SONICWIRE

Dios/シグナルP 氏

VIENNA INSTRUMENTS ARTIST INTERVIEW 08 / Presented by Crypton Future Media, INC.

アニメソングやVOCALOID楽曲の制作に携わりながら、各種アーティストのサウンド・エンジニアとしても広く活躍するDios/シグナルP氏。長くご愛用いただいているVSL社製品の強み・特徴や、『SYNCHRON ELITE STRINGS』の使用感を伺いました。

─まずは、Dios/シグナルP様の音楽経歴をご紹介いただけますでしょうか。

4歳からエレクトーンを10年くらい習っていました。練習はあまり真面目にはしていなかったのですが、コード進行やアレンジの基礎を学べましたし、音色の作り方やエフェクトの種類やMIDIの仕組みなどDTMの基礎も学べました。

Windows95のPCを買ってもらったら打ち込みできるソフトが入っていたので、MIDI音源を繋いで曲作りにチャレンジしたのですが、スペックが足りなさすぎて思うように進められず、その後はオールインワンタイプのシンセサイザーを購入して、内蔵のシーケンサーを使って曲を作り、MTRで歌などを録音して曲を仕上げるようになりました。完全にPCのみで制作するようになったのは2002年くらいからですね。

音楽の専門学校在学中にガンダムSEEDのOPテーマ『Realize』で編曲家としてデビューした後は、メジャーのお仕事をやりながら、2007年12月にボカロPとしてデビューしました。

─VSL社製品を使い始めたきっかけと、同社製品でも特に気に入っている製品やその特徴があれば教えてください。

マクロスFをみていたときに、歌物でシンセサイザーとリアルなオーケストラが絶妙に融合した菅野よう子さんの楽曲を聴いて影響を受け、DTMで同じようなサウンドになんとかできないかと考え、いろんなオーケストラ音源のデモを試聴した結果、VSLの音源が自分の理想に一番近い事ができそうだなと思い導入しました。特に『CHAMBER STRINGS』が歌物で使うときに必要なレスポンスの良さがありつつドライな音も出せるので重宝しますし、アレンジやミックスの仕方によっては壮大な感じにもできて、オールマイティーに使えるので気に入っています。

─オーケストラサウンドを楽曲に取り入れるようになったきっかけを教えてください。

幼稚園の演奏会でバッハの曲をやったり、小学生の時はRPGなどのゲーム音楽に影響を受けたり、中学生の部活ではオーケストラをやっていたりなど、ずっとオーケストラは身近に存在していました。DTMでは打ち込みが主体となるので、以前はオーケストラのリアルな質感を出すのが難しく、下手に入れてしまうとチープになってしまうので、ストリングスくらいしか入れる勇気がなかなか出ませんでしたが、VSLを導入した事によって積極的に取り入れるようになりました。

─これまで制作された楽曲の中でVSL社製品が特に活躍している作品などあれば教えてください。

『サンドリヨン 10th Anniversary』はソロバイオリン以外のオーケストラパートは全てVSL社製品を使っています。原曲のサンドリヨンはシンセサウンドをメインにアレンジされていますが、10th Anniversaryバージョンはオーケストラの比率が高めのアレンジとなっています。

─先日発売になった『SYNCHRON ELITE STRINGS』もご使用いただいているとのことですが、実際に使ってみた感想をお伺いしたいです。

まずSYNCHRONを初めてちゃんと使ってみたのですが、旧Vienna Instrumentsよりも圧倒的に使いやすくなっていました。特にミキサーでの各マイクのバランスや、定位、リバーブなどの調整がわかりやすく、サイズ感や響きを楽曲に合わせやすくなりました。『SYNCHRON ELITE STRINGS』は『CHAMBER STRINGS』のサイズ感をやや大きくした感じで、SYNCHRONのミキサーの調整次第で『CHAMBER STRINGS』の代わりのような使い方もできますし、大きなコンサートホールで演奏している壮大さも出すことができます。

先日『CHAMBER STRINGS』を使って曲を作っている途中に『SYNCHRON ELITE STRINGS』を導入したので差し替えてみたのですが、軽く調整しただけで違和感なくより良い感じになったので『SYNCHRON ELITE STRINGS』を採用しました。

質感がやや異なり、曲によってどっちがより合うとかはあると思うので、旧版の『CHAMBER STRINGS』も『SYNCHRON-IZED CHAMBER STRINGS』にアップグレードしたいと思います。

─Dios/シグナルP様と言えばシンセサイザー主体の作風でも有名ですが、オーケストラ製品との相性はいかがですか?

シンセサイザー主体で作ると平面的になりやすく、それはそれで良さがあるのですが、そこに生演奏のギターが入ると空気感が加わるのと同じように、オーケストラを加えるとさらに空間を広げる事ができますし、パートの増減やボイシングの重ね方で空間の大きさをコントロールしやすいですね。

─オーケストラ製品を使用するに当たって、特に心がけている点などありましたら教えてください。

リアルさを求めないのであれば総合音源に入っているような音色を使えばいいのですが、せっかくリアルなオーケストラ音源を使用するのであれば、とことんリアルさを追求していきたいですね。鳴りがリアルな音源でも、曲で表現したい感情を、エクスプレッションや奏法の切り替えなどで作り込んでいくことで、さらに表情豊かにしてあげられます。ピアノやシンセの打ち込みに比べると手間も時間もかなりかかってしまいますが、手を加えた分だけ理想に近づけられるポテンシャルを持っている音源なので、ここは妥協せずしっかりとやっていきたいです。

─オーケストラやストリングスの作編曲、バーチャルオーケストレーションをこれから始める方にアドバイスをお願いします。

まずはオーケストラについて理解を深めることが大事です。それぞれの楽器が得意な音域や、音の重ね方は特に重要な要素です。実際にコンサートを聴きに行くのもいいですし、最近だと音楽のサブスクサービスで聴くこともできるので耳コピしてみたり、スコアを買って打ち込んでみたりすると理解が深まりやすいと思います。 例えばCコードを鳴らすときにピアノだと「CEG」で和音を鳴らす事は普通ですが、ストリングスセクションだと「CGE」のようなオープンボイシングで重ねたほうが綺麗な響きになります。このようにオーケストラ特有の知識を付けていく事で、打ち込んだときの感動はさらに大きくなっていくのと同時に、どんどん楽しくなっていきます。楽しくなっちゃえばあとはやればやるだけ自然と上達していくでしょう。

Dios/シグナルP 氏

機動戦士ガンダムSEED OPテーマ『Realize』の編曲で音楽家としてのキャリアをスタート。2007年にボカロPとしての活動をスタート。ボーカロイド曲では『サンドリヨン』『会いたい』などの代表曲をはじめ、多数のオリジナル曲を発表している。打ち込みを主体とした楽曲が多く、可愛い曲からシリアスな曲まで幅広い。最近では歌い手やVtuberなどへの楽曲提供やmixも多く担当している。

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