
あまりの制作成長ドキュメント
~第2回|試行錯誤編~
今回の連載では、昨年開催された「SONICWIRE CONTEST 2025 - 歌モノ編 -」で優秀賞を受賞した、DTM歴2年半のクリエイター・あまりさんが、新規楽曲の制作過程をリアルにお届けしています。
理想のサウンドを目指しながら、迷い、試し、少しずつ前へ進んでいく——そんな楽曲制作の裏側を記録する成長ドキュメントです。
前回は、1コーラスのラフ音源制作までの過程をご紹介しました。思い描いていた“色褪せた質感”や“影のある雰囲気”には近づけたものの、「展開がのっぺりして聴こえる」「プラグインが思った通りに動かない」など、新たな課題も見えてきました。
第2回となる今回は、それらの課題と向き合いながら楽曲をブラッシュアップしていく過程をお届けします。
課題が解決したので、いよいよアレンジを進めます!
前回の記事では、
- 展開がのっぺりして聴こえる
- アコギから謎の金属音が鳴る
- ベースが思った通りにスライドしない
という3つの課題に頭を抱えていました。
その後、通っているDTM教室の先生に相談したところ、アレンジも大きく進み、楽曲全体の方向性が徐々に見え始めました。また、前回悩んでいた3つの課題も無事に解決することができました!
まだ試行錯誤の途中ではありますが、今回は完成形が少しずつ見えてきた現在の制作過程をお届けします。まずは楽曲制作の進捗をご紹介しつつ、後半では前回からの課題をどのようにクリアできたのかも振り返っていきます。
「かっこよすぎる!!!」オルガンに一目惚れしました
課題が解決したところで、いよいよアレンジを進めました!DTMの工程の中でも、アレンジは私が一番楽しいと感じる作業です。
今回は、これまで一度も使ったことのなかったオルガンを取り入れることを決めていました。きっかけは、SNSで偶然見かけたこちらのオルガン演奏に衝撃を受けたことです。
投稿を見るまで存じ上げなかったのですが、演奏されているのは、ハモンドオルガン奏者として第一線でご活躍されている河合代介さんでした。かっこよすぎる!!!
今回のアレンジでは、まずAメロ後半に細かく動くオルガンのフレーズを配置し、サビにはリフ的なフレーズを加えました。
Aメロ後半に追加したオルガンフレーズ
サビで使用しているオルガンリフ
さらにサビではパッドのような役割として和音も薄く重ねてみました。
サビの和音
「もっと景色を見せたい」と思って、声ネタや環境音も追加
イントロと間奏は、エレキギターのリフだけだと少し物足りなく感じました。そこで、メロディックな要素として声ネタを追加!
さらにBメロでは、雑踏の中でパニックに陥るような情景を表現したかったため、人混みの環境音やモールス信号を模したシンセ音も取り入れてみました。
頭の中にあった景色が、少しずつ形になっていく感覚があります。
現時点のデモ音源はこちら!
オルガンや声ネタ、環境音などを加えながらアレンジを進めた結果、現時点ではこのような形になりました。
▶ デモ音源
前回のラフ音源と比べると、曲全体の展開や空気感がかなり見えやすくなった気がします。オルガンや環境音を追加したことで、曲の景色もかなり見えてきました。
しかし実際には、その裏で前回から持ち越していた課題とも向き合っていました。特に悩んでいたのが、「展開に変化をつけているのに、なぜかのっぺり聴こえる」という問題です。
「のっぺり問題」の原因は、思っていた場所ではありませんでした
のっぺり聴こえる原因として先生に指摘されたのは、
- Bメロ後半の展開がサビと似ている
- サビの転調先がABメロの調の近親調(属調)になっている
という2点でした。
特にBメロ後半については、サビとの差別化が足りず、場面転換が伝わりにくくなっているとのことでした。
解決策としては、
- Bメロ後半をサビとは異なる展開に差し替える
- Bメロ後半自体を削ってサビへの流れを整理する
という2案を提案いただきました。
今回は後者を選択し、思い切って構成を整理してアレンジを考え直した結果、展開の間延びした印象がかなり改善されました。
サビのインパクトは、転調先を変えることで生まれました
もともとサビに転調を取り入れていたのですが、転調先がABメロの近親調(属調)になっていたため、場面転換の印象が少し弱くなっていたそうです。
〈近親調とは〉
元のキーと音の共通点が多い調のこと。
転調しても違和感が少なく、自然な流れを作りやすいのが特徴です。
例:Aメジャー → Eメジャー(属調)
今回の曲はAメジャーを基準に作っていたため、先生からは「Aを主調とした場合の代表的なサビ転調のパターン」を教えていただきました。
※主調とは、その曲の中心となるキー(調)のことです。
「こうするべき」ではなく、「何を狙うか」が大切
転調については、「近親調へ転調すると自然に転調できる」と教本で読んでいたため、これまでは「転調するなら近親調にする必要がある」という認識でいました。
しかし実際には、近親調への転調が最適かどうかはケースによるそうです。違和感なく自然にキーを移行したい場合には近親調が有効ですが、今回のようにサビで大きく印象を変えたい場合は、あえて近親調ではない調へ転調した方が効果的とのことでした。
作曲手法は、「教科書にそう書いてあったから」という理由だけで採用するのではなく、その曲の中でどのような効果を狙いたいのか、その効果を実現するためにどの手法が最適なのかを考えたうえで、採用する理由を明確にすることが大切なのだと学びました。
アコギの金属音問題
なぜかE7のコードを鳴らすときだけ謎の金属音?が鳴る問題が発生してしまいましたが(第一回参照)、金属音として認識していたのはギターで開放弦(どこも押さえていない弦)をつかったコードを鳴らしたときの共鳴でした。
共鳴を抑えるには、同じコードでも開放弦の少ないポジションに変更する必要があるそうです。
▲ ギターは、1つのコードを複数のポジションで演奏することができる。
左図:当初使用していたE7、開放弦が4本ある。
右図:ポジションを変えたE7、開放弦が用いられていないことがわかる。
今回はサビの調を変更したことでE7を使わなくなったため自然と解消されましたが、 もし同じ調のまま進めていた場合は、『 Ample Guitar T 4 』でE7を演奏するコードポジションを変更することで解決できました。
ベースのスライド問題
1オクターブ(12フレット)下がるスライドを使いたいのにスライドが短くなってしまう問題は(第一回参照)、演奏に使用されている弦のポジションが原因でした。
ベースやギターは、音高によっては同じ音を複数の弦で演奏できます。高音弦と低音弦で同じ音高を弾く場合、押さえる位置(フレット)が高音弦だとローポジション、低音弦だとハイポジションになります。
『 MODO BASS 2 』には、どの弦で演奏するかを指定できる機能があります。
ソフトの問題だと思っていたら、楽器の知識不足でした
アコギやベースで発生した問題について、当初はソフトの仕様を理解できていないことが原因だと思っていました。しかし実際には、弦楽器そのものへの知識不足によるものでした。
私はこれまで弦楽器を経験したことがなく、開放弦が何を指すのか、同じ音高のノートでも複数のフレットポジションで鳴らせること、またギターでは同じコードでもさまざまなポジションで演奏できることなどを、まったく理解していませんでした。
今回の経験を通して、 リアルな演奏を再現できるソフト音源ほど、その楽器特有の構造や奏法への理解があるとより使いこなすことができると実感しました。
気づいたら、エレキギターを習い始めていました
インストはついに完成!次はいよいよ歌メロへ
今回で、インスト部分は完成しました!DTM教室の先生に手助けしていただいたおかげで、理想としていた曲想にかなり近づけることができ、とても感激しています。
そして次はいよいよ歌メロと歌詞の制作です。曲の世界観をどう言葉にしていくのか。
次回は、新たな壁にぶつかりながら進むボーカル制作編をお届けします。
インストが完成し、楽曲はいよいよ仕上げの段階へ。
最終回では、歌メロ・歌詞の制作を経て楽曲が完成するまでの過程と、約3か月にわたる制作を通してあまりさんが感じた変化や学びをお届けします。
あまり
透明感のある歌声と物語性の強い歌詞を軸に、J-POP・エレクトロポップを中心とした楽曲を制作しています。
作曲コンテスト ソニコン2025 -歌モノ編- 優秀賞、DTM甲子園 2025 金賞、じゃがレコードアワード2025 優秀賞。
歌・作詞・作曲・編曲・ミックス・マスタリングまで自宅スタジオで制作しているシンガーソングライターです。
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