
すべてのクリエイターには、“はじめの一歩”がある。
~音を作る側へ踏み出した、そのはじまり:picco~
本シリーズでは、音楽を生み出す人たちの原点と現在地をたどり、その制作の背景にある選択や葛藤をひもといていきます。
今回は、音楽制作を続けているクリエイターの中から、トラックメイカー・ボカロPとして活動し、キャッチーなメロディとダンスミュージックを融合させた独自のサウンドで支持を集めるpiccoさんに、 試行錯誤を重ねながら、自分なりの制作スタイルを築いてきた歩みをお聞きしました。
picco(ピッコ)
東京を拠点に活動するトラックメイカー/ボカロP。 主にVOCALOIDを使用した楽曲を制作し、キャッチーかつ高揚感のあるエレクトロサウンドを特徴としている。
自身の音楽を「Hyper Kawaii Music」と称し、サブカルチャーやインターネットミュージックシーンとの親和性の高い作品でファン層を拡大している。
Q1. 音楽に興味を持ったきっかけは何でしたか?
幼稚園の頃、同じ組の子が教室でピアノを弾いているのを見て、幼いながらに衝撃を受けたのがきっかけです。親に「自分もやりたい」と伝えて、当時習っていたバレエと引き換えにピアノ教室へ通うことになりました。そこからは、ピアノ、吹奏楽、軽音楽と、惰性もありつつ自然と音楽の幅が広がっていきました。
Q2. 「曲を作れるようになりたい」と思うようになったのは、どんな気持ちや出来事がきっかけでしたか?
――実際に曲を作ってみて、それまでに培ったピアノや吹奏楽、軽音などの経験が、何か作曲に活きていると感じる部分はありましたか?
曲を作るタイミングで初めて音楽理論を勉強したのですが、その際に「あれってこういう理論だったのか」と気づくことが多かったです。曲の“あるある” のようなものを感覚的に掴んでいたんだと思います。また、ピアノを続けていたことで身についた音感は、大きなアドバンテージになっていたと感じています。
Q3. 初めて作曲したとき、どんな環境で、何を使って制作していましたか?
――作曲を始めた頃から、現在のような音楽スタイルを目指されていたのでしょうか?また、当時影響を受けていたアーティストや作品、ご自身の音楽性の原点となったものがあれば教えてください。
――初めて楽曲を公開したときのことは覚えていますか?投稿前後の気持ちや反響で印象に残っていることがあれば教えてください。
予算もツテもなかったため、イラストも動画も自分で制作しました。今振り返るとシンプルな動画ですが、当時は作るだけでも本当に大変でした。また、その頃から一方的に存じ上げていたkeiseiさんが楽曲を紹介してくださったことをよく覚えています。純粋に嬉しかったですし、「そこまで細かくチェックしているんだ」と尊敬した出来事でもありました。
――ちなみに最初に購入したDAWは何でしたか?それを選んだ理由も、覚えていれば教えてください。
「Studio One(現:Fender Studio Pro )」です。前述の友達が責任を持って丁寧に教えてくれたので、基本的には勧めてもらった機材やソフトをそのまま揃えていました。
Q4. 最初に音楽制作を始める時、機材やソフト選びで迷ったことはありましたか?どんな点で迷ったか教えてください。
Q5. ソフトや音楽ツールの使い方が分からないとき、どのように解決していましたか?
友達に聞いたり、友達経由で詳しい人を紹介してもらったりして解決していました。今もあまり変わっていないかもしれませんが、最近はお礼に自分からも機材や知識を共有したりできるようになりました(笑)
Q6. 当時は、どんな流れで曲を作っていたのでしょうか?また、現在の制作スタイルとの違いがあれば教えてください。
最初は「トラック → メロディ → 歌詞」という流れではっきり決まっていましたが、最近はサビのメロディと歌詞を含めたデモを先に作って、そこからトラックを広げていくことが多いです。一方で、クラブミュージックとして「ドロップで絶対にやりたいこと」がある場合は、そこを起点に作り始めることもあります。また、自分の音楽のキャラクター性が見えてきたことで、共同制作の機会も増えてきました。
――共同制作の機会も増えてきたとのことですが、一人で制作する場合と比べて、新しい発見や刺激を感じることはありますか?また、共同制作だからこそ生まれた楽曲やアイデアがあれば教えてください。
Q7. これまで音楽と関わる中で、一度立ち止まったり、距離を置こうかなと思ったことはありましたか?
作曲を始める前は、演奏そのものがなかなか上達しなかったり、継続的な練習時間を確保できなかったりして、何度も音楽から距離を置こうと思ったことがありました。自分より優れた人がたくさんいるように感じてしまうことも多かったです。
その一方で、作曲は「自分にしか表現できないもの」の割合が大きいので、他人と比べすぎず、今でもマイペースに続けられている気がします。
Q8. お仕事として音楽制作に向き合う日々の中で、プライベートではどのように音楽と関わっていますか?
自分は割と短期集中型だと分かってきたので、まとまった時間が取れない日は潔く諦めるようにしています。イベント前後などは特に疲れてしまって、まったく作業が進まない日もあります。そういう日があっても大丈夫なように、普段から無理のない制作スケジュールを組んでおくことが大切かもしれません。
Q9. 音楽制作を続ける中で、音楽そのもの以外に、気持ちを支えてくれているものはありますか?
DJイベントや即売会など、音楽があったからこそ出会えた景色や思い出はモチベーションになっています。SNSのエゴサーチも自分は結構好きで、反応を見ることで励まされることも多いです。あとは、スタイリングのための買い物やネイルなども、気分転換として良い支えになっている気がします。
――現場でお客さんの反応を見て、その後の楽曲制作に影響を与えた出来事はありましたか?
ありがたいことに大きなイベントへ出演する機会も増え、自分のことを目当てに来てくださっている方だけではないお客さんの前でパフォーマンスする場面も多くなりました。そうした経験を通して、「自分はこういう音楽を作る人なんだ」「こういうキャラクターなんだ」ということを、初めて聴く人にも伝えられるような楽曲作りを意識するようになりました。
Q11. 制作を始めるとき、どんなふうに“制作のスイッチ”を入れていますか?日々制作を続ける中で、意識している習慣があれば教えてください。
ご飯を食べたか、ちゃんと寝たか、お風呂はどのタイミングで入るか、みたいな生活面を一通り確認してから作業を始めるようにしています(笑) 一度集中し始めると、そのあたりを全部後回しにしてしまいがちなので...。逆に、そこをきちんと整えられていると、「今が一番ベストな状態だからやろう!」と自然に制作のスイッチが入ります。
Q13. 音楽制作を始めたばかりの頃の自分に、今声をかけるとしたら、どんな言葉をかけますか?
Q14. この先叶えたい夢はありますか?
ワンマンライブ的なものは、いつかやってみたいと思っています。ただ、自分はボーカルやバンドではないので、どんな形式がベストなのかなと日々考えています。
――これから曲づくりを始める人たちへ、一言メッセージをお願いします!
わたし自身、絵や演奏よりも曲づくりの方が自分に合っていました。最初は「ちょっとやってみようかな」くらいの軽い気持ちで全然いいと思います。作曲やDTMは、全部を完璧に極めようとするとかなり難しく感じますが、勢いやノリで始めても意外と形になる面白さがあるので、まずは気軽にやってみてほしいです。
曲名:Tokyo Future Girl
おそらく、リスナーの皆さんにとって“piccoらしい楽曲”のひとつだと思います。クラブで盛り上がれる“歌モノの四つ打ち”とはどんなものだろう?と、楽曲の構造から改めて考えて制作した楽曲です。
後の「光芒パラノイア」「空想ブルームーン」「閃光バッドガール」などにも繋がっている、自分の中でも大切な一曲だと思っています。
【使用した主な製品】
初期から変わらず、「Serum」と「初音ミクV4X」をメインで使用しています。そこに加えて、「Sylenth1」や「Spire」なども使うようになりました。
また、この頃にはDAWは「Ableton Live」に移行していて、現在も使用しています。
――この楽曲のサウンドを作るうえで、特に印象的だった製品や制作ツールはありますか?
おそらく楽曲内のほとんどのパートで、「Serum」と他のシンセサイザーをレイヤーして使用しています。「Serum」単体では出せない質感を作れるのがポイントで、複数のシンセを組み合わせることで、自分らしいサウンドに近づけています。
また、中盤に登場するボーカルカットアップのようなパートは、「Ableton Live」の得意な処理を活用して制作しました。直感的に音を組み立てられるので、アイデアをそのまま形にしやすい点が気に入っています。
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