【初心者/中級者必見】エレキギターの作曲&打ち込みテクニック【バッキング編】
大人っぽいムーディーなサウンドからエッジの効いたディストーションサウンドまで、ジャンルや場面によって様々な表情を見せる「エレキギター」。
メロディや伴奏など、楽曲においてあらゆる役割をこなすことができるこの楽器を味方にすることができれば、作曲時の選択肢が大きく広がります。
しかし、かつては打ち込みでリアルなエレキギターのサウンドを表現することは難しいとされてきたため、ギターが弾けないDTMerの中には今でも敬遠している方がいらっしゃいます。
そこで、強い人気を誇るロックでカッコいいギターサウンドを再現するうえで必要な作曲&打ち込みテクニックを全2回にわたりご紹介します。
前編となる今回は、コード演奏を主体とした伴奏、いわゆるバッキング編!
エレキギターだけでなく、他の楽器のフレーズを打ち込む際にも応用できる知識でもありますので、ぜひマスターしましょう!
[今回使用した音源]
- ギター特有のボイシングを使おう
- 不要な構成音は省略しよう
- ダウンストロークとアップストロークの違いを再現しよう
- 基本的な3つの打ち込みテクでリアルなサウンドに仕上げよう
- パワーコード
- ブリッジミュート
- アルペジオ
- カッティング
- まとめ
1.超基本!コードストロークの打ち込みテクニック
2.各奏法ごとの基本的なフレージング
昨今のエレキギター音源では、この章で解説する各テクニックを使用せずとも、リアルなサウンドを再現できる便利機能が標準装備となりつつあります。
しかし、DTMを行う上で必須の知識や考え方が詰まっていますので、必ず押さえておきましょう!
ギター特有のボイシングを使おう
ギターで演奏されるコードは、弦を押さえる位置によってそれぞれ固有のボイシングを持っています。
例えばCメジャーコードの構成音はドミソの3音ですが、以下のように抑える場所によって様々なボイシングで演奏することが可能です。
リアルなギターサウンドを追求したい場合は、実際に演奏される各コード固有のボイシングを調べて再現しましょう。
もちろん、実際には演奏できないサウンドを表現できるのが打ち込みの強みでもあるので、自由なボイシングで個性を発揮するのもOKです!
作曲初心者の方は、厚みのあるサウンドが得られるので、まずは実際のギターで演奏されるボイシングを試してみましょう。
不要な構成音は省略しよう
エレキギターは6本の弦が張られており、最大6音を同時に鳴らせます。
ディストーション・エフェクトで歪んだロックでカッコいいサウンドは、少ない音数では問題ないものの、6音同時に鳴らすとコードの輪郭が損なわれてしまうため、ノイジーなサウンドが欲しい場合などを除き、不要な構成音は省略するようにしましょう。
構成音を省略する際は、コードの明暗感を分ける第3音(ルート音の3度上の音、ドミソで構成されるCメジャーコードならミの音)を残した方が調性感がでてイイ感じになります。しかし、ロックやメタルなどでよく使用される歪みの強いサウンドでは第3音を入れると重たくなってしまうため、第3音を省略してルートと第5音を鳴らす「パワーコード」を使うことが多いです。
また、音数が多くて中低域が混雑している場合はコードの低い方の音を省略してスッキリさせるなど、楽曲全体のバランスを見ながらどの音を省略するか考えるとよいでしょう。
楽曲のミックスでうまくいかない場合、コードのボイシングを変えたり不要な音を省略するなど、作曲の工程まで遡ることで改善できることもあります。
ダウンストロークとアップストロークの違いを再現しよう
ピックを持った右手を下に振り下ろして弾くことをダウンストローク、上に振り上げて弾くことをアップストロークと呼びます。
ダウンストロークのときは、実際の演奏時と同じように低い音から高い音に向かって徐々にタイミングを遅くし、アップストロークの時は逆に高い音から低い音へタイミングを遅くすることで打ち込み臭さを軽減することができます。
基本的な3つの打ち込みテクでリアルなサウンドに仕上げよう
最後に、ギターだけでなくピアノやストリングスなど生音系の楽器を打ち込む際にも必要不可欠な3つの打ち込みテクニックで、リアルなサウンドに仕上げましょう。
ベロシティで強弱をつけよう
ギターのバッキングは、ドラムなどのパーカッションと同じく楽曲全体のリズムを作り出す役割も担っています。
ベロシティで強弱をつけることで、リズミカルなフレーズを構築することができます。
あえてタイミングをずらそう
実際の生演奏ではジャストタイミングで出音されることはなく、プロの演奏でも僅かながらタイミングのずれが生じます。
非常に細かな作業ではありますが、ちょっとだけタイミングをずらしてあげることで、リアルなサウンドに近づけることができます。
コードチェンジの間を作ろう
次のコードへ移るとき、実際の演奏では左手のポジションを変える際に僅かな空白が生まれます。
打ち込んだコードのノートのお尻を少しだけ短くするだけで、リアリティを得ることが可能です。
コードチェンジだけでなく、フレーズやパッセージの終わり部分に休符を挿入して一息入れる切れ目を作る手法は、作曲の基本的なテクニックです。
本章では、ロックでカッコいいバッキングフレーズを作るために必要な作曲&打ち込みテクニックを紹介します。
ギター音源では以下で紹介する奏法があらかじめ標準搭載されていることが多く、キースイッチを使用して奏法を切り替えながら打ち込んでいくのが基本となります。
パワーコード
前章でも少し触れた「パワーコード」は、3つの音で構成される基本的なトライアド・コードの真ん中の音を省略したコードです。
ロックでカッコいいフレーズを作るうえで必要不可欠なもので、コードの知識が無くてもパワーコードを平行移動するだけで多種多様なバッキングを簡単に生み出すことができます。
コードの一番下の音をオクターブ上で重ねることで、厚みを付ける手法もよく使われます。
パワーコードは基本的に2音の間を半音6個分空けますが、半音7個分空けることも可能です。
ブリッジミュート
「ブリッジミュート」は、ピックを持っている右手で弦の付け根に触れながら演奏し、ミュート感のあるサウンドを得る奏法です。
ブリッジミュートを使用しながらパワーコードを演奏することでサウンドにダイナミクスが生まれ、「ズンッ」という特徴的な音は楽曲に迫力とリズムを与えることができます。
ブリッジミュートを使用する際は強弱をつけるためコードの一番下の音だけを演奏するのが基本ですが、メタルなどでは力強さを出すために2音同時に演奏することもあります。
アルペジオ
アルペジオはコードの構成音を一音一音分散させて演奏する奏法です。
激しくコードを掻き鳴らすのもカッコいいですが、コードの美しい響きを味わえるアルペジオを使ったチルな展開を間に挟むことで、起承転結のあるドラマチックな展開にすることができます。
落ち着いた場面ではギターの打ち込み臭さが目立ちやすくなります。今まで説明した各テクニックをフル活用して丁寧に表現をつけましょう。
カッティング
各弦をミュートして歯切れのいいサウンドを生み出すカッティングという奏法は、リズミカルなフレーズを構築する際に役立ちます。
あまり歪ませずにコードの構成音の輪郭が見えるくらいの“クランチサウンド”で、大きな魅力を発揮する奏法です。
ちなみに筆者はカッティングのアーティキュレーションが搭載されているギター音源を持っていなかった頃、ギターループ素材のカッティング部分だけを切り抜いてギター音源のトラックと合わせることで、無理やりリアルなカッティングフレーズを再現していました。
理想のサウンドを得る、誰にも真似できないオリジナリティのあるサウンドを生み出すため様々な創意工夫を凝らす姿勢は作曲・DTMスキルを上達させるうえで重要です。「あの音源のサウンドが欲しいけど、高くて買えない…」という場面に遭遇したときに、今ある作曲環境で何とかして再現できないか試行錯誤してみると、自身のレベルアップにつながります!
生演奏と聴き分けのつかないリアルなエレキギターの打ち込みは、ピアノやドラム、ストリングスなどの楽器と比較してもかなり難易度が高いです。それゆえに様々な試行錯誤を凝らす必要があるため、ぜひトライしてDTMのスキルを大きく向上させましょう!
次回はカッコいいギターソロの打ち込みテクニックを解説する予定ですので、お楽しみに!
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