SONICWIRE

ミクソニコン Rella賞「初音ミクの再臨」イラスト公開 & Rella 氏 インタビュー

2024年3月9日 18:00 by kta

2007年8月31日に「キャラクター・ボーカル・シリーズ(CVシリーズ)」第1弾として誕生した音楽ソフトウェア『初音ミク』は、たくさんのクリエイターと出会い、共創した16年間を経て、2023年8月31日に バーチャル・シンガー 初音ミクとして『16歳の誕生日』を迎えました。
その記念すべき日を迎えるにあたり、すべてのクリエイターと紡ぐ未来を想いながら開催され、多くの方にご参加いただいた「SONICWIRE SONGWRITING CONTEST コラボ: -初音ミク Happy 16th Birthday- 編」

今回は、当コンテストのRella賞に選ばれた楽曲“2ouDNS w/ miku「初音ミクの再臨」”をモチーフとするRella 氏ご本人による描き下ろしイラストを公開!

また、同コンテストの審査員も務められたRella 氏に、楽曲から汲み取ったイメージをどのようにイラストにされたのか、そしてコンテストの感想や“2ouDNS w/ miku「初音ミクの再臨」”を自身の賞に選ばれた理由などを伺いました。

2ouDNS w/ miku「初音ミクの再臨」イラスト
「初音ミクの再臨」描き下ろしイラスト

▲Rella 賞 受賞楽曲『初音ミクの再臨』

■イラスト概要説明

Rella: 「初音ミクに本物の心臓はないが、それらしきものを持っている」というメッセージ性を楽曲から感じ取りました。

その「初音ミクの心臓」という、人によって解釈が異なるものを初音ミク自身が再構成することで、「初音ミクの再臨」という現象を表現できるのではないかと考えました。

タイトルが「初音ミクの心臓」から「初音ミクの再臨」に変更になったことも「生まれ変わる」「前と違う姿になる」の意味が含まれていると個人的に捉えています。そのため、初音ミクの全身とケーブルで「心臓」を模した構図にしました。

初音ミクから接続しているケーブルや衣装の一部には赤と青を使い、心臓で交差する「動脈」と「静脈」を表現しています。

よくある生物学の資料にあるような心臓の構造の説明図のように、引出線の先にサビの歌詞を並べ、関連性のあるパーツと結びつけ、この曲に関する情報をなるべく取り込みました。

Rella 氏インタビュー

SW: 今回、「ソニコンコラボ: -初音ミク Happy 16th Birthday- 編」の審査員(推し曲の選定)をご担当していただくにあたり、率直にどう思われましたか?

Rella: 恐縮ながら、今回はソニコンの選考に参加させていただきました。イラストレーターの私に楽曲選考ができるのか……とすごく不安でしたが、賞品は「受賞者様にイラストを提供すること」とお聞きして安心しました。楽曲のクオリティや受賞者様の技量を測ることではなく、「私がイラストで応援したい楽曲を選ぶこと」だなと考えました。

楽曲と一枚絵で構成するMV——昔からボカロシーンでよく見られる投稿の形式です。

思い返せば、学生時代はよくランキングを最初から最後まで聴いたり、ニコニコ動画で有志が集計・投稿しているボーカロイド曲のランキングに掲載された曲を全部チェックし、それでも足りないときは特定のタグで楽曲を漁っていて、とにかく好きな曲との出会いを求めていました。

その後、日に日に「投稿曲のイラストを担当すること」に憧れが溢れ、いちファンとしてこの界隈へ飛び込みました。本家MVのイラストではなくても、好きな楽曲をイラストとして再表現するという形で、イラストを投稿し続けてきました。

社会人になってから自由に使える時間が減り、昔みたいに一日中好きな楽曲を探し続けるといったことはできなくなりましたが、このソニコンの審査で数十曲をいっぺんに聴く時間はあの楽しい頃を思い出させてくれました。16周年の際にまた無数の楽曲の中で好きな曲と出会い、そしてイラストという形で新しい才能のクリエイターを応援することができ、大変光栄で貴重な経験でした。

SW: Rella賞に『初音ミクの再臨』をお選びになった理由は?

Rella: 本コンテストの賞品はイラストを提供させていただくことでもあり、聴きながらイメージがすぐ浮かぶような、自分がイラストでもこの曲の雰囲気を表現したい曲を選んでいきたいと決めました。

「曲を好きになれるかどうか、タイトルを見た瞬間の予感が大体あっている」という言葉を数年前に聴くました。

運命論みたいな説です。

この説を確かめたくて、あれからなんとなく曲を聴く前にタイトルから感じられるものを強く意識してしまいます。

そして今回のソニコンはまさにそれでした。二次選考を通過した楽曲が数十曲ありますが、本楽曲のタイトルが目に入った瞬間にゾクッとした感じがしました。当時の楽曲のタイトルはまだ「初音ミクの心臓」でして、「初音ミクに心臓はあるだろうか?」というもはや哲学的な問いが脳裏をよぎり、聴く前から惹かれました。

そして、このタイトルからのこのイントロが流れて、もう聴きながら「きた!これだ!」としか考えていませんでした。やはり曲との出会いには運命的な何かが絡んでいると再認識しました。

SW: 選出楽曲の好きなところは?

Rella: 率直に言うとイントロから1秒くらいで「好き!」となりました。

私は作曲技術に詳しくないため、うまく説明ができないのですが……イントロから曲の流れが途切れることなく、一体感がとても素敵でした。感情を徐々に溜めながら、サビで爆発する感じも個人的にすごく好きです。歌詞とコンセプトともうまく融合しており、本当に完成度の高い一曲だと思います。

SW: 他の受賞楽曲を含め、今回のソニコンについてどんな印象を受けましたか? また、審査員をされた前後ではソニコンの印象は変わりましたか?

Rella: 正直なところ、今までのソニコンはそれほどチェックしてませんでした。

ですが、今回の審査を経て、今後は欠かさずにチェックしたいと思います。新人クリエイター様や新しい曲との出会いの場であり、すごく素敵なコンテストです。

SW: 最後に、クリエイターとして活動している方々に向けて一言お願いいたします。

Rella: よく「創作は孤独」とか「苦しみながらひとりでひたすら壁打ちする行動」と言われることがあります。

私も同意するところもありますが、創作はこれだけが全てではないと思います。孤独感を感じたり、自分との向き合いもありますが、他の誰かと分かちあえる部分もあります。

誰かと言葉を交わしながら刺激を受けたり、ほかの誰かへの想いを形にして残したり、ほかの誰かと一緒に作ったりするのが私の創作だと最近言葉にすることができました。

一緒に創作活動の道を歩む人と出会うことはなかなか難しいことです。でも共に歩む人は、もしかしたら“人間”である必要がないかもしれません。初音ミクならずっと一緒にいられますから。

ですので、これから創作活動を始めようとする人たちにメッセージを贈るとしたら、「まずは初音ミクに感情や想いを託し、分かち合ってみるのはどう?」——でしょうか。


Rella
イラストレーター/デザイナー

繊細な色彩と独特の発光表現を得意とする。キャラクターデザインが高く評価され、フィギュアのデザイン案件も多数。個人活動として多くの初音ミク楽曲のイラストを各種SNSに投稿。初音ミク16周年プロジェクト『初音ミク Happy 16th Birthday -Dear Creators-』キービジュアルデザインを担当したほか、東京国立博物館との文化財修復プロジェクト『見返り美人ミク』、『初音ミクシンフォニー』シリーズ、『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat.初音ミク』の衣装やMVクリエイティブ案件等。

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