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【ここが進化!】『SERUM 2』 でアップデートされた注目ポイントをおさらい!

2025年4月18日 18:30 by fum

多くのユーザーに愛され、ウェーブテーブル・シンセの定番ソフトとして不動の人気を誇る『SERUM』。2025年3月、リリースから凡そ10年の時を経て、かつてない大型アップデートにより進化を遂げた『SERUM 2』の全貌が明らかとなりました。既にYoutubeやSNSでは『SERUM 2』を使用したサウンドの投稿が飛び交い、驚きと歓喜の声で沸いています。

本記事では、これから『SERUM 2』へのアップデートをされる方や、これを機にSERUMデビューを考えている方に、『SERUM 2』で新たに加わった注目のポイントをご紹介いたします!

圧倒的音質と操作性を誇るウェーブテーブル・シンセ音源!
税込価格 ¥27,027
  • メーカー:XFER RECORDS
  • カテゴリ:ソフト音源

はじめに:SERUMとは

▲優れた視認性と操作性を備えた初代『SERUM』のオシレーターセクション

SERUM

アナログシンセシスでは再現が不可能な音色も生成可能なデジタル波形 “ウェーブテーブル” を採用し誕生した初代『SERUM』は、細部まで考え抜かれたモジュール群の配置と洗練された操作性を持つことで、音作りの複雑さを払拭。誰しもがモダンでパワフルなサウンドを作る事が出来るシンセサイザーとして、多くのクリエイターを魅了してきました。

ハイブリッドなオシレーター・セクションの実装!

SERUM 2』では、音源生成の根幹となるオシレーター・セクションに劇的なアップデートが加えられており、これまで2基搭載だったメイン・オシレーターが3基に拡張。更に「ウェーブテーブル」のみならず、「マルチサンプル」「サンプル」「グラニュラー」「スペクトラル」からなる5つのオシレーター・タイプが選択できるようになりました。

複数の特徴的なエンジンを搭載した事により、これまで以上に幅広い音作りが可能となっています。

ウェーブテーブル

最大256種の単周期の波形をパラパラ漫画のように滑らかに移動し、変幻自在な表現力が可能なシンセシスです。

▲初代『SERUM』同様に、サウンド生成の中心となるウェーブテーブル・オシレーター

SERUM 2』では、初代『SERUM』に収録されていたウェーブテーブルに加え、更に多くのウェーブテーブルが追加されています。新たに追加されたウェーブテーブルは、「S2 Tables」から読み込むことが可能です。

マルチサンプル

オシレータータイプ「Multisample」を選択すると、オーガニックな生音サウンドを聞かせるマルチサンプル音源を読み込む事が可能。ファクトリー・プリセットにはベロシティレイヤーに対応するベース、ピアノ、ストリングス、ドラムセットなど、豊富で高品位な音源ライブラリがラインナップされており、生音をレイヤーした音作りが簡単に楽しめるようになりました。更にサウンドフォントの読み込みにも対応しており、SFZファイルをロードする事も可能です。

▲音階やベロシティ毎に異なるサンプルを発音するマルチサンプル・エンジン

また、マルチサンプル音源で特定のサンプルだけ使用したい場合も、Multisampleメニューから「Switch to Single Sample」を選択する事で、直前に入力したノートで使用したサンプルを、次に紹介する単一のオーディオ・サンプルとして使用できるようになっています。

サンプル

▲取り込んだサンプルループを任意の条件でスライスする事が可能

オシレータータイプ「Sample」では単一のオーディオ・サンプルを使用した音作りを行います。楽器音から環境音にいたるまで、様々なオーディオを取り込む事ができ、実験的な音作りにも重宝します。

また「Sample」では、サンプルのループ、クロスフェード、スライス、など、サンプラーに求められる標準的な機能を一通り搭載しています。ドラムループのオーディオ・サンプルをスライスすると、キック、ハット、スネア等を各鍵盤に割り当ててくれますので、元々のループと異なるビートを打ち込む事も可能です。

▲スライスしたサンプルはクリップモジュール上で自由な再配置が可能

なお、打ち込みは、後述する新機能、クリップ・モジュールでも行えますので、DAWと行き来することなく『SERUM 2』内のみで編集作業が可能です。

グラニュラー

▲泉のように湧き出るサウンドに時間を忘れて没頭してしまうグラニュラー

オシレータータイプ「Granular」では、元になる音を数ミリ秒程の非常に細かい粒子(グレイン)に分割してコントロールする事が可能な、グラニュラーシンセシス・エンジンを使用します。

読み込んだサンプルはオシレーター内でのループ再生や、様々な手段でグレインの動きをコントールする事が可能。時間が止まったような音や、空間的でグリッチなテクスチャサウンドのデザインにも重宝します。

スペクトラル

▲複雑で変化に富んだテクスチャを得意とするスペクトラルシンセシス

オシレータータイプ「Spectral」では、周波数スペクトルを分析、再合成することで音を操作し、時間とピッチを個別に制御して新しい音を作り出します。波形を直接操作する他のシンセシス方式とは異なり、倍音と非倍音の内容に着目し、音色と音の変化を精密にコントロールする事ができます。

また、特定の周波数を分離して処理することで、ある質感から別の質感へと徐々に変化する音を作り出す事も可能です。

このほか、初代『SERUM』にも備わっていた「画像フォーマット」からウェーブテーブルを生成する機能は『SERUM 2』でも健在。

8ビット深度のPNG形式のファイルを「Wavetable」または「Spectral」を選択したウェーブテーブル・オシレーターにドラッグ&ドロップするだけで波形化してくれるので、予測不可能なサウンドからインスピレーションを授かるような事も可能です。

▲ユニークなウェーブテーブル生成方法の一つである画像ファイルのインポート

各セクションの基本機能が正当進化!サウンド表現力が飛躍的にアップ!

メイン・オシレーターの拡張に伴い、各セクションの基本機能も大きく進化しています。

FILTER

▲新しく追加されたフィルター「PZ SVF」では、専用に開くウィンドウで自分好みのカーブを描く事が可能

『SERUM』では1基のみの搭載だったフィルター・モジュールは、デュアル・フィルターとなる2基搭載へ拡張。オシレーターからの信号は、片方、または両方のフィルターへルーティングできるだけでなく、直接BUS1、またはBUS2へ送ることもでき、より細かい経路でのコントロールが可能になっています。

フィルターの種類は新たに11種類追加され、「S2 Filters」というカテゴリから呼び出す事が可能です。

WARP

▲使用できるWARPの種類も増え、より複雑な表現が可能に

『SERUM』にはオシレーターの波形を反転させたり引き延ばしたり、様々な方法で変形させるWARP機能が搭載されておりましたが、『SERUM 2』ではWARPモジュールが一つ増え、2つの異なるWARPモードを同時に使えるようになりました。

MACRO

複数のパラメーターを合理的にコントロールする事が出来るマクロ・モジュールは、制御したいパラーメーター(ノブ)にドラッグ&ドロップするだけでマクロへの割り当てが可能。
SERUM 2』ではマクロの数が2倍(8つ)に拡張され、ライブパフォーマンスなどリアルタイムな演奏にも大きく貢献しそうです。

ENVELOPE

時間とともに変化するパラメーターを制御するエンベロープ・セクションでは、初代『SERUM』からモジュールが1つ増え、4つのエンベロープ・モジュールを搭載
パラメーターの時間を調整する単位は、ミリ秒(MS)のほか、 拍(BPM)が追加され、テンポ同期も可能になりました。

LFO

▲Chaos Lorenzでは、ローレンツ方程式をモチーフとしたユニークな軌道を使用可能

サウンド・モジュレーションの重要なセクションとなるLFOは、最大10個の同時利用が可能に。各LFOはそれぞれ独立したコントロールを備えており、LFOの種類、モード、BPM、グリッドサイズなどを個別に設定可能です。

LFOの種類には、NOMAL、Path、Chaos Lorenz、Chaos Rossler、S&H といった5種類のタイプを用意。Nomalタイプでは、強化された描画ツールとエディターにより、波形の直接描画も快適におこなう事ができます。PathやChaosタイプでは、異なる2つのパラメータへ同時にモジュレーションする事も可能です。

なおLFOの適応は、目的のパラメーターへドラッグ&ドロップするだけで簡単に割り当てることができます。

豊富な機能を備えたアルペジエイター。満を持して搭載!

▲DAWのピアノロールと同じような使用感でノート・イベントを入力していく事が可能

初代『SERUM』ではLFOで音階をコントロールする事でアルペジエイターを再現する事が可能でしたが、『SERUM 2』では独立した機能として本格的なアルペジエイター「アルペジオ・モジュール」が実装されました。

アルペジオ・モジュールにはバンク毎に12個のアルペジオ・スロットを搭載。アルペジオ・パターンには標準的なUP / DOWNのみならず、オリジナルのフレーズを作成しカスタム・パターンとしてストックする事も可能です。各パターンはMIDIキーボードやコンピューターのキーボードを使用して素早くトリガーする事ができます。

▲カスタム・フレーズはピアノロール上に並んだグラフィックで可視化され、トリガー時の視認性も抜群

もはやDAW?MIDIの打ち込みが可能なCLIPモジュールが実装!

▲『SERUM 2』ではファクトリー・プリセット音色にデモフレーズが付属。これらは音色をロードした際に、CLIPモジュール内からプレビューする事が可能

SERUM 2』で新たに追加されたCLIPモジュールでは、SERUM内で直接MIDIクリップを作成、微調整、再生する事が可能です。CLIPモジュールをクリックすると、専用のCLIPインターフェイスが起動し、馴染みのあるピアノロールが展開。一般的なDAWソフトに備わっているMIDIシーケンサーと同様に、ノートによる入力、或いはライブ演奏による録音が可能で、ベロシティやマクロなど、オートメーションの記録も可能です。

また、アルペジエイターと同じく、キーボードからトリガー可能なクリップ・ランチャーとして、各バンク最大12個のスロットを搭載しています。

音色加工の幅が一気に広がったFXセクション!

▲2つの独立したFXバスを搭載しルーティングの柔軟性が向上

SERUM 2』のFXセクションでは、13種のエフェクト・プロセッサーと3種類のスプリッター・モジュールを搭載し、任意の順序で配置する事が可能です。また、これまで叶わなかったエフェクトの重ね掛けもにも対応。更に2つの内部FXバスが加わり、センドリターンによる拡張性の高い音作りが可能になりました。

エフェクトには新たに、IRデータを読み込み可能な空間シミュレーター「Convolve」、オーディオ信号から特定の周波数帯域を分割し、それぞれに対して独立したFXラックを適用する事が可能な「Splitter」、極性の反転やステレオワイドのバランスなど、様々なユーティリティ機能を提供する「Utility」などが加わり、既存のエフェクト群についてもブラッシュアップが施されています。

また、独立したプラグインとして付属する『SERUM 2 FX』は、DAW上で他のVSTインストゥルメントの音作りにも使用できます。お気に入りのエフェクトをSERUM以外のフィールドでも活用する事が可能です。

各セクションを一元管理するMIXERコンソールが追加!

SERUM 2』の大幅な拡張によって増えたモジュールや信号経路も煩雑になる事なく、一画面でコントロールするMIXERが実装されました。『SERUM 2』のみで音色作成からフレーズの作成、複雑なシグナル・ルーティングまでの全てがワンストップで可能となっています。

▲オシレーター、フィルター、バス、メイン、ダイレクトのバランス調整が可能

まとめ:『SERUM』が更なる進化を遂げた、至高のアップデート!

いかがでしたでしょうか。数々の追加要素とブラッシュアップにより、殆ど隙のないシンセとなった『SERUM 2』。出音の良さはさることながら、ユーザビリティの高さ、製品が持つコンセプト、そして洗練された完成度は、初代『SERUM』同様に多くのユーザー支持を集めそうです。

まだ走り出したばかりの『SERUM 2』ですが、近い将来『SERUM 2』から生まれたトレンドが、音楽シーンを賑わせるような事も夢ではないかもしれません。