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「GUIが分かり易く、従来のオーケストラ音源に比べ効率的に制作を進めることができます。」/『TOKYO SCORING STRINGS』 Review – 今村貴文 氏

2022年4月28日 16:00 by kta

室屋光一郎ストリングスをキャプチャーし、そのサウンドを世界に届けるために開発された『東京スコアリング・ストリングス』。今回は、『ファイナルファンタジーXIV』のBGM制作や、サウンド実装を担当したスクウェア・エニックス所属のコンポーザー“今村貴文”氏にレビューをいただきました。

 

– GUIが分かり易く、従来のオーケストラ音源に比べ効率的に制作を進めることができます。

『東京スコアリング・ストリングス』(以下TSS)を導入してまず感じたのが、GUIのわかりやすさです。自分の打ち込んだMIDIが音源上でどのような強弱/ヴィブラートで再生されているかを把握できるので、他の音源よりも自分の意図するアーティキュレーションに調整する時間が大幅に短縮できると感じました。

▲『東京スコアリング・ストリングス』GUI

▲「Legato Slur」や「Legato Bow」」などの奏法を切り替えることができるレガートアーティキュレーション

MIDIのベロシティによる、「Legato Slur」や「Legato Bow」、「Porta Slur」などの奏法の切り替わりがわかりやすいです。それぞれパッチを立ち上げて奏法を切り替えなくてはならない音源もあるが、TSSはその手間を省けるため制作を効率よく進めることができます。

また、「LEGATO SPEED」や「RANGE」、再生エンジンも最初からGUI上に表示されているため、すぐに変更することもできるのは使い勝手がよいです。特に再生エンジンに関しては、オーケストラ楽曲の制作は、かなりのトラック数になりプロジェクトが重くなってしまうことが多々あるので、制作進行の状況に合わせて手軽に変更することができ非常に利便性が高いです。

– 音の立ち上がりが早く、打ち込み感が少ないです。

サウンド面に関しては、デッドな録り音と小編成が特徴的なこともあり、各弦の音の立ち上がりが早いです。他音源だとMIDIを数ティック前に移動させたり調整が必要なことがあるが、打ち込んだままで意図したタイミングで鳴ってくれます。フレーズのラインがしっかり見える音源なので、大編成の曲でも他の音源とレイヤーすることでラインを際立たせるような使い方もできます。

録音サンプルにおいても、細かいベロシティレイヤーとラウンドロビンのサンプルが数多く収録されているため、シンプルに打ち込んだだけでも打ち込み感は少ないです。その為、サウンドを作り込めば、この音源のみでクオリティの高い楽曲を制作できると感じました。

– 様々なシチュエーションに合わせたサウンドを用意することが出来ます。

▲EQやComp、Reverbなどのエフェクトを設定できるConsole

Consoleに音源内臓のEQやComp、Reverbなどのエフェクトが組み込まれていて、自分でチェーンを作成し、チェーン毎に保存できます。その為、音場の広いチェンバーホール/コンサートホール用のチェーン/音場の狭めのルームやスタジオ用のチェーンを作って、自分の制作に合わせて読み込ませ、制作の効率化が図れる設計になっていると思います。

▲「Monophonic」と「Polyphonic」を切り替えることが出来るLEGART MODEセクション

また、自分が実際に制作するときは、「Long アーティキュレーション」の「Monophonic」と「Polyphonic」、「Short アーティキュレーション」」の3つを立ち上げておき、プロジェクトのテンプレートとして保存します。その後、制作する曲の音場に合わせて、Consoleのマイクポジションのバランスを調整し、ミックス段階で事前に保存しておいたチェーンを呼び出してから、微調整を行って仕上げていくような制作フローになると思います。

 
『東京スコアリング・ストリングス』 は、従来のオーケストラ音源よりも効率的に制作を進められる事に加え、Consoleなどのエフェクト類も充実しており、組み合わせによってオリジナリティ溢れるサウンドを構築できます。

詳しくは製品詳細ページをご覧ください!

日本が誇るストリングス・サウンドをその手に。
税込価格 ¥69,487¥54,013
  • メーカー:IMPACT SOUNDWORKS
  • カテゴリ:ソフト音源

今村貴文
作曲 / 編曲

スクウェア・エニックス所属のコンポーザー。音楽作家事務所にて作編曲の活動を経て、2019年に株式会社スクウェア・エニックス、サウンド部に入社。『ファイナルファンタジーXIV』の拡張パッケージ『漆黒のヴィランズ』『暁月のフィナーレ』、『ファイナルファンタジーVII リメイク』のBGM制作やサウンド実装を担当。作家事務所での経験を生かし様々なジャンルのBGM制作を得意としている。

自身が携わった曲が収録されている『ENDWALKER: FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack』は日本、アメリカ、イギリスなど世界各国のiTunesアルバムチャートで1位を獲得。毎日FPSゲームをやり込むほどゲーム愛が強く、日々ゲームスキルの向上に勤しんでいる。