「他の音源との馴染みが良い、痒い所に手が届くオーケストラ音源です。」/ 『TOKYO SCORING STRINGS』 Review – 祖堅正慶 氏
室屋光一郎ストリングスをキャプチャーし、そのサウンドを世界に届けるために開発された『東京スコアリング・ストリングス』。今回は、『ファイナルファンタジーXIV』での作曲/効果音等、サウンド面の全てを担当したスクウェア・エニックス所属のサウンドディレクター“祖堅正慶”氏にレビューをいただいた。
■『東京スコアリング・ストリングス』の良さ
録り音自体がデッドな印象なので様々なジャンルの楽曲で使用しやすいです。幅広いジャンルを制作していると、アンビエント入りのマイクポジションがメインの音源だと、使い辛い事が多々あります。昨今はIR等、ウェットなキャラクターのプラグインの進化が目ざましく、デッドな録り音に空間エフェクトをかけて仕上げる過程が手軽に出来る時代になりました。そういった意味でも、現代の制作環境にマッチした音源であると思います。
『TOKYO SCORING STRINGS』収録風景より。
MIDIでコントロールできる音色の幅がかなり広いため、エクスプレッションマップへの相性が非常に良いです。また、ノート同士の繋がりや、立ち上がりも自然なので、制作スピードを求められるような現場に対して非常に重宝する音源となりそうです。ベロシティスイッチが用意されてる点は、痒いところに手が届いている印象を受けます。
ビルトインされているエフェクトは、オーケストラ音源を扱う上で必要な要素が全て揃っている印象。オーケストラ音源にありがちな、多くのCPUを使う重めの動作は全く感じず、キビキビと軽快に動作する点は非常に良いです。また、GUIサイズが大きいのでアンサンブル前提で複数音源を起動した際、下段の方に立ち上がった音源を調整する際、そこそこスクロールしなくてはならない点が若干気になるものの、画面上に必要なエディット要素が立ち上がっているので視覚的に理解しやすいです。
■総評
大規模編成に特化したオーケストラ音源は昨今多数存在しますが、中~大規模編成で扱いやすく痒い所に手が届く音源はなかなかありません。他の音源との馴染みもよいので使い勝手が良い音源です。デッドな録り音でアンサンブル等の制作は得意な印象なので、仕上げ段階でウェット部分を調整する現場が多い方にとっては非常に重宝する音源だと思います。
演奏者を集めてレコーディングを行う事が難しくなっている昨今。今後は『東京スコアリング・ストリングス』のような人間味あふれるストリングス音源が重宝されていくでしょう。
これからも引き続きご注目ください。
- メーカー:IMPACT SOUNDWORKS
- カテゴリ:ソフト音源
サウンドディレクター。スクウェア・エニックス所属。これまでに『ロードオブヴァーミリオン』シリーズ、『ナナシノゲエム』シリーズ等、数多くのゲームサウンドの制作に携わり、『ファイナルファンタジーXIV』では作曲、効果音等、音に関わる全てを担当している。
『ファイナルファンタジーXIV』最新オリジナル・サウンドトラック
『ENDWALKER: FINAL FANTASY XIV Original Soundtrack』
2022年2月23日(水)リリース
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