アナログ・モデリングの「究極」。往年のゲーム機&シンセの音色を実機レベルで奏でる、Plogue社製品5選!
レトロゲームのサウンドエンジンやFMシンセサイザーといった往年の音源が奏でる音色は、今の時代でも用いられるほど根強い人気を誇っています。浮世離れしたあのサウンドを楽曲内で鳴らせば、老若男女を問わずグッとくるスパイスとして作用してくれることでしょう。
しかし当時のハードウェアからの出音はアナログの音色であり、「サンプリング」や「エフェクトのかけ合わせ」といった従来の手法だけでは到底再現しきれない独自性や不規則性があります。なるべく近いものに寄せることはできても、(パラメーターの数が多い音源であればあるほど)完全に一致した音色を作ることは困難です。
Plogue社製品は、DACの挙動レベルでハードウェアを再現する、まさしく「アナログ・モデリングの究極」とも言えるソフト音源です。8ビットサウンドや80年代のチープなFMサウンドが生々しく蘇ります。
デジタルでの音楽制作が主流となった今、あなたの楽曲に予想外のサウンドをもたらしてくれる同社製品のソフト音源を見ていきましょう。
※各製品ページから、デモサウンドの視聴が可能です!
様々なコンピュータ、ゲーム機のサウンドを再現『CHIPSOUNDS』
『CHIPSOUNDS』は、アーケード機を中心とした初期のサウンドチップを広くカバーし、現在のDAW環境ではかえって困難な(不安定な)ピッチも表現できる8bitサウンドのソフト音源です。
搭載されたWAVE SEQUENCER(サブルーチン)を使用したなら、奇怪な装飾音符のついたフレーズをDAWの中で奏でられます。
制御可能な箇所が非常に多いのも特徴で、これ1つであらゆる8bitのテクニックや表現、果ては現実に存在しないチップのシミュレーションまで可能な、逸品のシンセサイザーと呼べるでしょう。
日本が生み出した名ゲーム機の音色が蘇る『CHIPSYNTH SFC』
『CHIPSYNTH SFC』は、1990年代の日本を一世風靡した家庭用ゲーム機のサウンドを再現したシンセサイザーです。デモサウンドを聴けばすぐに分かる「あの音」が、プリセットを切り替えているだけでも次々と聞こえてきます。
実機の構造を徹底的にエミュレートした再生方式を実現しているため、オリジナルの波形と比較した場合でも、1ビット単位で同一のものが出力される脅威の合致率です。
また実機でも用いられているサウンドファイルである「SPCファイル」の読み込みに対応しているので、ファイルを用意すれば実機と寸分違わぬ音色で演奏が可能。またオーディオファイルを取り込むことで、実機特有のエコー効果を付加して演奏することもできます。
FM音源の金字塔をソフト音源で!『CHIPSYNTH OPS7』
『CHIPSYNTH OPS7』は、FM音源の代表格とも呼べるYAMAHA「DX」シリーズをベースとしたソフト音源です。他のアナログシンセサイザーともまた雰囲気の異なる、良い意味で「リアルさ」と真逆の方向に振り切った特徴の音色は、1980年代の音楽シーンにおいて重要な役割を果たしました。
音色のリアルさはこれまでご紹介した製品と同様のため言及はしませんが、一般に「アナログシンセ(減算方式)よりも複雑」とされているFM音源のインターフェースを整理し、ソフト音源ならではのGUIに落とし込むことで直感的なインターフェースを実現しています。さらにはSysExバンクファイルのロードにも対応しているため、実機のパッチバンクをそのままロードして使用できます。
さらに拡張モードにすることで、「DX」シリーズの他にもTX81Z、SY77、OPL3の音色を演奏できます。
16bitゲームコンソールのきらびやかな音色を演奏『CHIPSYNTH MD』
『CHIPSYNTH MD』は、16bitで奏でられる1980年代のゲームコンソールの音色に特化したソフト音源です。
『CHIPSYNTH OPS7』同様にFM音源ですが、ゲーム内でのBGMに向いた激しめでキラキラした音色のため、テンポの速い現代の音楽での活用シーンも容易に想像できます。
さらに嬉しい機能として「DACモード」が搭載されており、任意の波形を実機の質感で発音できる機能が搭載されています。また、リズムループをスライスして鍵盤へマッピングする機能も持っているので、1つのプラグイン内でドラムキットを組むこともできます。
強力なポータブルFM音源をシンプルなGUIで!『CHIPSYNTH PortaFM』
『CHIPSYNTH PortaFM』は、YAMAHA「PSS」シリーズをモデルにしたソフト音源です。温かみを感じる中域寄りのサウンドが特徴でありながら、かなり強烈な音色も作れるのが特徴と言えます。
通常の音階を伴う演奏とは別にドラムの演奏・音作りを行うためのコアを搭載しており、通常の演奏とレイヤーすることで独特なアタックの音色を作ることもできます。
これまで紹介してきたプラグインは全てそうですが、実機を再現する過程で独自のステップ・シーケンサーが実装されています。任意のパラメーターをアサイン可能なため、周期的に変化するサウンド・エフェクト的な音色の作成にも使えそうです。
まとめ
界隈に精通しているならば、見ればそれとわかる各インターフェース。(一般的な)PCで再現可能なすべてを注ぎ込み、ガチな方にも、ちょっと味付けで使ってみたい人にもバッチリ。
この手の音源やエフェクトの多くが、波形の擬似的再現、事後処理的なビットクラッシュ、あるいは実機のサンプリング止まりなのと異なり、補間アルゴリズムやデータの格納、DACの挙動など工学的側面から徹底分析し、一つの音響現象として再生されます。
この圧倒的な製品のクオリティに対して、1万円前後とソフト音源としてはかなりお手頃な価格になっています。この機会に是非、チップに人生を捧げた開発者の魂を味わってみてください。
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