クオンタイズされたMIDIデータでも、グリッドに合ったタイミングでとても滑らかな演奏を実現したのが
大革命
IMPACT SOUNDWORKS社よりリリースされた『TOKYO SCORING STRINGS』。日本初のストリングスの音源ライブラリーです。収録スタジオはSound City。60年以上の歴史をもち国内の数多くのオーケストラ・サウンドのレコーディングに使われてきました。『TOKYO SCORING STRINGS』を立ち上げて音を出した瞬間、昔から聴いていたような馴染み深いサウンドだと感じました。
録音は24bit 96kHzで収録され48kHzにダウンコンバート。ハイサンプリングかつ少人数のアンサンブルならではの繊細なトランジェントとディテールがキャプチャーされています。それに加えてピッチも正確で鮮明な出音。音量もバラつきがなくとにかく扱いやすいです。
製品概要や収録時の模様などSONICWIREさんのサイトや動画で詳しくご紹介されているので是非チェックしてみてください。今回僕は歌モノでのエレクトロ・サウンドで『TOKYO SCORING STRINGS』を使用する際に、特に気に入った部分をピックアップしてご紹介いたします。
東京スコアリング・ストリングス 2.0
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エレクトロ系楽曲での『TOKYO SCORING STRINGS』
マイクはメインのパッチにはBoard Mixが収録。音の立ち上がりは早いけど、少し角がとれて滑らかに鳴ってくれます。歌モノの楽曲内でうまく馴染みつつも、しっかりとストリングスが前へ出てくる印象。そしてとてもドライなサウンドとなっていてミックス時ではリバーブを使用しての距離感のコントロールが非常にやりやすいです。エンジニアの相澤光紀さんがミックス処理されていて、嫌なピークもなくこのまま本チャンで使えちゃいます。
All Micsのパッチには4種類のマイク・ポジションが用意されています。ストリングス単体で聴かせる曲など、これらのマイクバランスを調整して奥行きを加えることができます。サウンドですが、4種類のマイク・ポジションをミックスしたBoard Mixに比べて、各マイク単体で聞くと少しザラつきがあるように感じ、生々しい印象を受けました。Roomではサウンドシティならではのアンビエンスがしっかりキャプチャーされています。CloseはStaccatoやPizzicatoなどもう少しパキッとさせたい時に混ぜてみると立ち上がりの早い電子音とうまく共存してくれて気に入っています。
『TOKYO SCORING STRINGS』で一番紹介したい“LOOKAHEAD”機能
今回この製品で一番に紹介したいと思ったのが“LOOKAHEAD”という機能。キースイッチを使うことなく自動的にアーティキュレーションを選択し、演奏してくれます。この機能はMIDIデータを先読みし、ノート単体ではなくフレーズ全体として解析、演奏に最適なアーティキュレーションを割り当ててくれます。
そしてクオンタイズされたMIDIデータでこの機能が発揮されます。通常のレガートでは、次のノートのノートオンから目的のピッチに到着するまでに遅れが生じてしまいます。それが曲中で聴くとストリングスのもたつきとして露骨に現れますね。なのでノート位置を微調整する必要があり、しかもそれが音源によってタイミングが全く異なるので、MIDI入力のプロセスでは一番時間がかかっていました。
これがLOOKAHEADモードだと、ノート位置を微調整しなくてもフレーズとレガートの長さを先読みして、次のノートオンでキッチリと目的のピッチに到着してくれます。結果としてクオンタイズされたMIDIデータでもグリッドにキッチリ合ったタイミングで演奏されます。しかもそれが強引な感じではなく、とても滑らかな演奏を実現してるのが大革命だと感じました。DAWの再生時ではSTANDARDモードと比べると全く別音源と思うほど有機的な演奏をしてくれます。是非試してみてください!
それとLOOKAHEADモードで打ち込んだMIDIデータは基本グリッドにジャストなので、そのまま譜面作成ソフトで読み込んでもほとんど編集が必要ありません。これ地味ですが実際の仕事でかなり助けられています!
*ご注意*
LOOKAHEADモードは、DAWプロジェクトの再生時にのみ機能します。
ノート解析が必要なため、仕様として再生に1秒 (1000ms) のレイテンシーが発生します。発生するレイテンシーを補正するため、『TOKYO SCORING STRINGS』付属の「Delay Compensator」を使用します。DAW上で『TOKYO SCORING STRINGS』が立ち上がっているトラックにインサートFXとして「Delay Compensator」を使用すると、その他のトラックの再生を1,000ms遅らせます。これによってトラック同士のタイミングを合わせるという仕組みです。
MIDIキーボードでリアルタイム入力する場合などは、演奏モードをLOOKAHEADからZERO LATENCYモードかSTANDARDモードに切り替え、「Delay Compensator」をバイパスにして行いましょう。
今回、僕のやっているアコトロニカ・ユニットCojokの楽曲で『TOKYO SCORING STRINGS』を使ってみました。エレクトロな歌モノのポップな曲です。この曲「Unspoken」は以前に徳澤青弦カルテットと共演した時にライブ録音した事があり(OTOTOY「Cojok+徳澤青弦カルテットのセッションをDSDで!」)、その時を思い出しまして『TOKYO SCORING STRINGS』とも共演してみたくなりました(笑)。
Cojok「Unspoken」:ストリングスパートに『TOKYO SCORING STRINGS』を使用
動画では、Contrabassesを抜いたViolins I, Violins II, Violas, Cellosでストリングスパートを演奏させています。全てLOOKAHEADモードで使用しており、MIDIデータは譜面作成ソフトからエクスポートしたもので全てジャストのタイミングにクオンタイズされている状態です。ダイナミクスとビブラートの速さだけ、オートメーションで描いています。こういったエレクトロ・ポックな曲で使ってみるとゴージャスになり過ぎずに、ちょうど良いスケール感ですね。この質感や音の立ち上がりの速さは歌モノのエレクトロニカやアンビエントでも使ってみたくなる音源です。是非聴いてみてください。
東京スコアリング・ストリングス 2.0
日本が誇るストリングス・サウンドをその手に。
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2006年アコトロニカ・ユニットCojok(コジョ)結成。2010年、音楽プロデューサー佐久間正英氏に見いだされ、氏主催のレコード会社より作品をリリース。その後はタイムドメインスピーカーを用いた10.2chサラウンド・コンサートの主催、サウンド&レコーディングマガジンによる企画「Premium Studio Live Cojok+徳澤青弦カルテット with 屋敷豪太、根岸孝旨、権藤知彦」に出演。そこから頭角を現し、数多くのCMや劇伴などの作編曲とギター演奏を担当。2019年は映画「おかえり、カー子」(湯浅典子監督、小島梨里杏主演)の音楽を担当。主題歌を飛澤正人氏が3Dミックスを手がける。2020年はポカリスエットCM「ポカリNEO合唱 ドキュメンタリー完全版」篇の音楽を担当。
2021年、自身のユニットCojokと、岸利至・酒井愁からなるユニットTWO TRIBESとのコラボレーションによる作品『MeteM』を発表。2022年はウラニーノの最新作『2020.EP』収録の「2035-プロローグ-」「TOKYO2021」にてギター、プログラミング、アレンジを担当。
「ポカリ NEO合唱 ドキュメンタリー完全版」(作曲&アレンジ&ギター)
Cojok×TWO TRIBES「MeteM」(ギター&アレンジ&ミキシング)
ウラニーノ「TOKYO2021」(ギター&プログラミング&アレンジ)
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