ハリウッドアクション的な曲やシリアスな曲を作る時は、HEAVYOCITY 製品を読み込むところから始めます。
経験に裏打ちされた、真に現場で「使える」サウンドを提供するシネマティック音源の雄、HEAVYOCITY社。その独自のサウンドデザインによって、映画やドラマ、ゲームなど様々な作品のスコアリングにマッチする即実戦投入可能な製品を届けています。今回はサウンドトラック作品を中心に、手がけられる作品の多くにHEAVYOCITY 製品をお使いいただいている、作・編曲家 / ベーシストとして活躍するカワイヒデヒロ氏（fox capture plan）にHEAVYOCITY 製品についてお聞きしました。
HEAVYOCITYとの出会い
初めて触れられたたHEAVYOCITY 製品はどの製品でしたか？
初めて使ったのは6年ほど前で、『GRAVITY』でした。ちょうど、ダークな雰囲気でスケールの大きい世界観の作品の音楽を作っているところで、デモを視聴して即買いでした。
プリセットでそのまま使える音色がたくさんあって、ダウンロードしてすぐ使えるのがいいですよね！
そこからHEAVYOCITY 製品をご愛用いただくに至ったきっかけをお聞きしてもよろしいですか？
パッド系の幅広さや、エピック系のリズム音源まで、劇伴を作る上で欲しかったサウンドがたくさん内包されていて、たくさん曲を作る劇伴では効率なども重要なので、頭の中でイメージしている音がすぐに見つかったり、音色にインスパイアされたり、ただただ好みの音色だったり、というのがとても自分にフィットしています。
HEAVYOCITYはパッドがメインの製品も多いですが、「あのパッドは良かった」と思いつく製品はありますか？
『GRAVITY』のプリセットで "[Agg] Ch2b Smooth Abrasions" ですね。芯があるのに、奥行きとか透明感も感じる音色で、心情曲によく合いました。
『GRAVITY』収録インストゥルメント：[Agg] Ch2b Smooth Abrasions 音色確認用デモ(デフォルト設定)。by SONICWIRE
HEAVYOCITY 製品は劇伴専用音源としての認識が強いですが、劇伴作家として以外のアーティスト活動でご自身のバンド楽曲や提供曲などにHEAVYOCITY 製品をお使いになったことはありますか？
『DM-307』や『DAMAGE』などのループ素材はリズムトラックに混ぜて使っていたり、パッドなどの音色は空気感を出す要素として混ぜています。
エレクトリックドラムのキックやスネアはこちらで聴けます。UKGarageっぽい音色を使いました。
※『DAMAGE（DAMAGE 1）』はNATIVE INSTRUMENTS 社の取扱い製品です。
少々話がずれますが、劇伴楽曲を制作される際、楽曲の大枠が出来上がってからその曲に合うサウンドを探す他に、シチュエーションに合うサウンドを探してそこから楽曲を練り始めるようなことはありますか？
僕は作曲と編曲がほぼ同時で、特に雰囲気モノを作る時は音色がめちゃくちゃ重要なので、音色を決めてから曲を作っていきます。特にホラーやサスペンス曲などはパッドの音色ありきだと思っています。
劇伴楽曲では、雰囲気の演出がより重要になると思いますが、その点において作曲やアレンジの中で気を付けられている点はありますか？
パッドの音色は1種類で完結させず複数のパッチを組み合わせています。組み合わせのコツなどはないのですが、なんとなくイメージしている完成形がまん丸だとして、欠けている成分を足して丸くなるようにする感じです。例えば、白い球体を作りたいとします。まず核となるパッドがあって、それがサッカーボールの黒い部分のように欠けていて。黒い部分を白くするパッドを足して、白くします。そして滑らかな球体にしたいので、縫い目のへこんでいる部分を埋めるパッドを足します。
パッドのイメージ音源を、新規でサクッと作ってみました。今回は不穏な雰囲気・サスペンス系のループです。
【不穏な雰囲気・サスペンス系ループ】素材となる3つのループ
1つ目のループは、基本になるパッドの音『GRAVITY』収録：[Agg] Ch2b Smooth Abrasions です。2ループ目は、『GRAVITY』収録：[Eth] CH3 NightStalker。倍音成分、特に低域が蠢いている、地鳴りのような感じの音色です。3ループ目、『GRAVITY PACK 04 - VOCALISE 2』収録のコーラス系パッド。冷たい感じの音色ですね、奥行きを感じます。
【不穏な雰囲気・サスペンス系ループ】Loop 1 ＋ Loop 2
元の1ループ目から低域が増えてちょっと不気味さが増しましたね。
【不穏な雰囲気・サスペンス系ループ】Loop 1 ＋ Loop 2 ＋ Loop 3
さらに冷たい空気感、奥行きが足されて、異質な空間にいるような雰囲気の音色になったと思います。
感覚的なのですが、自分の中のイメージに合うような音色って一つのプリセットじゃ完結できないことが多いのですが、全部のソフトの音色を聞けていないので、出たとこ勝負だったりします笑
HEAVYOCITY が効いてくるシチュエーション
劇伴の制作に特化した製品が色々と出回っている中で、HEAVYOCITY 製品ならではの特徴やアドバンテージはどのようなものだと思いますか？
エピック系のリズムループがインパクトのあるものが多いので、疾走感ある曲やダークな骨太な曲を作るのに欠かせないと思います。最近の劇伴ではほぼ毎作使っているかもしれません。
色々なHEAVYOCITY 製品をお使いになられてきた中で、今お気に入りのタイトルや、使用頻度の高いタイトルを教えていただけますか？
先にも挙げていますが、『DAMAGE』『DAMAGE 2』や『GRAVITY』（GRAVITY PACK 01～06など含め）、『NOVO: MODERN STRINGS』や『FORZO: MODERN BRASS』、『EVOLVE』など頻度高く使っています。
※『EVOLVE』はNATIVE INSTRUMENTS 社の取扱い製品です。
それらのタイトルについて、機能やパッチ、音など気に入られているポイントや、カワイ様ならではの使いこなし、おすすめの使い方などがあれば教えていただけますか？
『DAMAGE 2』の異なるパッチを組み合わせたり、『NOVO: MODERN STRINGS』をストリングスに混ぜて、さりげなく生とシンセがモーフィングする箇所を作ったり、よくよく聴かないとわからないかもしれませんが、隠し味入れてます 笑
『DAMAGE』に比べて『DAMAGE 2』が良くなったと感じる点があれば教えていただけますか？
『DAMAGE 2』は『DAMAGE』に比べてさらに細かくループがstemのように収録されているので、欲しいループを探すのが簡単になりましたね。複数のパッチを読み込んで組み合わせることで自分だけのエピックサウンドが作れます。
最近HEAVYOCITY 製品を使用された中で、「これは（楽曲に製品が）ハマった！」という作品があれば是非教えてください。
映画「コンフィデンスマンJP プリンセス編」では逃走シーンや事態の重さを表現するのに重宝しました。
ドラマ「レッドアイズ 監視捜査班」でも『DAMAGE』『DAMAGE 2』と『MASTER SESSIONS（パーカッションのセクション音源シリーズ）』は、ふんだんに使っております。ちょっとパッチ名は忘れました。。。
最後に、この記事をご覧になっている方へHEAVYOCITY 製品のセールストークをお願いいたします。
僕の劇伴で多いのですが、インダストリアルでダークな曲、ハリウッドアクション的な曲やシリアスな曲を作る時は、HEAVYOCITY 製品を読み込むところから始めます。
僕にとってそのくらい作曲に欠かせないメーカーです。全製品コンプする日も近いと思います。先日もバンドのメンバーに『GRAVITY』を薦めたばかりです 笑
叔父である川井憲次の影響で音楽に興味を持ち、独学で作曲をはじめる。大学卒業後より作・編曲家としてまたベーシストとして活動を開始。ジャンルやフォーマットにこだわらない音楽制作がこだわり。手がける楽曲は多岐にわたる。またfox capture planのベーシストとしても活動中。国内外の大型フェスへの出演やテレビドラマやCMなどの音楽を担当するなど、各方面から注目を集めている。
代表作（作・編曲 / ベース演奏）
劇伴「カルテット」「コンフィデンスマンJP シリーズ」「レッドアイズ 監視捜査班」「事故物件怖い間取り」「節約ロック」「イングレス」「青春ブタ野郎はバニーガール先輩の夢を見ない」、他多数
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