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DOTEC-AUDIO

DOTEC-AUDIO開発者INTERVIEW / Presented by SONICWIRE

国産プラグイン・エフェクト・メーカー“DOTEC-AUDIO”。リーズナブルで導入しやすく高いコスパを誇る同社プラグイン・エフェクトの特徴について、開発を担当する“フランク重虎”氏と“飯島進仁”氏にお話を伺った。(2017年11月)

SONICWIRE(以降“S”):DOTEC-AUDIOの製品には“ワンノブ”のものが多く、非常に手軽に使える印象があります。

フランク重虎氏(以降“重”):DOTEC-AUDIOのプラグイン・エフェクトは、初心者~プロの方にも使っていただけるように、非常に手軽かつ制作が効率化されるように設計しています。ただ、パラメーターの少ない物ほど“いわゆる簡易版/体験版”のようなイメージを持たれてしまう傾向があるようで、「これ使ってちゃ全然プロみたいな音出せないかなぁ」とよく勘違いされてしまうので、その誤解は解いていきたいと常に思っています。

おそらく、プロの作家さんほど素早く使える即戦力の武器が欲しいと思うので、手軽にプロ品質が再現できるDeeシリーズはプロユースにも適しています。特にエンジニアの方は、音を聴いたら「もしこの音出すんだったらこれとこれ組み合わせないと駄目だな」というセッティングが頭に出来上がっていると思うんです。DOTEC-AUDIOのプラグイン・エフェクトは、そういったケースを別々に考えた上で、最も効率的に使えるようになっています。

S:特に『DeeMax』は高い人気を誇っていますね。

重:例えば『DeeComp』には普通にコンプレッサーと同じパラメータを揃えているので、今まで使っていたものとリプレイスして使ってもらうことが可能だと思います。ただ、『DeeMax』はレバー1本という事でほかと明らかに違っていて、細かなパラメータを操作しなくても効果を得られるように、そこは一番気を使って簡略化しました。プロの方は大体お分かりかと思うんですが、大体制作していく中で、ほぼ定番のいくつかのエフェクターの組合わせが出てくるんです。それをまさに自動化していて。

だからレバー1本だから他より苦手なところが多いってこともなくて、むしろ『DeeMax』の方が強いって部分はかなりありますね。トランジェントのかかり方に注目してみると、DeeMaxを使われた方は「独特のアタックの出方がする」と仰ります。やっぱり、音圧を上げる上で何を一番求めてるっかて言うと、【ガンって来る音】だと思うんですが、その鳴り方にこだわっています。

フランク重虎氏がまとめた【DeeMaxの特徴と動作】
  • マスターバスでのダイナミクス系はトランジェントシェイパー、コンプレッサー、リミッター、マキシマイザーを使い、それぞれのノウハウを持って設定する必要がある。
  • トランジェントシェイパーはアタック感を強め、メリハリのあるサウンドに仕上げる。
  • コンプレッサーは音の粒を揃えて一体感を与える。
  • リミッターでピークをさらに圧縮し音圧を上げる。場合によってはここでサチュレーションという歪みを与えて全体の味付けを行う。
  • マキシマイザーは倍音も高め、さらに音圧を上げる。
  • 上記のエフェクトは順に設定した後に相互のバランスを見直し、何度も操作を往復する事は普通にあり、ゆえにとても時間がかかる作業。
  • DeeMaxでは上記にあげたエフェクトを入力波形の状態に応じて自動で設定し、ユーザーは効果の大きさをレバーで調整するだけで変化させることができる。そのためビギナーでも実作業から解放され、単純に聴きながらレバーを上げるだけで調整が行える。
  • プロにとっては音だけに集中できるため判断時間が短くなり、長時間作業に良く起こる判断ブレが防げる。
  • 音圧を最大化させるプラグインとしてマキシマイザーという枠で販売しているが、実際はマスターバスのダイナミクス処理における統合プラグインというのが正確な位置付け。
  • 室内楽のような音圧を上げるべきではないジャンルには使用する必要はないが、その他の音圧を上げる用途ではオールジャンルで活躍できる。
  • マキシマイザーとして比較しても大きく違う点はミックスダウン時で作られたバランスを保てる事。音圧を上げる作業においてトレードとなる悪条件を克服している。
  • KORG Gadgetに追加された。

S:お二人で開発をご担当されていると聞きました。

飯島進仁氏(以降“飯”):はい。重虎さんが製品の心臓と言えるいわゆる音響部分を担当して、私はそれ以外ですね。言ってしまえば製品のUIから、販売/EC、認証の仕組みまでをやっています。私目線からいくと私の担当の部分は割とプログラマーなら出来るかなと思っているのですが、やっぱり重要なのは重虎さんが耳で自分で聴きながらイメージした音をプログラムしてるというところです。音響部分とプログラムが両方できる人って非常に少ないと思うんです。

重:大体アイデアを伝えてプログラマーが専門で書いてますよね。

飯:重虎さんは元々壊れた909を直したりと、アナログ回路の知識もあって。

S:プラグイン開発には何かライブラリなどをお使いですか?

飯:“JUCE”を使っています。今まで他で聞かれたことも無かったのであまり答えたこともなかったのですが、もうJUCE様々です。

S:あらためて、DOTEC-AUDIOの特徴はどんなところですか?

飯:重虎さんはミュージシャンであり、サウンドエンジニア、レコーディングエンジニアでもあるので、そこが直結して製品にアウトプットされている点で非常に強いと思っています。「なんか、こう、人から聞いたとか、研究の結果こういう数字でした」ってものじゃなくて、実際に重虎さんが卓に座ってやってきた事がそのまんま反映されているということを、是非知っていただきたいと思っています。

重:フェーダーの操作一つとっても、裏側で曲線的に数値が動いているんです。要は使いやすいとか気持ち良いとかは、値を倍動かしたから倍変わるってものじゃないので、曲線的に変わるようになってます。

飯:半分が50%が気持ち良いわけでは無いのですよね。

重:画面上の構成する物が少ないながら、色んなところにこだわりが詰まっているんです。

S:ありがとうございました。

DOTEC-AUDIO社エフェクト・プラグイン

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