【製品ピックアップ】音色選びで雰囲気マシマシ！シネマティック音源10製品をご紹介。

2021年10月15日 18:05 by iro

時には興奮に強く手を握りしめ、時には感動の涙があふれ、時には見たこともない光景に心を躍らせ、時には切なさに胸を締め付けられる。観る者に様々な体験を与えてくれる“映画”の力は、その映像の力もさることながら、映像やストーリーに寄り添い引き立てあうサウンドトラックがあってこそ。そんなサントラもパソコン1台で作ることができるようになった現在、今回はサントラ制作に役立つ「シネマティック音源」をフィーチャーします。

そもそも「シネマティック音源」って？
『ORCHESTRAL ESSENTIALS 1』
オーケストラ系シネマティック音源
『ALBION NEO』
ハイブリッド系シネマティック音源
『GRAVITY』
『SIGNAL』
イメージ特化系シネマティック音源
『CELTIC ERA』
『HAUNTED SPACES』
リズム系シネマティック音源
『DAMAGE 2』
コミカル系シネマティック音源
『COLOURS: ANIMATOR』
『SHIMMER』
『FLATULUS』
まとめ

そもそも「シネマティック音源」って？

世界観やコンセプチュアルなテーマを色濃く反映した楽器や音色を収録したソフト音源やライブラリを「シネマティック音源」と呼んでいます。メロディやアレンジが重要なのはもちろんですが、楽曲のテーマに寄せた音を選ぶことでより一層ムードを高めることができます。

シネマティック音源のタイトル数はどんどん増えています。例えば以下は、ドラゴンが舞い騎士が駆ける”ファンタジー”の世界をテーマにしたBEST SERVICE社のシネマティック音源、『ERA II MEDIEVAL LEGENDS』のデモムービー。

“ファンタジー”の解釈にもいろいろありますが、この製品では英雄一行の旅路を描いたセピア色のフィルターがかかったような作品にピッタリ（スタッフの主観です）な、中世・ルネサンス期の貴重な古楽器が集められています。

また、以下の動画はProjectSAM社のオーケストラ音源『SYMPHOBIA 2』のデモムービー。

収録楽器はオーケストラ編成に準じていますが、これもシネマティック音源の一つ。”全〇が震撼”しそうな、いい意味でケレン味たっぷりの大編成ド迫力アレンジに特化した音になっています。

このように、内容でひとくくりにはできない様々なシネマティック音源の中から、10タイトルをピックアップしてご紹介します（カテゴリ名や分類はスタッフの主観となりますのであしからず）。

オーケストラ系シネマティック音源

ProjectSAM『ORCHESTRAL ESSENTIALS 1』

大迫力のサウンドを凝縮したオーケストラ音源！

『ORCHESTRAL ESSENTIALS 1』は、大迫力で見る者／聴く者を圧倒するタイプのシネマティック・オーケストラ音源。ProjectSAM社の人気音源「Symphobia」シリーズなどから、ストリングス／ブラス／ウッドウィンズ各セクションにパーカッション、ピアノ／オルガン、そして緊迫感やミステリアスさを演出するドローンやライザーなど”使える”音を厳選した製品。88鍵にステージ上の全てを閉じ込めた「FULL ORCHESTRA」インストゥルメントはフルオーケストラの各楽器がマッピング／レイヤーされていて、ざっくりとデッサンを仕上げる際にも便利。言葉は悪いですが適当にコードを押さえるだけで笑ってしまうほど「ぽい」音になってしまいます。ちなみに、古き良き欧米アニメーションで聴けるようなコミカルな楽曲にも意外とマッチします。ぜひデモソングを聞いてみてください。

SPITFIRE AUDIO『ALBION NEO』

少人数による落ち着いた演奏を収めた、寒色系オーケストラ音源

『ALBION NEO』は、映画のサントラというとオーケストラによる楽曲を想像される方も多いと思いますが、この『ALBION NEO』はAIR Studiosでサンプリングされたストリングス、ウッドウィンズ、ブラスのセクションを収録したシネマティック・オーケストラ音源です。前作の『ALBION ONE』が100人を超える大規模なオーケストラ編成だったのに対し、この『ALBION NEO』は幾分小規模なチェンバーサイズのオーケストラ・ライブラリとなっています。そのため、一音一音が鮮明で、大編成オーケストラがそぐわないようなテレビ番組やドラマなど、オールマイティに対応できます。身の回りで起きる不可解な出来事を描くようなミステリーなどにも合いそう。また、オーケストラ音色とマッチするシンセサイザーのインストゥルメント”STEPHENSON’S STEAM BAND”を収録し、流麗なオーケストレーションに留まらないトラック構築が可能です。

ハイブリッド系シネマティック音源

HEAVYOCITY『GRAVITY』

現代（いま）のニーズに応える、最新型シネマティック音源

『GRAVITY』は、傑作シネマティック音源『EVOLVE』によって、その存在を確固たるものとしたシネマティック音源の雄、HEAVYOCITY 社による現代のスコアリングに対応したシネマティック音源。映画やドラマ／ゲームのトレーラー楽曲などに必須となっている“ヒット”や“ライザー”、“フーシュ”など多数収録。「インターステラー」「ゴーン・ガール」「GODZILLA」などを手がけたサウンドチームによるハイクオリティなサンプルをレイヤーさせ、エフェクトをかけ、無数のサウンドを生み出します。サウンドを加工するエフェクトや機能も満載。ボリューム、パン、ピッチそれぞれ個別のシーケンスでオートメーションさせてシンプルなパッドを不穏に蠢かせることも。また、『GRAVITY』のインターフェース（画面）は、映画「アベンジャーズ」などの作品内に登場するUIデザインをデザインしたチームによるもの。ソフトの見た目で制作のモチベーションも変わってきますよね！

OUTPUT『SIGNAL』

「パルス」で紡ぐ次世代劇伴シンセ！

『SIGNAL』は、世界で最もパワフルなパルス・エンジンを搭載し、アナログ～デジタルシンセや生楽器のサウンドを2つ重ねて合成。さらに人間の脈拍のような“パルス”を掛け合わせ、脈動するサウンドを生み出すシネマティック・シンセサイザーです。サスペンスなどの現代劇や、SFにマッチしそうなサウンドです。収録しているプリセットの数は500以上！ディレイ味のあるプラックサウンドや、サイドチェインをかけたようなスーパーソーなど汎用性の高い音も多く、リリース当初EDM界隈のトラックメイカーからも密やかな支持を集めた製品。この手の製品にしては大きい40GB（非圧縮時）に及ぶサンプルを収録し、レイヤーさせるサンプルの組み合わせだけでも膨大な種類のサウンドを生み出します。パルスは最大で4種類を併用可能で、まさに脈動するサウンドをデザインできます。

イメージ特化系シネマティック音源

BEST SERVICE『CELTIC ERA』

伝統的なケルト楽器をコレクションしたシネマティック音源

『CELTIC ERA』は、日本でも人気の高いケルト音楽の伝統的な楽器を集めた音源です。独特の音色を持つIrish Whistle やバグパイプの一種Uilleann Pipes、ポロンポロンとした音色に癒されるCeltic Harp などメロディを奏でる楽器から、ケルト音楽独特のリズムに沿ったパターンを収録するパーカッションやアコギも収録。尚、先にご紹介した『ERA II MEDIEVAL LEGENDS』を含む「ERA」シリーズの特徴として、管楽器それぞれの特徴をつかんだ奏法や装飾音を収録していてレガートがとてもなめらか！シリーズ製品の『ANCIENT ERA PERSIA』も、西アジア～中東地域に伝わる笛のニュアンスがよく出ています。また、「ERA」シリーズには、パッドやアンビエンス、ハープ、ベルなど、製品コンセプトに沿った複数の音色を重ねてデザインされた幻想的なサウンドスケープが数十種類収録されています。重ねられている音一つ一つのパンや音量にオートメーションを割り当てて操作できるため、サウンドスケープのパッチ一つで動きのあるムード作りが出来てしまいます。

SONICCOUTURE『HAUNTED SPACES』

世界各地に宿る、過去の気配を奏でるシネマティック音源

『HAUNTED SPACES』は、フィールドレコーディングで録音された環境音をミックスしてモジュレーションさせることによって、その空間を奏でるシネマティック音源です。フィールドレコーディングの第一人者であるクリス・ワトソン氏が個人的なプロジェクトとして128箇所でフィールドレコーディングを行った環境音が収録されています。XYコントローラをベースにした「キューブ・コントローラ」を用いて、それらのサンプルにカスタムシンセ、アコースティック、パーカッションなどのサウンドを重ね合わせて4つの異なる波形を縦横無尽に行き交い、ドラマティックなアンビエンスを生み出します。収録されている環境音は、大寺院、冷戦時代の基地、放棄された銀鉱山、発電所、大聖堂、水中トンネル、荒廃したアートギャラリー、マオリ埋葬洞窟などなど、文化的であったり宗教的であったり意味を持つ場所で録音されたもので、その歴史を演奏するといっても過言ではありません。プリセットのパッド一つをとっても、シンセで作ったパッドとは違う奥行きや空間を感じさせる音になっています。

リズム系シネマティック音源

HEAVYOCITY『DAMAGE 2』

破壊力に満ちた、シネマティック・パーカッション音源

『DAMAGE 2』は、腰が据わった重厚感たっぷりのパーカッション・アンサンブルや、エッジの効いたリズムループなどを収録した極悪パーカッション音源。映画の予告のような迫力勝負から焦燥感を煽るような演奏が得意な音源です。複数サイズのグランカッサ / 太鼓 / バスドラム、スネア／タム／エスニックドラムのアンサンブル、シンバル、ゴミ箱、ポールなどなど、叩いて美味しそうなものを片っ端から叩いた結果、約60GBに及ぶワンショットやループが詰まっています。収録内容が豊富なだけではなく、36個のキーにお好きなソースを割り当ててアンサンブルを構築したり、最大36個のループを重ねてオリジナルのループを作成したりと機能面も充実。HEAVYOCITY 製品お馴染みのコンプレッサーやサチュレーションなどの効果を1つのノブでコントロールするPUNISH エフェクトには、サウンドの汚し具合で使い分ける3つのモードを用意。プリセットも合計200種以上用意されているので、まずはプリセットを色々と読み込んでザッピングしてみるのもアリです。ギタリストの方ならループからインスパイアされてギターのリフが浮かんでくることもありそう。

コミカル系シネマティック音源

PROJECT SAM『COLOURS: ANIMATOR』

コミカルなアニメーションに特化したシネマティック音源！

『COLOURS: ANIMATOR』は、古き良きコミカルなアニメーションやゲーム、コメディ作品などにフィーチャーしたソフト音源。ダークやシリアスな雰囲気に寄りがちなシネマティック音源の中では、比較的珍しい存在です。製品ページのデモソングやデモムービーを視聴いただければ一目瞭然、世界一有名なネズミさんをはじめとするアニメ作品の数々や、演技にあわせて観客の笑い声が聞こえるシットコム形式の名作を思い浮かべる方も多いでしょう。（バス）クラリネット、バソン、トランペット、トロンボーン、ヴァイオリン、コントラバス、ピアノ、ハープ、パーカッションなどオーセンティックなコメディ作品でよく聞かれた楽器を収録し、一部楽器にはいざ入力しようとすると難しいランやトリルなどのアーティキュレーションやフレーズ、エフェクトが豊富に収録されています。「COLOURS」シリーズには他にもオーケストラ・ランに特化し、4度から4オクターブまでのランを収録した『COLOURS: ADAPTIVE RUNS』もあり、『COLOURS: ANIMATOR』が琴線に響いた方は是非こちらもチェックしてみてください。

SOUNDIRON『SHIMMER』

魔法や夢をテーマにした幻想的なライブラリ！

『SHIMMER』は、夢の世界を描く463種類のキラキラとしたパーカッシブなサンプルに加え、FX、スティンガー、ライザー、豪華なアンビエント・パッドを収録したコレクションです。本製品のメーカーSOUNDIRON 社のラインナップの中でもかなりの人気タイトル！ビンテージのトイシンセ、チャイム、ベル、ホイッスル、シェーカーなど、厳選されたサウンドを基にデザインされています。FX的なサウンドがメインとなっており、この手のサウンドは効果音パック等に収録されていることが多いのですが、KONTAKT で操作できる音源であることも強みの一つ。ゲームやアニメ、アプリの効果音制作でも活躍しますが、クロマチックに演奏可能なパッチも用意されているのでメロディー演奏など音楽的な演奏にも使用可能。シーケンサや多数のパラメータ。エフェクトが用意されているので、音源としての機能も充実です。

【ご注意】本製品の使用には、KONTAKTフルバージョン Ver5.5.2以降が必要です。（KONTAKT PLAYERには対応していません）

SOUNDIRON『FLATULUS』

純度100％！「おなら」特化型KONTAKT専用ライブラリ！

『FLATULUS』は、人が発する最もポップでキッチュな音色である「おなら」を奏でるライブラリです。まずは以下のデモソングをお聴きください。シネマティック音源と呼んでよいのか若干審議ではありますが、SOUNDIRON社WEBサイトで”Cinematic effects”と記載がありましたのでこちらでご紹介します。収録されている「おなら」は、熟練したエンジニアとプロデューサーのチームによって精緻にサンプリング / 調整された純度100％の生音。ドライなおならからちょっとウェットなおならまでバリエーションも豊富です。気に入った「おなら」はクロマチックに演奏することも可能。アンビエンスやサブシンセを重ね、充実したサウンド・シェーピング・コントロールで音作りを追い込むこともでき、しっかりとまじめな機能を搭載しています。音の素材が何なのかは別として、ボディパーカッション的な音ネタとして使えるものになっているのではと思いますがいかがでしょうか。

【ご注意】本製品の使用には、KONTAKTフルバージョン Ver5.5以降が必要です。（KONTAKT PLAYERには対応していません）

まとめ

映画音楽では従来のオーケストラ楽器の他、現代的な楽曲や身近な音に対しても触手を伸ばしています。それに呼応するようにシネマティック・ライブラリも加速度的に多様性を拡げており、本記事でもその一端を垣間見ることができたのではないでしょうか。今回はソフト音源とKONTAKT フォーマットのサンプルパックからご紹介しましたが、オーディオファイルを収録する一般的なサンプルパックにもシネマティックなタイトルが多くラインナップしています。

CINEMATIC ジャンルのサンプルパック製品一覧

もちろん、シネマティック音源はサウンドトラック制作にしか使ってはいけないということはありません。個性的なタイトルの中から是非ビビっとくる一品を見つけてください！

シネマティック系ソフト音源製品一覧