

AIを相棒に。起業家兼作曲家のDani Karanyi氏が語る、AI時代のDTMトレンドとは。
ハンガリー・ブダペストを拠点に、「音楽制作における自由度と創造性を向上」を掲げるKARANYI SOUNDS。
彼らの洗練されたミニマムなデザイン、先進技術を組み合わせたクリエイティブなサウンドは、多くの音楽クリエイターを魅了しています。
今回は創設者Dani Karanyi氏に、KARANYI SOUNDS社設立の背景から、製品へのこだわり、そしてAI時代におけるDTMのトレンドを伺いました。
技術の進化が著しい現代において、音楽クリエイターの未来像に迫ります。
洗練されたデザイン、直感的なツール
– まずはKARANYI SOUNDS社設立の歴史と背景について教えていただけますか?
Dani氏:
KARANYI SOUNDS社は個人的なプロジェクトとして始まりました。
私は常に、創造的かつ直感的な音楽制作ツールを探していました。当社設立のきっかけは、「アナログシンセをどこでも使えるように」とオリジナルのソフト音源を作り始めたことです。
その後いくつかのソフト音源をブログで公開したところ、世界中のプロデューサーから肯定的な反応が得られたため、2020年に当社を正式に立ち上げました。
– KARANYI SOUNDS社のミッションは何ですか?
Dani氏:
私たちのミッションは、「世界中の個性的な音楽クリエイターのために、ユニークな音楽制作ツールを作り出すこと」です。グラミー賞を受賞した著名な作曲家から、趣味で音楽制作を楽しんでいる方まで、あらゆる音楽クリエイターに対して、専門知識不要の直感的なツールを提供しています。
– WEBサイトや製品のUI等、随所から美しいデザインが見られますが、どういったところからインスピレーションを受けていますか?
Dani氏:
ビンテージ・アナログシンセ、ブルータリズム、SF、日本とデンマークのミニマリズム、現代美術、モダンデザイン、リソグラフからインスピレーションを得ています。当社はデザインも音楽体験の一部と考えており、タイポグラフィなど、視覚的にも美しい製品づくりを目指しています。
『VAPOR KEYS』の美しいデザイン
AIを制作の相棒に、『CLOUDMAX BREEZE』
– 『CLOUDMAX BREEZE』は、GUI中央の抽象的なグラフィックが魅力的です。これにはどのようなコンセプトが込められているのでしょうか?
Dani氏:
『CLOUDMAX BREEZE』のグラフィックのコンセプトは、秋の夕暮れ時、海辺を散歩しているときに思いつきました。「穏やかなそよ風のように、ふわりと耳を通り抜けるボーカルサウンド」がコンセプトであり、製品名にはBREEZE(そよ風)を採用しました。
GUI中央の抽象的なグラフィックは、音の微細な変化を視認するために設計されています。そよ風に運ばれる花粉のような粒子が揺れ、色が変化することによって、ユーザーは聴覚だけでなく、視覚的にも音作りを楽しむことができます。
– 『CLOUDMAX BREEZE』にはAI機能が搭載されていますが、AIに対するKARANYI SOUNDS社の考えをお聞かせください。
Dani氏:
当社はAIを創造的な仲間と考えています。そして2025年の音楽制作における最も重要なトレンドは、制作をサポートする「アシスティブAI(支援型AI)」だと考えています。
「アシスティブAI」は、SunoやUdioといった楽曲生成AIとは異なり、音楽制作活動をノンストレスかつスムーズなものにします。AIのおかげで、ミキシング等の技術的な知識が無くとも、インスピレーションを直感的に表現することが可能となるのです。AIによって、クリエイターは創作活動自体をより楽しむことができます。
– 『CLOUDMAX BREEZE』を使用したミックスにおける、おすすめのワークフローがあれば教えてください。
Dani氏:
本製品の魅力は、リバーブ/EQ/サチュレーションといった複数のエフェクトを、一括で簡単にコントロールできるところです。本製品を用いることで、様々な種類のボーカルサンプルを、短時間で統一感あるミックスに仕上げることができます。
また収録中、エフェクトが乗った状態のボーカルサウンドを即座に確かめることもできます。AIが数秒でエフェクトを調整するため、収録作業を妨げることなく、ラフミックスを作成することができます。
– シンプルなデザインに複数の機能を統合するのは大変だったと思います。『CLOUDMAX BREEZE』の開発プロセスにおいて、パラメータやGUIなど、特に苦労した点や注力した点はありますか?
Dani氏:
特に苦労した点は、ユーザーの創造性を制限することなく、機能の複雑さをいかに隠すかということです。
そして特に注力した点は、主要な機能のみを洗練することです。開発の初期段階から製品のコンセプトを明確にし、プロジェクトを進行しました。製品開発は楽曲制作と似ており、膨大なアイデアを厳選し、それらをまとめていくことで、より良い成果物を完成させることができます。
本製品は、全てのエフェクトを一括で調整可能な中央のノブと、入力サウンドに合わせてAIが自動でエフェクトを調整する「CAPTURE」ボタンの2つの機能に焦点を当てています。
テープとチューブのサチュレーションを調整する「CRISP」ノブに関しては、開発段階では30種類用意していたサウンドモデルの中から、最も優れた1種類のみを採用しています。
– これまでに『CLOUDMAX BREEZE』を使用したユーザーからのフィードバックはいかがですか?
Dani氏:
ポジティブなフィードバックが多いです。
ユーザーは本製品のユニークなサウンドと、直感的な操作を気に入っています。単なるエフェクトに留まらず、「これ自体が楽器のようである」と話すユーザーもいました。
アンビエントのボーカルに過度な量のリバーブを適用したり、瞑想ポッドキャストのサウンドメイクに本製品を使用したりと、様々な用途で使われています。
「ツクル」をより楽しむために
– KARANYI SOUNDS社の将来のビジョンと計画をうかがっても良いですか?
Dani氏:
今後当社は、「アシスティブAI」により重点を置いていきます。
現在ソフト音源を中心に、現行製品のアップデート版を制作中であり、今年は新しいエフェクトプラグインの開発にも注力する予定です。また当社製品同士を、スムーズかつ直感的に組み合わせるツールの作成も検討しています。
– 最後に、このインタビューをご覧の皆様へメッセージをお願いします。
Dani氏:
AIに対してネガティブなイメージを抱くユーザーも一定数います。彼らの多くはAIを、「プロンプトから完成された曲、画像、またはビデオを生成するツール」と考えています。
しかし、当社のやっていることは全く異なります。当社は「アシスティブAI」の開発を通じて、より創造的な音楽制作活動を皆様に味わってほしいのです。
今後も皆様に、「インスピレーションを損なうことのない、没入感たっぷりの制作体験」を提供します。
本記事ではDani氏に、KARANYI SOUNDS社について、そしてAI時代におけるDTMのトレンドについて伺いました。
あなたもAIを相棒に、インスピレーションを損なうことなく、没入感あふれる制作を体験してみませんか?
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