「最小限の労力でアコギのサウンドを導入できる即戦力」 UJAM『VIRTUAL GUITARIST – AMBER』製品レビュー:阿瀬さとし氏(Cojok / Smash Room)
作曲家/マニピュレーター/ギタリストとして活躍する阿瀬さとし氏(Cojok / Smash Room)より、UJAM社『VIRTUAL GUITARIST – AMBER』のレビューをいただきました。
2020年9月1日(火)まで『VIRTUAL GUITARIST – AMBER』プレゼントキャンペーンを開催中です。実際にインストールして30日間動作が可能な無償体験版(デモ版)も公開されています。ぜひ体験版を触りながら、阿瀬氏が語る『AMBER』の魅力をご覧ください!
UJAM社よりリリースされてる『VIRTUAL GUITARIST – AMBER』(以下、『AMBER』)。簡単操作かつリアルなサウンドで定評のあるVirtual Guitaristシリーズのアコースティック版でストラム(ストローク奏法)に特化した音源となってます。今回初めてこの製品に触れる筆者ですが、コンポーザーでありギタリストでもあるので両方の視点からレビューできればと思っております。
『AMBER』はDAWのインストゥルメントトラックより起動します。シンプルなUIで、プリセット/マイク&ピックアップのセレクター/エフェクト・パラメーターなど全ての操作が一つの画面で行えます。そして、それらが決して乱雑にならず視認性に優れたレイアウトとなってますね。
ウインドウ上部のPRESETより様々なサウンドと演奏スタイルを選べます。ジャンル別にカテゴリー分けされているので目的のサウンドへ素早くアクセスできます。その下のSTYLEではPRESETで選んだサウンドはそのままで演奏スタイルのみ変更が可能。演奏のさせ方は簡単で鍵盤C4~E6で和音を押さえると、そのコードを認識しトリガー再生されます。サウンドですがマルチサンプルをMIDIシーケンスで鳴らしてるのではなく実際にプレイヤーが弾いた演奏が収録されているので非常にリアル。もちろん演奏パターンはDAWのテンポに同期されます。
Style Phrases(C3~A#3)ではSTYLE毎にアサインされるフレーズの切り替え。そしてCommon Phrases(C#1~B2)では全STYLE共通のフレーズがアサインされていて、ここではニュアンス違いの白玉やシンプルなコード弾きのフレーズなどが割り当てられてます。このCommon Phrasesが非常に扱いやすく、数多く収録されている演奏スタイルのセレクトで悩んだ時は、先ずCommon Phrasesを試してみると良いかと思います。プリセットのロードも非常に早く、しかも動作も軽いのでコード情報だけDAWに入力し、再生しながらどんどんとプリセットやスタイルを切り替えていき楽曲にマッチする演奏を選ぶことも可能ですね。
各コントロール部も見ていきましょう。
SOURCEノブでは収録されたサウンドソースとなるマイク、ピックアップ、そして両者のミックスを選択できます。そのサウンドですが、マイクは若干オフマイクで録られたようで距離感と空気感があり、ピックアップでは中域が強調され、とても太い印象。Mixを選ぶと両方の特徴が上手く合わさりマスキングされる帯域も無くとても心地よく鳴ってくれます。さらにSplit L/Rを選ぶとマイク:Lch/ピックアップ:RchとでPAN振りされるモードとなっており、立体感のあるサウンドが得られます。
POSITIONノブではピッキング・ポジションの移動ができます。実際にギタリストが演奏する際はネック側からブリッジ間でピッキング位置を変えていき、曲中でトーンをコントロールしてます。『AMBER』ではオートメーションを使えばそのニュアンスを再現することが可能で、動的かつリアルなサウンド作りが出来そうです。
TONEノブでは段階的にサウンドの質感調整ができます。Flatで未処理のマイク/ピックアップのサウンドとなっており、ここを基準として上方向Full→Warmへと切り替えていくと柔らかく温かみが増していき、下方向Bright→Crispでは中低域が抑えられてハイエンドが強調され広がりも加わるようです。どのサウンドもEQで無理やりカット/ブーストした感じではなく、とても自然な質感となっていますね。
SHIMMERノブを右へ回すと高域の明るさとアタック感が増していきます。楽曲の中でストラムの倍音とリズムを強調しグルーブを加えたい時など役立ちそうです。
Speedスイッチでは演奏の速さを0.5倍と2倍に切り替えができ、ここもオートメーション化できます。例えば曲セクションの切り替わる前半小節のみ2倍にするとフィルっぽくなったり、フレーズとの組み合わせでアクセントを加えることが出来ます。
そしてSwingスライダーとFeelスライダーでは演奏のノリを自在にコントロールできて、ここが非常に嬉しいポイント。音源の演奏を楽曲に当ててみてサウンドやフレーズはバッチリだけどノリが他の楽器と微妙に噛み合ってないってことが良くありますよね。その際はオーディオ化して波形でエディットすることになるのですが、その手間がこの2つのスライダーで解決できそうです。ここもまたオートメーションで変化をつければ独自のグルーブを生み出せそうです。
『AMBER』は、お手軽アコギ音源とのことですがサウンドもしっかりとしていて、前述したPOSITIONやTONEなどのモデリング部の精度も非常に高いです。最小限の労力で高品位なアコースティックギターのサウンドを楽曲へ導入できる即戦力となる音源ですね!
2006年アコトロニカ・ユニットCojok(コジョ)結成。2010年、音楽プロデューサー佐久間正英氏に見いだされ、氏主催のレコード会社より作品をリリース。その後はタイムドメインスピーカーを用いた10.2chサラウンド・コンサートの主催、サウンド&レコーディングマガジンによる企画「Premium Studio Live Cojok+徳澤青弦カルテット with 屋敷豪太、根岸孝旨、権藤知彦」に出演。そこから頭角を現し、数多くのCMやゲーム音楽などの作編曲を担当。2019年は映画「おかえり、カー子」(湯浅典子監督、小島梨里杏主演)の音楽を担当。主題歌を飛澤正人氏が3Dミックスを手がける。東京スクールオブミュージック渋谷校ではソフト音源を使用したサウンド構築術やAbleton Liveコースの講師も務める。
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