新しい音やスタイルを求めるクリエイターがまず知っておくべきソフトウェア

VENGEANCE SOUNDAVENGER 2』レビュー by 青木繁男

プロデューサー/マルチマニピュレーター“青木繁男”氏による、シンセサイザー音源『AVENGER 2』の製品レビュー。

既に『AVENGER 2』を制作に多用しているという氏の熱いコメント、是非ご覧ください。

完成された音源

AVENGERが突然この世界に登場してからかなりの月日が立ちました。通常のソフトウェアであれば、新しい機能や音色を待ち望むユーザーも多々いると思われます。 しかしAVENGERに関しては私を含めユーザーからの不満がほとんどないまま長年使われてきたソフトウェアであったかと思います。 その理由はすでに完成された音源だったからではないでしょうか。

▲万物を創造する万能型“シンセ”として登場した初代AVENGER

様々な再生エンジンを搭載し、サンプルを自在に操るパラメータ。その時代、その流行に沿ったExpansionを随時リリースなど、ソフトウェアはもちろんですが、運営するVENGEANCE SOUNDの体制にも最高の評価を付けたいところです。

そして2023年暮れ、突然のニュースと共にクリエイターに衝撃を与えた『AVENGER 2』のリリース。 この完成されたAVENGERをどのように進化させるのか。VENGEANCE SOUNDの最大の難関であることはユーザーが一番理解していたかと思います。

しかしリリースされた『AVENGER 2』はさすがとしか言えない機能とサービスが搭載されていました。

拡張性が増したアルペジエーター

それでは『AVENGER 2』に搭載されている、私のお気に入りの機能を紹介したいと思います。 まずはアルペジエーターの機能になります。 元々複雑なアルペジオパターンを作る事ができたAVENGERですが、『AVENGER 2』になりその操作性、具現化が進化しました。 操作についてはプリセットを呼び出した後、楽曲にマッチするようにパターンとピッチを変更するのですが、この編集がDAWを触れているかのような容易な操作性になり、直感的に編集が可能になっています。

▲直感的な操作性で複雑なシーケンスやリズムも容易に作成可能なアルペジエーター・モジュール

そしてプリセットで用意されたパターンも様々な機能が搭載・進化し、普通では考えられないような音色を生み出すことが可能になりました。 そんなアルペジオ生成に革命的な機能として搭載されたのが「ラチェット」です。 ラチェットからノートやスタイルなどのプリセットを選択するだけでノートが細かく刻まれ、今までのパターンが全く違うアプローチを始めます。 もちろんこの機能はパラメータを深掘りすることも出来ますが、私は触りません。時間を忘れてしまいそうだからです。

▲任意のノートを様々なパターンで刻む事が可能なラチェット機能

そして究極の機能は「ランダマイザー」です。 ランダムでアルペジオパターンを生成するソフトウェアはこれまでいくつもありましたが、AVENGERはクリエイター寄りの発想で搭載してきました。 「必要なスケールノートをどのくらい利用するのか」「サイレンスのパーセンテージは?」「ベロシティのイメージは?」など、楽曲を作る時に頭の中にイメージする内容をそのまま当て込めば唯一無二のアルペジオパターンを作る事ができます。 そのパラメータの中には先ほど紹介したラチェットもあります。これは興奮してしまいますね。

▲ダイスアイコンから実行可能なランダマイズ機能。音程ごとに任意のパーセンテージを設定出来るなど、好みの結果が得られやすい生成が可能

時に楽曲にマッチするアルペジエイター音色をプリセットから探す人も多いと思います。 しかし、マイナー・メジャー問題やスケールアウト、リズムパターンなどが制作している楽曲と合わず、違う音色を探し始める方もいるのではないでしょうか? そんな時は是非アルペジエイターの編集にチャレンジしてみてください。 きっとお気に入りの音色を楽曲にマッチしたパターンに変更、さらにはダイナミックなパターンの生成を手助けしてくれるはずです。 私も今までアルペジエーター搭載のプリセット音色から検索を始める事がありましたが、今では理想の音色をピックアップしアルペジエーターでパターンを生成するぐらいに使い方が変わりました。

アルペジエーターに複雑なアレンジを加える事ができるようになった『AVENGER 2』ですが、制作時間が無限にあるわけではありませんので、理想に近いパターンを作る事が難しい場合もあると思います。

そんな時、私が手を出してしまうのが当然プリセットです。 AVENGERに搭載されているプリセットパターンは最初から搭載されているモノに加え、エクスパンションを追加インストールすることでパターンも追加されます(追加されないエクスパンションもあります)。 これによりプリセットだけでも、数えられないほどの音色を作る事ができる点が気に入っています。 特に締め切りが迫っている中でインパクトのある音色が欲しい場合などに重宝しています。

▲即戦力なものから型破りなものまで豊富に揃えるファクトリープリセット。制作のインスピレーションを得る起点としても重宝します

お気に入りのエフェクト

元々VENGEANCE SOUNDのエフェクトプラグインはお気に入りで、昔から楽曲制作には必ず利用していました。『AVENGER 2』で新たに搭載されたエフェクトが素晴らしいのでご紹介します。

まずは私がすぐに触れたのがRUTA VERBです。 「美しい」の一言です。空間を支配する音色が好きで、沢山のリバーブを使ってきましたが、ここまでイメージ通りのサウンドにしてくれるエフェクトは久しぶりでした。 リリースのほとんどない音色にRUTA VERBを使うだけで、まるで別世界に移動したかのようなサウンドに変える事ができます。 RUTA VERBを単品のプラグインとしてリリースしていただきたいくらいお気に入りのエフェクトです。

BIT BITEも使用頻度の高いエフェクトです。 BitCrusher系のプラグインを音色作りに多用するのですが、BIT BITEはパラメータも充実しており、心地良いサウンドに変化できる事はもちろん、その豊富なプリセットに圧巻です。 プリセットは音色に使う事を前提に組まれているだけあり、いままで想像も付かなかったパターンを体験する事が出来ました。

  • ▲心奪われるリバーブ効果が得られるRUTA VERB

  • ▲サウンドの表情をガラリと変える事が可能なBIT BITE

新しくなったコアライブラリ

新しくなったコアライブラリに触れる前に、まず感動したポイントはなんと言ってもプレビュー機能でしょう。 ロードする時間が短縮され作曲のイマジネーションを絶やすこと無く作業を進行させる事ができます。 いままでのライブラリーも即戦力のある音色が多く作家のイマジネーションを高めていましたが、『AVENGER 2』では新しく実装された機能をふんだんに活用したプリセットがほとんどです。 ファクトリープリセット(factory2)が一番分かりやすいと思いますが、「なんだこの音色は」というような普段聴き慣れない斬新な音色が素晴らしいです。 ある程度自分の中でイメージを膨らませて音色を探す事が多いわけですが、音色から楽曲のイメージを広げてくれる音源は本当に久しぶりです。

▲作り込まれた奇抜なプリセットも多数収録。ロード不要でサクサクとプレビューする事ができる

何も考えなくて良い

AVENGERに搭載されている膨大な機能はサウンドクリエイターにとってワクワクする存在かと思います。 1つの音色から様々なパラメータを操作することで全く異なるアプローチの音源に仕上げてしまうのですから、時間を忘れて演奏と音色作りに没頭してしまいます。

AVENGERの素晴らしいところは、何でも出来るし、何もしなくても良いという点です。 前者は冒頭で触れたとおり様々なパラメータを使用して唯一無二のサウンドを生成する事ができます。 これはクリエイターとって一番大事な個性を引き出すことに対し必須条件です。 後者は作られたプリセット音色がイメージのインスパイヤーになるデザインされた音色であること。 つまり何も考えず、ただ膨大なプリセット音色を聞き比べるだけで、自分のイメージにマッチした音色を探し出せるという点。 この全く異なる2つの要素を兼ね揃えているのがAVENGERの魅力の一つであり、『AVENGER 2』では両要素の良さが更に強く感じられるようになりました。

さいごに

完成されたはずのVer1からクリエイターの想像を手助けする機能を搭載し登場した『AVENGER 2』。 すでに十分満足してしまいそうですが、これまでの経緯を考えると今後数年掛けて更なる進化をさせて行くのだろうと思われます。 徐々に増やされるプリセットやパラメータがさらに可能性を広げてくれることは間違い無いでしょう。

『AVENGER 2』がリリースされた今、この進化の歩みを共に体験できる事が嬉しく、この先も楽しみでしかありません。

改めてAVENGERは、新しい音やスタイルを求めるクリエイターがまず知っておくべきソフトウェアとなったように思います。

青木 繁男 Aoki Shigeo
株式会社ライブデート 代表取締役
PRODUCER / Manipulator

楽曲制作・アレンジ・ミックスを行うプロデューサー。

マニピュレーターとして、楽曲を提供した全てのアーティストを始め、Ado / 古川慎 / 渕上舞を始めとする様々なジャンルのアーティストライブをサポート。

またマジカルミライ / ヒプノシスマイク / プロジェクトセカイ / あんさんぶるスターズ!! / hololiveなどのバーチャルアーティストライブに参加し、あらゆるエンターテインメイントをサポートしている。

楽曲制作・ライブで使用するソフトウェア Nuendo / Cubase の開発にも携わり最先端の技術を最高レベルで安定させるシステムを使用。年間100を超えるステージで稼働させている。

また、ライブで必要とされるBGM、サウンドエフェクトの制作も行うためライブに同行する『マニピュレーターだからこそ作れるサウンド』に定評を得ており、ライブ音源制作でも様々なアーティストをサポートしている。

青木 繁男 | X


    • 2023年サポートアーティスト
    • Ado
    • 古川慎
    • 羽多野渉
    • 渕上舞
    • (兼バンドマスター)
    • 2023年サポートイベント
    • マジカルミライ 2023
    • 初音ミク Thunderbolt Tour
    • 初音ミク 鼓童 ~結~
    • あんさんぶるスターズ!! キャストライブ
    • ヒプノシスマイク HYPED-UP 02
    • プロジェクトセカイCOLORFUL LIVE 2nd -Link-
    • プロジェクトセカイコネクトライブ
    • プロジェクトセカイ感謝祭
    • holo Live Super Fes 4th Live

Demosong Playlist
All Clear