【製品ピックアップ】sonible社『smart:EQ 3』で、人工知能を使った革新的なイコライジングを。
SONICWIREでは、スタッフがおすすめの製品をピックアップして、製品の特徴や機能の紹介をあらゆる面からご紹介する「製品ピックアップ」記事を毎週公開いたします。
SONICWIREスタッフならではの、製品ページでは見られないような機能や活用法をご紹介。今まで巡り会えなかったフレッシュな製品に出会えるチャンスかも?
幅広いラインナップの中から毎週どの製品が選ばれるのか、是非ご期待ください!
さて今回ご紹介する製品は、かねてより人工知能(AI)を使ったプラグイン・エフェクト「smart」シリーズで有名なsonible社より、先日発売になった『smart:EQ 3』。
製品の開発に合計9000時間、400時間のミーティング、そして45kgのコーヒーを費やした、同社きっての労作となっております。
その名が冠す通り「スマート」な「イコライザー」。前バージョンの『smart:EQ 2』も楽曲を数秒聴いて分析するだけで、その音に沿ったイコライジングを自動でしてくれる製品として多くの方にご愛用いただいていました。
今回の大型アップデートにより新製品としてリリースを果たした『smart:EQ 3』。複数トラック間のミックスバランスを調整する注目の新機能、「グルーピング」機能についても記事の後半で解説していますので、是非最後までご覧ください!
超精密&柔軟性の高い自動イコライジングは健在
上の画像の白いカーブを見ても分かるように、超精密なイコライジングを行っています。人間ではまず不可能な処理を数秒でいとも容易く適用してしまいます。
使い方は簡単で、プロファイルの中からエフェクトを適用したい音源に合わせた設定を選択。ピアノなら「Piano」、ボーカルなら高音・低音の度合いに合わせて「Vocal High」または「Vocal Low」が最適です。プロファイルを選択したらレコードボタンをクリックして、DAWでその音源を再生。あとは『smart:EQ 3』が数秒でそのサウンドを分析し、人工知能が予め学習している音色をゴールとしてイコライジングを行います。
処理結果が気に入らなければ、任意の箇所をダブルクリックすることでユーザーが操作できるノブが出現します。このノブを使用して自分の理想のサウンドを作り上げたら、「save」ボタンをクリックしてオリジナルのプロファイルを保存。
次回からはそのプロファイルを選択してレコードボタンをクリックすると、予め保存しておいた「自分の理想のサウンド」を目指してイコライジングをしてくれます。
また緑色のウェイティングカーブについているノブを上下左右に移動すると、どの箇所に対して重点的に処理を適用するかという重み付けができます。
複数の曲で毎回同じ人のボーカルのイコライジング処理をする場合や、全体的な音のバランス(トーナルバランス)を複数の曲である程度揃えたい場合などに使える機能です。トラック単体に対しての使用はもちろん、マスタートラックで他のプラグイン・エフェクトと併用することで、安定したマスターEQとしても活躍が見込めますね。
通常のEQとしてもご使用いただけます
通常のEQとして本製品を使うことのメリットとして、制御可能なイコライジング設定が非常に細かいことが挙げられます。手動で使用する場合でも、最大24バンドのイコライジングポイントを設定できます。人工知能による自動分析と組み合わせることで、目指しているサウンドがより簡単に実現できることでしょう。
注目の新機能「グルーピング」
例えばボーカルものの曲だと多くの場合「歌」が最も聴きとりやすいように調整されていますが、その次に目立つのがドラムなどのアタックの強い音、その次はギターなど空間を埋める迫力のある音やベース、ピアノなど…。
人によって差はあれど、楽曲が一番良く聴こえるミックスバランスが存在します。
ミックスバランスを自動調整したいトラックすべてに本製品をインサートし、いずれか1つのトラックでプラグイン画面左上の「join group」を選択。任意のグループ名を入力し、「create」をクリックします。
グループを作成したら、「Add instance」のエリアからインスタンス(トラック)をドラッグ&ドロップします。1つのグループには6つまでのインスタンスを追加でき、音の優先順位に従って、「L1」~「L3」までのレイヤーにインスタンスを配置します。レイヤーの設定後は、各トラックのドロップダウンメニューから通常のラーニング同様プロファイルを選択し、製品ロゴ右側のレコードボタンをクリックすると、全トラックの分析が同時に開始されます。
上の画像の場合は、リードボーカルを一番目立たせ、その次にバックボーカルとドラム、最後にキーボード、エレキギター、ベースといったようにミックスバランスを調整しました。
ここまでの説明の流れは以下の動画でもご確認いただけますので、ぜひご覧ください。今回はパラデータの全トラックに『smart:EQ 3』を適用し、さらにそれらを大まかなバス・トラック(ボーカル/ドラム/ギター/ベースなど)に分けた上で、バスに対してもグルーピングを適用してミキシングを行いました。
動画内で使用した楽曲: Link to the Star (NT Version) / BeeP feat. 初音ミク (Twitter / Webサイト)
いわゆる「帯域被り」や、優先度の高い音をマスクしている他の音の制御を自動で行ってくれるため、ミキシングの土台作りの強い味方になりますね。
ミックスのバランスがイメージと異なったり必要な音が打ち消されすぎている場合には、レイヤーの順番を並び替えたり、Group Impact設定の数値を調整することで、トラック同士を考慮したイコライジングの度合いを調整できます。
その他の新機能
- Dynamic Adaption
これまでのsmart:EQ製品は、ラーニングの際に流した楽曲の箇所に応じて分析・生成されたEQカーブを固定で適用するものでした。しかしバージョン3で追加されたこの機能では、再生中のサウンドに合わせてリアルタイムでイコライジングをし続けることが可能になりました。
ウェイティングカーブを右クリックして出てくるウィジェットで「Dynamic」の数字を大きく設定するほど、リアルタイムで波形が処理されるようになります。アタックからリリースまで一貫性のあるサウンドを保ちたい場合に有効な設定ですね。
またウェイティングカーブは上の画像のように1インスタンスで複数作成できるため、特定の帯域にのみリアルタイムのイコライジングを適用し、その他の帯域は変化させないといった複雑な処理も可能です。
- Filter Widget
EQカーブ上の任意のノブを右クリックすると、フィルターやイコライジングの設定を行うウィジェットが表示され、クイックに設定を変更できるようになりました。
まとめ
今回はsonible社の『smart:EQ 3』の基本的機能、また新機能についてご紹介しました。
人工知能を使ったプラグイン・エフェクトは数多くのデベロッパーから発売されていますが、「レイヤー」として指定した音の優先順位に沿って複数のトラックへ自動的に施されるイコライジング処理は、これまでに例を見ない試みと言えるでしょう。
同社製品自体のポテンシャルはさることながら、独自の発想と技術力を誇るが故の今回のリリースだと感じます。今後のアップデートや新製品、また業界全体の今後の動向にも期待が高まります。
folder NEWS, SONICWIREニュース, クリプトンDTMニュース, ピックアップ, プラグイン・エフェクト, 活用方法