音響系のサウンドに溶け込み、奥行きと生命感を与えてくれます。

Presented by SONICWIRE

音響系のサウンドに溶け込み、奥行きと生命感を与えてくれます。

今回ご紹介するのはSPITFIRE AUDIOのALBIONシリーズ5作目にあたる『TUNDRA(凍原)』。"北欧の氷河からインスパイアされた"とうたわれているオーケストラ音源です。本製品は僕が手がける壮大なエレクトロニカやアンビエントのサウンド・トラック作りで無くてはならないツールです。TUNDRAはSigur Rósなどに代表される音響系のサウンドに溶け込み、奥行きと生命感を与えてくれます。

それでは、実際にそのサウンドを聴いてみてください。僕の曲でオーケストラ音源にTUNDRAをメインに使用しています。ストリングスとブラスはEQ処理は極力行わずリバーブも製品に搭載されているものです。また、ピアノ音源はSPITFIRE AUDIOとオーラヴル・アルナルズとがコラボで開発した『OLAFUR ARNALDS STRATUS』を使用しています。

ALBION V TUNDRA デモトラック

良い意味で温度感がなく、冷たい光沢を放っているストリングス。

図1

中核となるストリングス"Icy Strings"は良い意味で温度感がなく、冷たい光沢を放っています。収録の際に奏者は弓に松脂を塗らず、とても静かに演奏してスタジオ内のアンビエンスよりも楽器自体の音を出来るだけ繊細にキャプチャーしたとのこと。それにより、大編成のストリングスですが音が塊にならず、全てのプレイヤーの演奏が見えるようで、音の消えゆくリリース部分も非常に美しく緊張感のあるサウンドとなっています。中低域にスペースを作り光沢と奥行きを与える為にビオラを除外。強化されたチェロ、コントラバス・セクション(Strings Low)とバイオリン・セクション(Strings High)からパッチが構成されています。ここが非常に僕にとっては扱いやすくパッド・ストリングス的な感覚で直感的に楽曲に導入していけます。アーティキュレーションの種類と配列はLow、Highとで統一されてるので、ここも非常に扱いやすいです。ロングトーンのサンプルは音の強弱をノートベロシティーではなくDynamicsで演奏させます(図1)。レイヤー毎に非常に丁寧に収録されていて、サンプル間のクロス・フェードもスムーズ。モジュレーション・ホイールを使って演奏しているととても心地よいです。

4つのマイクポジションのミックス・オートメーション

「ALBION V ORCHESTRA」カテゴリ内の各オーケストラ・パッチは、以下4つのマイク・ポジションで収録されています。

C(クローズ)
楽器の近くに配置されたマイク。

T(ツリー)
指揮者の表彰台の上に配置された3つのマイク。デフォルトのマイク位置としてロードされます。

A(アンビエント)
バンドから離れたギャラリー側の高い位置に配置されたマイク。 ステレオの広がりと部屋のサウンドが全体に広がります。

O(アウトリガー)
ツリーの左右に広く配置されたマイクのセット。 ツリーのマイクにさらなる広がりを追加できます。

図2

マイク・ポジションそれぞれのミックスバランスを調整でき、オートメーション化も可能となっています(図2)。それにより、ALBIONストリングスの演奏で重要なDynamicsとExpressionコントロールにプラスして、マイクMIXコントロールという音響的な表現ができます。 例えば、下の(図3)のようにクローズ・マイクに抑揚あるオートメーション・データを書くとサウンドが手前に来たり奥へ行ったりする効果が得られます。それに並行してアンビエンス・マイクとクロスリガー・マイクを緩やかにクロスフェードし、後方からサイドに入れ替わるようなサラウンド的発想でのアプローチが考えられます。先ほどの楽曲でも同じような効果が随所で聞けますので参考にしてみてください。

図3

有機的なアンビエント・サウンドが手軽に作れるハイブリッド・シンセサイザー

TUNDRAに収録されている「STEPHESON'S STEAM BAND(図4)」は、TUNDRAのオーケストラ素材やハーモニウムとシュルティ ・ボックス(インドのドローン楽器)の音素材をA,B 2つのオシレート部に配置し、高機能エンジン"eDNA"とを組み合わせたハイブリッド・シンセサイザー音源です。映画のサントラでも使えそうなパッド・ストリングス的な音色が多く、1コード鍵盤を爪弾くだけでも壮大な世界観が広がりインスピレーションが得られます。そして全てのパッチは非常に丁寧かつ実用的に作られてます。ボリューム、ピッチ、フィルター、ゲートなどを直感的かつ自在に動かすことができ、有機的なアンビエント・サウンドが手軽に作れます。そのサウンドの奥深さやクオリティーの高さは他のシネマティック系音源とは桁違いだと言えます。実際の仕事で映像に当ててみてハマった時は感動して涙が出そうになりました。

図4

最後に、TUNDRAは"北欧/氷河/森"からインスパイヤされ作られてますが、様々なジャンル、シチュエーションで使用できると思います。前述したクローズ・マイクではアタック音もしっかりとキャプチャーされているので、ポップスでも問題なく使えますし、楽曲に深い奥行きや表情付けが可能です。ALBIONシリーズの製品はどれもが具体的なコンセプトを持って作られてますが、前提としてオーケストラ音源としてどれもが素晴らしいクオリティーです。開発側の提示するコンセプトを参考にしつつ、ジャンルに縛られず導入してみて独自の世界観を構築してみてください!

阿瀬さとし(Cojok / Smash Room)
作曲家/マニピュレーター/ギタリスト

2006年アコトロニカ・ユニットCojok(コジョ)結成。2010年、音楽プロデューサー佐久間正英氏に見いだされ、氏主催のレコード会社より作品をリリース。その後はタイムドメインスピーカーを用いた10.2chサラウンド・コンサートの主催、サウンド&レコーディングマガジンによる企画「Premium Studio Live Cojok+徳澤青弦カルテット with 屋敷豪太、根岸孝旨、権藤知彦」に出演。そこから頭角を現し、数多くのCMやゲーム音楽などの作編曲を担当。2019年は映画「おかえり、カー子」(湯浅典子監督、小島梨里杏主演)の音楽を担当。主題歌を飛澤正人氏が3Dミックスを手がける。東京スクールオブミュージック渋谷校ではソフト音源を使用したサウンド構築術やAbleton Liveコースの講師も務める。

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