパラメーターの名称が書かれているつまみを動かしてみてください。可能ならMIDIコントローラーを使っていただけると、さらに直感的に音色を変化させることが出来るので、その巧みな作り込みに驚いていただけると思います。


マクロ操作による有機的な音色変化

一通り聴いた中で、特に音色変化が印象に残った3つの音色を紹介します。今回はゆったりとした短音のフレーズを打ち込み、それを再生しながらMacroを動かしてみました。鍵盤を弾きながらではなく、打ち込んだフレーズで再生した理由、それは右手と左手で複数のMacroを同時に変化させたかったからです。こちらの環境ではAbleton MOVEを使用しましたが、つまみ付きのコントローラーならなんでも構いません。

WUB_Glass Half Full

こちらはBASSのカテゴリーですが、発音のタイミングや音の膨らみ具合がLFOの画面の変化と連動しているので、視覚的にもわかりやすいと思います。少しオーバーに後ろにタメてみたりしましたが、慣れるとライブでも見せ場を作れると思いました。

ARP_Klunknoid

2つ目はARP_Klunknoid。RATESのつまみを右に回すにつれて細かく発音するようになります。さらにFILTERとDELAYで音色変化と空間をコントロールするイメージです。

DRONE_Unstable Status

DISTORTIONのMacroが非常に効果的で、FILTERやWETとの組み合わせでいつまでも聴いていられる音色の変化を生み出すことが出来ます。

ここまで使用してきたフレーズは全て同じメロディーを使用していますが、それぞれがかなり違う感じに聴こえるのではないでしょうか?
まさに「HYBRID LOW END」の音色変化がなせる技、聴き飽きない展開にも貢献してくれますし、使用するトラック数も少なくすることが出来ます。

Serum 2の機能を活用したカスタマイズ例

では次に自分流に使いやすくアップデートする一例をご覧ください。
ライブではモジュラーシンセを使ってシーケンスフレーズがランダムに生成されるような展開を作ることもあるのですが、新機能のアルペジエイターとMacroを組み合わせた実例を紹介します。

ARPモジュールで”PLUCK_I want to be more than a Pluck”を使用します。ここでSerum 2の新機能であるアルペジエイターをオンにし、KEYをA、SCALEをMinorに、SWINGを50.7%に変更します。これによって音階に合っている音のみが、少し跳ねたリズムで鳴るようになります。その後、TRANSPOSEをRandomに、SHIFTを3に設定しました。さらにRANGE(アルペジオの範囲)、REPEATS(同じ音を繰り返すかどうか)、GATE(アルペジオの音の長さ)、CHANCE(音を鳴らす割合)をMacroの5から8にアサインしてます。

さらに自動でつまみが動くように設定してみたいと思います。

今回はMacroの1、5、7にそれぞれMod SourceのNote > NoteOn Rnd(Discrete)を Macro 8にはNoteOn Rnd1を設定。自由に動くつまみをさらに人間が触ることで、自動化と人間のニュアンスとを融合してみました。


音楽活動とSerumとの関わりについて

SerumについてはSerum 1から愛用しており、海外レーベルからリリースしているトラックでもすでに大活躍しています。Serum 2になって生楽器のSampleを使用した音色も追加されたので、さらに出番が増えそうですし、自分で録音した楽器の音を音色として使用したり、フィールドレコーディングした環境音をグラニュラーで変化させたりすることも楽しめます。
エフェクターのConvolve、Utility、Splitterは今までDAWでやっていた処理をSerum 2で完結できるので、ライブ時の設定が簡略化できると思いました。
また、現在、持ち運び出来るコンパクトなPitch bend / Modulationコントローラーのハードを開発中なのですが、こちらのテスト環境で立ち上げている音源もSerum 2です。
気になる負荷ですが、最近のマシンであれば負荷を感じたりすることはほとんどないと思います。

HYBRID LOW END

今回レビューさせていただいた「HYBRID LOW END」、今後も制作やライブで活用していきたいと思っています。普段制作し、リリースしているトラックは主にテクノやハウスですが、実際には様々なジャンルのダンスミュージックを制作することも多く、 Drum’n’BassやTrapなどの制作でも即戦力になると思いました。Serum 2の新機能により更なる拡張性を感じましたし、特に8つに増えたMacroとの相性が抜群なので、ぜひお試しください。

HYBRID LOW END 製品ページ ≫

Takashi Sasaki

リズムマシンや複数のシンセサイザーを駆使し、その場限りの即興的なトラックを作り上げる。札幌を拠点とし、ハードウェアの電子楽器に特化したライブイベント「beep」を50回以上主催。また、東京、大阪、名古屋など日本各地の数多くのイベントにライブアクトとして出演している。ユニット「Converge+」として、ニューヨークのNite Groovesをはじめとする海外レーベルからトラックをリリース。その後、ソロ活動を開始し、テクノ、ハウス、アンビエントといったジャンルのトラックをリリースしている。
2023年には、イタリアのLETS TECHNO RecordsよりリリースしたEP「Future Memory」が、BeatportのTop 10 Releasesで2位を獲得。2025年には、コンピレーションアルバム『Tree of Life』に楽曲「Loop for 909」を提供し、3位を記録した。また、Luke Vibert、Plaid、HATAKENらが参加したCoppe’のレーベル**〈mango +sweetrice〉**の設立30周年記念アルバムにも参加している。

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