SONICWIRE

華やかな音質と反応の良さ。

ポリフォニックレガートが秀逸な大容量音源

Strezov Sampling『AFFLATUS CHAPTER II BRASS』レビュー by 飯田俊明

Strezov Samplingはブルガリアのメーカー。

ブルガリアンコーラスの音源など、さすが本場と思わせるクオリティーで注目していたが、2018年にAfflatusシリーズの第一弾『AFFLATUS CHAPTER I STRINGS』を発表し、さらに知名度を上げることになった。あれから約5年、満を持して今回『AFFLATUS CHAPTER II BRASS』の発表となった。

AfflatusのStringsは、ただ華やかというだけでなく、いかにもハリウッド映画らしい質感が気に入ってよく使っている。壮大系ばかりが注目されるが、Scene d'Amourという弱音器のプリセットなども秀逸で、ロマンティックに美しく歌わせる弦が欲しい時には欠かせない。

生楽器の出す音は本当に多彩だ。どんな表現もできるプリセットが理想ではあるが、汎用的に作ってしまうと、ともすれば中途半端な作りにもなりかねない現実もある。Strezov Samplingの「使い方をある程度想定し、それぞれにあった音楽的な録音を目指す」というコンセプトには共感できる。

Stringsは数種の楽器によるレイヤーサウンドも秀逸で、単なるサンプルレイヤーではなく、実際に合奏させたものをサンプリングしているのかな、とも思わせる空気感があり、雰囲気が出ていて気分があがる。今回のBrassでも、こういった「それを弾くだけでオケが完成してしまうような」プリセットは用意されているようだ。

ただ、そう言ったものを聴く術は、すでにネット上でもいくつかあるようなので、ここでは基本音色にフォーカスしてみようと思う。使い勝手には統一感があり、どの音色も概ね作りは共通しているため、今回は使用頻度の高いホルンを軸に検証してみたい。

全体のDLサイズは216GB、大容量音源だ。丁寧な作りに期待が高まる。

では今回も動画にて。動画の最後には、Afflatus ChapterⅠ Stringsと合わせた、リリカル系の簡単なデモも添えておいた。

ハリウッドらしい、出来上がった感じの質感は、本作でも健在だ。壮大な音楽が得意なのは間違いないが、繊細な曲想でも色々役に立つ場面がありそうだ。

音質のクオリティだけでなく、ポリレガートや反応の良さが光る、なにより弾いていて楽しい音源と言える。

今後大いに活用していきたいと思う。

AFFLATUS CHAPTER II BRASS

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飯田 俊明

(ピアノ、キーボード、ピアニカ他、作編曲)

クラシカルクロスオーバーを軸に、多彩なジャンルで活動を行うピアニスト、作編曲家。

ドビュッシー、ラヴェルなどに影響を受け作曲を始める。武蔵野音大大学院ピアノ科を修了し、PTNAコンペティションDuo特級最優秀賞受賞。その後、ライブ活動や、スタジオ・イオン専属として制作活動を始める。

現在まで、二期会、劇団四季、宝塚歌劇団出身のヴォーカリストや、岡本知高、田代万里生、平原綾香、ミネハハ、エスコルタ、中島啓江、ジャズの北浪良佳、インストでは、オカリナのホンヤミカコ、タンゴの喜多直毅、口笛の柴田晶子、環境音楽ではドコモ携帯のサウンドデザインを担当した小久保隆などを演奏・作編曲でサポート。50枚以上のCD制作や、ライブ、TV(NHK、CM他)、映画、ゲーム、またアクアパーク品川(メリーゴーランド他)、六本木ヒルズ時報、万博パビリオンなどの施設への作品提供や、安藤美姫アイスショー音楽アレンジなど。

最近の活動には、ミュージカル田代万里生DVD音楽監督、山根基世、進藤晶子、松平定知らアナウンサーとの朗読コンサート、中村獅童との即興朗読コラボ、NHKドキュメンタリー「沁みる夜汽車」音楽作曲、ホリプロ60周年オールスターミュージカルアルバム、NHKドラマ「生きてふたたび、保護司・深谷善輔」、柿澤勇人ミュージカルアルバムなどがある。

演奏力を元に、有機的な表現力を持った打ち込みが評価され、活動の場を広げている。

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