SONICWIRE
あまりの制作成長ドキュメント

あまりの制作成長ドキュメント

~第3回|完成と変化編~

Special Series Presented by SONICWIRE

今回の連載では、昨年開催された「SONICWIRE CONTEST 2025 - 歌モノ編 -」で優秀賞を受賞した、DTM歴2年半のクリエイター・あまりさんが、新規楽曲の制作過程をリアルにお届けしています。

理想のサウンドを目指しながら、迷い、試し、少しずつ前へ進んでいく——そんな楽曲制作の裏側を記録する成長ドキュメントです。

前回は、展開の見直しや転調、オルガンの追加などを通して楽曲をブラッシュアップする様子をご紹介しました。試行錯誤を重ねたことで、インスト部分が完成し、楽曲全体の方向性も大きく見えてきました。

最終回となる今回は、歌メロ・歌詞の制作を経て完成した楽曲を公開するとともに、約3か月にわたる制作を通して感じた変化や学びを振り返ります。


感情が溢れ出るような歌メロを目指しました

インストが完成し、いよいよ歌メロと歌詞の制作へ。
今回の楽曲では、「自分の中にいるもう一人の自分との葛藤」というテーマを、メロディと言葉の両方でどう表現するかが大きな課題でした。
歌メロでは、感情の切迫感を表現することを意識しました。

キーについてはいくつかのパターンを試し、その中で現在のキーが、自分にとって少し高めではあるものの、この曲には一番合っていると感じたため採用しました。
無理なく歌える心地よさよりも、あえて少し背伸びをすることで、感情が溢れ出るような張り詰めたニュアンスを表現したいと考えたためです。
その結果、少し叫ぶような必死さや切迫感が自然と歌声に乗り、自分が表現したかった感情により近づけたように感じています。

また、歌唱では普段よりもリズムを意識して歌いました。早口な楽曲だからこそ、一音一音が流れてしまわないよう子音を立て、言葉の輪郭をはっきりさせることを意識しています。歌がメロディとしてだけでなく、リズムとしても機能するような歌唱を目指しました。

「程よい抽象度」を意識して歌詞を書きました

歌詞を書くときは、さまざまな心情や場面に重ねられるような、最大公約数的な表現を意識しています。具体的すぎると一つの出来事だけの歌になってしまい、逆に抽象的すぎると歌詞の密度が薄くなってしまいます。その中間を意識しながら言葉を選ぶことで、聴く人それぞれの経験に重ねてもらえる歌詞を目指しました。
今回のテーマである「自分の中にいるもう一人の自分との葛藤」についても、誰か一人の物語ではなく、それぞれの経験の中で受け取ってもらえるような表現を意識しています。

「ダチュラ」に込めた意味

歌詞や楽曲の世界観を考える中で、「ダチュラ」という花を知りました。「夢の中」「陶酔」「偽りの魅力」といった花言葉や、美しい見た目と毒性を併せ持つ二面性が、この曲の世界観にぴったりだと感じ、タイトルとして採用しました。

特に気に入っているフレーズは、サビ最後の

「受け取ってよ なけなしの愛を」

です。綺麗な愛というよりは、必死にしがみついているような、少し歪んだ執着にも似た感情を、この一言に込められた気がしています。

ついに完成!完成した楽曲はこちら

歌メロと歌詞が加わり、約3か月にわたる制作を経て楽曲が完成しました。
前回までの試行錯誤がどのように一つの作品へとまとまったのか、ぜひ完成版をお聴きください。

▶ デモ音源

リファレンスをなぞるだけではない、自分らしい一曲になりました

今回の制作では、当初より以下の楽曲をリファレンスとしてきました。

リファレンス楽曲の持つ空気感を大切にしながら制作を進めましたが、単にその雰囲気をなぞるのではなく、自分らしいグルーヴやアレンジを取り入れることを意識しました。
その結果、リファレンスから受けた影響を残しつつも、自分らしい空気感を持った一曲に仕上げることができたと思います。

気づけば、オルガンは楽曲の"主役"になっていました

一番気に入っているのはAメロとサビのオルガンです。
前回の記事でも触れた通り、最初はオルガンの演奏動画に一目惚れして、「とりあえず使ってみよう!」という勢いで取り入れました。
完成した今振り返ると、曲全体の空気感を形づくるうえで欠かせない存在になってくれたと感じています。

曲作りは、自分との対話でした

一番苦労したのは、この曲を作りながら、自分が何を描こうとしているのかを探ることでした。
私の場合、曲を作り始める時点で「この感情を表現したい」「これを伝えたい」というものが明確にあることはほとんどありません。私にとって曲作りは、曲との壁打ちを繰り返しながら、自分でも気づいていなかった感情や考えを少しずつ見つけていく行為です。どちらかといえば、自己表現というよりも、自分自身との対話に近いのだと思います。

曲が完成して初めて、「自分はこんなことを考えていたんだ」と気づくことも少なくありません。
自分が本当に描きたいものを探る作業は、今回もっとも苦労した部分であると同時に、もっとも面白かった部分でもありました。
今振り返ると、この曲そのものが、私の創作への向き合い方を象徴する一曲になったように感じています。

新しい挑戦が、自分の曲作りの幅を広げてくれました

今回一番成長したと感じるのは、曲作りの幅がまた一つ広がったことです。
新しい曲を作るときは、毎回新しい挑戦を取り入れることを意識しています。今回はオルガンを取り入れたり、ギターをメインに据えたり、これまでより展開を大きく動かしてみたりと、自分にとって新しい試みに挑戦しました。

新しいことに挑戦すると、その分これまで経験したことのない壁にもぶつかります。しかし、一つひとつ乗り越えていくことで、自分の曲作りの選択肢が少しずつ増えていくことを実感しました。

最後に、これからDTMを始める方へ

私自身、まだ曲作りの経験は多くなく、制作のたびに分からないことや、思うようにいかないことにぶつかっています。
ただ、今回の制作を通して、悩みながら試した一つの経験が、少しずつ次の曲を作るための引き出しになっていくのだと感じました。

DTMを始めたばかりの方も、うまくいかないことをあまり怖がらず、まずは一曲ずつ、自分なりに完成までたどり着いてみてほしいです。
私もまだ試行錯誤の途中ですが、一緒に悩みながら成長していけたら嬉しいです。
現在、この曲はフルバージョンをリリースしています。ぜひ聴いていただけたら嬉しいです。


約3か月にわたる制作を通して、楽曲だけでなく、あまりさん自身の音楽との向き合い方も少しずつ形になっていきました。
思い通りにいかず悩んだ時間も、試して失敗した経験も、ひとつひとつが次の一歩につながっています。
この連載が、DTMに挑戦している方や、楽曲制作で悩んでいる方にとって、「試行錯誤することも成長の一部なんだ」と感じるきっかけになれば幸いです。

PROFILE

あまり

透明感のある歌声と物語性の強い歌詞を軸に、J-POP・エレクトロポップを中心とした楽曲を制作しています。

作曲コンテスト ソニコン2025 -歌モノ編- 優秀賞、DTM甲子園 2025 金賞、じゃがレコードアワード2025 優秀賞。
歌・作詞・作曲・編曲・ミックス・マスタリングまで自宅スタジオで制作しているシンガーソングライターです。

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