SONICWIRE

『おんがくであそぼう ピコトンズ™』

SONICWIRE SPECIAL INTERVIEW

横田 将士(キッチン) / 烏田晴奈

Presented by SONICWIRE

SONICWIREが「音源制作協力」として携わった『おんがくであそぼう ピコトンズ™』。ロボットトイ「toio ™(トイオ)」の専用タイトル第6弾として2020年9月に発売された本作について、企画・ディレクションを手がけたキッチンの横田将士さんと、音楽監修をご担当された烏田晴奈さんにお話を伺った。(2020年9月)

toio™ 「おんがくであそぼう ピコトンズ」紹介動画|toio™ "PICOTONS" Trailer

©2020 Sony Interactive Entertainment Inc.

はじめに、「toio」とはどのようなプラットフォームなのかご紹介いただけますでしょうか。

横田将士さん(以降“横”):

toioは、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(以降”SIE”)から発売されているロボットトイです。小さな四角いロボットを使って、ゲームや工作で遊んだり、プログラミングを楽しんだりできる、新しいあそびのプラットフォームです。

toio™ 技術紹介動画 | toio™ Technology Introduction Movie

「toio」専用タイトルの企画に参加することとなったきっかけは?

横:

弊社でSIEの別の仕事をしていた時に当時の担当の方から、toio新タイトルの企画提案の機会をいただき、その時にtoioの開発者の一人であるSIEの中山哲法さんと出会い、今回の企画を採用いただきました。

ピコトンズは、中山さんがプロデューサー、私と弊社デザイナーの河島が企画・ディレクション・デザインを担当しています。また、全体の音楽監修を友人でもある作曲家の烏田晴奈さんに依頼し、参加していただきました。

烏田晴奈さん(以降“烏”):

私は作曲の他に映像を作っていた経緯もあるのですが、横田くんとは学生時代に映像コンペで一緒になった事がきっかけで知り合い、ここ数年はいろいろな案件で一緒にお仕事をさせてもらっています。

「ピコトンズ」ではどんなあそびができるのですか?

横:

ピコトンズには紙製の専用マットが同封されており、キューブでマットにタッチすると音が鳴るので、簡単に演奏が楽しめます。ドラムなどの打楽器やピアノの鍵盤、ギターやベースの弦など、実際の楽器をモチーフにしたイラストの上をタッチすると、それぞれの音が鳴るので、簡単な操作で直感的に遊べます。また、4トラックまで重ねて録音ができ、WAVやMIDIデータの書き出しも可能になっています。

マットでの操作は、同封されている絵本で遊びながら自然と身につけていくことができます。音の成り立ちからはじまり、リズム、メロディー、ハーモニーなど音楽の要素を少しづつ学んでいける構成になっています。ひらがな音で歌詞をつけたり、ノイズや環境音などの効果音を重ねたり、DJ機能で音を変化させることもできます。300種類以上の音を搭載しているので、音を聞くだけでも楽しいです。

ピコトンズの対象年齢は、6才以上としていますが、正直大人が触ってもめちゃくちゃ楽しいです。簡単な操作で音が鳴り、次々に変化するので、一度触れば、いつの間にか音を選んで、組み合わせてというように誰でも自然と作曲に入っていけると思います。

烏:

キューブにフィギュアをつけると、こんな感じになるんですけど(画像)これを持ってマットをタッチすると音が出るという、シンプルな作りです。例えばですが、マットがマリンバ、このキューブがマリンバのバチのようで、打楽器に似ているなと感じています。手元に楽器があるとどんな音がするのか、触ってみたい、と思いませんか? 私は思うんですけど(笑)ピコトンズもそんな感覚になると思います。楽器と違うのはマットは紙なので、どこにでも置けちゃいますし、持ち運びもとても軽いです。

それでいて簡単に音色を変えることもできるし面白い機能も満載なので、本物の楽器のようでもあり、電子楽器でもあり、新しい操作感だと思います。同時に、打ち込み機能で音楽を録音・表現できるのが最大の特徴です。

SONICWIREとしましては、音源制作協力という形で、楽器音・効果音を幾つか担当させて頂きました。(※1)ピアノ音源は烏田さんの思いも強く、数パターンの生ピアノをスタジオ収録し、慎重に詰めていきましたね。

烏:

ピアノの音色って様々あると思うのですが、ピコトンズでは本物の楽器演奏をしているような感覚にこだわりたかったので、電子的なピアノ音ではなく生ピアノの収録音で制作をお願いしました。

結果、上品でクリアな音色に仕上がり大変満足しています。メインのピアノとは別にホンキートンクピアノも制作していただき、こちらも雰囲気があってとても良い音です。ピアノというくくりの中での音色の違いも楽しんでもらえたら嬉しいです。

効果音では、横田さんと「蚊」の調整を何度も行ったのが印象に残っております(笑)

横:

そうですね(笑)どうしても、キューブの操作感と音の内容、雰囲気が合っていないと、気持ちがいい演奏にはならないので、何度も調整いただきました。連日、本当にありがとうございました!お陰様で操作感、音が完璧に合致した、面白い音遊びが実現できました。クリプトンさんには、他にも、自然、乗り物、動物の鳴き声、DJのノイズ音源など、弊社での制作が難しいものを中心に数多く制作いただきました。こうやって列挙してみるほとんど、蚊と同じく何度も調整いただいたものばかりですね(汗)感謝しかありません!

(※1)『サウンド・ライセンシング・サービス』の詳細はこちら ≫

同梱される絵本はどのような内容になっていますか?

横:

かわいいイラストや楽しいゲームを通して、音楽の様々な要素が自然と身につくような内容になっています。ユーザーは、プロデューサー兼マネージャーのMr.コンソール(※)と音楽初心者のAくんBくんと一緒にピコトンズの一員になって、音楽の世界を旅しながら音楽の要素を学んでいけるようなストーリーを用意しています。

絵本では、音楽の3大要素(リズム・メロディー・ハーモニー)に加え、効果音、ひらがな、DJ等、ピコトンズに登場する音楽要素を子どもたちが習得しやすい順番で掲載しています。子どもたちに、これも体験してほしい、あれも体験してほしいと内容を詰め込んでいたら、かなりのボリュームになったので、烏田さんも監修が大変だったと思います。

※Mr.コンソールは80年代から90年代にソニーが発売したMy First Sonyのラジカセ(CFS-2050)がモチーフになっています。

烏:

プレイブックは内容が本当に盛りだくさんで、音楽の重要な要素をかなり広範囲に渡って、遊びながら学べるようになっています。「音の加工」の考え方まで本の中で触れていて、子供向け音楽教育の観点では珍しいと思います。

また、ゲームも豊富に搭載しています。Mr.コンソールがナビゲートしてくれる音声に合わせて、いわゆる音ゲーみたいに遊びながら演奏の練習ができます。 それ以外にも音感を鍛える音あてゲームや、タイピングゲーム、など多種多様なゲームを用意しております。

使える楽器や効果音は300種類以上となりましたが、特にこだわったポイントを教えてください。

烏:

基本的なアコースティック楽器群、ピアノ・ギター・ドラム等はもちろんのこと、電子楽器、可愛らしい懐かしのゲームサウンドや、和楽器、ラップのかけ声など、パッと聞いて楽しいキャッチーな音を豊富に搭載しています。

効果音が多いのも特徴の一つで、それらは子供の創意工夫を広げてくれると思います。ひらがなエリアを使えば、ひらがな50音が音程付きで発音できますから、簡単な歌も歌わせることもできますよ。

横:

効果音やDJ音源については、子どもたちにとって身近な音を中心に幅広く選定し、そこからtoioの特性に合ったもの、ピコトンズに合ったものを選びました。また、身近さ、面白さに加え、作曲での使い勝手なども重視しました。身近な音でも楽器のように使えるものが多くあるので、そういったものを多く搭載しています。

これはピコトンズ全体に言えることですが、個人的に最もこだわったのは、音楽が好きな子もそうじゃない子も楽しいかどうかです。例えば、ひらがなマットは、小学生が普段から見慣れている五十音表で入力ができるようにし、ボイスチェンジも搭載しました。

ピコトンズは音楽タイトルではありますが、まずはひらがなや効果音で遊んでもらえるだけでも良いと思っています。何か1つ、自分の手で音を選んで演奏、録音ができれば、そこから次の創作に入っていけると思いますので、どんな角度からも入っても、楽しんでもらえるようなデザイン・構成を心がけました。

上級者にはどのような使い方を期待しますか?

横:

これは上級者に限らずですが、プレイブックでは紹介していない使い方を発見してほしいと思っています。友達同士でピコトンズを持ち寄ってセッションをしたり、自作の動画にオリジナルサウンドトラックをつけるとか、ひらがなだけで作品を作るとか、ピコトンズ担当としてバンドに加入するとか、いろんな遊び方を見つけてほしいです。

あとは、ぜひ自分の好きな曲を再現する”やってみた動画”を作ってみてほしいなと思っています。開発中、開発メンバーも色々な曲にチャレンジしましたが、数多くの力作が誕生しました(笑)ピコトンズで出来る楽しい遊びのひとつです。

烏:

スケール機能で、ペンタトニックやブルーススケールなど9種類のスケールに設定可能で、様々なジャンルの音楽制作の助けになると思います。1鍵盤上でキューブを傾けることで、シャープやフラットを再現できますので、スケールを設定した上でそこから逸脱することも簡単です。

コードエリアではワンタッチでコードサウンドが鳴らせるようになっていて、10種類のコードネーム×12キー対応で120種類のコードが用意されています。任意のコードの並びをユーザー自身で簡単に設定できるようになっていますので、好きなコードを揃えて作曲や演奏に役立ててもらいたいです。また、ピコトンズで作った曲はMIDIに書き出しができますので、ピコトンズで作った曲をお手持ちのDAWでさらに広げることも可能です。

最後に、「ピコトンズ」に込められた思いをお聞かせください。

烏:

音楽の入り口として、今まであまり見たことがない画期的な内容だと思います。遊びながらその子の感性で音楽の面白いところをどんどん見つけていってくれると嬉しいです。また、子供向けの遊びでは終わらせないよう、機能を充実させることで音楽上級者にも楽しんでもらえる内容になったかと思います。

横:

ピコトンズは、音楽が得意な人、好きな人、苦手な人、様々な人に向けられたタイトルです。僕自身は、もともと音楽は聴く専門で、子どもの頃から苦手意識がありました。クラスメートや先生の前で歌ったり演奏するのも苦手でしたし、ピアノやギターも始めてすぐに諦めるような子どもでした。今は、音楽の授業も子どもたちが楽しく学べるよう隅々まですごく工夫されているので、好きな子が多いと思うのですが、そのような幼少期の個人的な経験もあり、ピコトンズは、お絵かき、おりがみ、ねんど、ブロックなどと同じような感覚で楽しく音楽で遊べるように設計しました。

普段、人前で何かを発表するのが苦手な子でも、ピコトンズですごい曲ができたと思えば、誰かに聴かせたくなるかもしれない。子どもたちには、ピコトンズで音楽の楽しさに出会って、自分を表現する喜びを体験してもらいたいです。音を選んで、組み合わせて、自分だけの音楽をたくさん作り出してほしいなと思っています。

『おんがくであそぼう ピコトンズ™』は2020年9月10日(木)より発売

詳細はこちら ≫

横田将士

キッチン代表取締役・映像作家

東京造形大学デザイン学科映画専攻領域卒業。茨城大学教育学部非常勤講師。大学在学中より写真や紙を用いた映像作品を発表し、第12回文化庁メディア芸術祭アート部門審査委員会推薦作品、アミューズアートジャムin京都森本千絵賞など受賞多数。これまでにNHK Eテレ「おかあさんといっしょ」「シャーロックホームズ」「ムジカ・ピッコリーノ」「テクネ 映像の教室」「シャキーン!」など多くの教育番組、DREAMS COME TRUE、V6などのMV監督、ヤマハデジタル音楽教材アプリ、教育芸術社「小学生の音楽」などに参加している。

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烏田晴奈

作曲家

国立音楽大学作曲科卒業、多摩美術大学大学院情報デザイン領域修了。音楽とアニメーションを組み合わせた動画作品を制作し、学生CGコンテスト特別賞、NHKデジスタアウォードファイナリスト選出など受賞多数。現在は主にTV、CM、アート作品など、多様な映像作品に音楽を提供。

音楽提供作品:アニメ「テルマエロマエ」、「ゴールデンタイム」(第17回メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞受賞)、NHK Eテレ「いないいないばぁ」「プチプチアニメ」、スヌーピーミュージアム 館内アニメーション音楽2016~現在。その他「スコラ 坂本龍一音楽の学校」等、音楽監修、アイディア提供なども行なっている。

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